感じてきた事を一番大事に、阪本奨悟 役者から夢だった歌手へ
INTERVIEW

感じてきた事を一番大事に、阪本奨悟 役者から夢だった歌手へ


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年06月11日

読了時間:約14分

テーマは今までで一番カッコ悪い阪本奨悟

阪本奨悟

――MVはその世界観を表したドラマ仕立てなんですね。この作品の時代感は最近のイメージですか? ブラウン管のテレビで昭和のイメージもありまして。

 お金がないという設定です(笑)。東京藝術大学に在学中の学生さんに撮って頂きました。僕と同世代の学生の方です。現在『渋谷のラジオの学校』という番組でパーソナリティをやらせて頂いているんですけど、そこでお世話になっている箭内道彦さんに、「鼻声」のMVで何か面白いアイディアのヒントが欲しくて相談させて頂いたんです。

 そうしたら箭内さんは東京藝術大学の生徒さんに声をかけて頂いて。6、7人の生徒の方に「鼻声」を聴いて、それぞれにMVの絵コンテを作ってもらいました。その企画案のうちの一つが「今までで一番カッコ悪い阪本奨悟が撮りたい」というもので、絵コンテの段階で100カットくらい書いて頂きました。

――すごい量ですね。

 かなりのこだわりを持って作ってもらいました。それがもうそのままMVになったという感じです。

――カッコ悪いというテーマが一気に親近感を持たせてくれますね。

 曲を書くにしても親近感は大事にして書いています。なるべく聴く人に寄り添っているメッセージでありたいなと思うんです。遠過ぎても届き辛かったりすると思うので。僕はシンガーソングライターなので自分の実体験と感じてきた事を一番大事にして書いています。だから距離は近いものでありたいなと思うんです。

――カップリングの「しょっぱい涙」は曲調がガラッと変わっていますね。

 今までの自分になかった曲調に挑戦したかったんです。ルーパーという機材を去年の夏頃から使い始めているんですけど、エド・シーラン(※イギリスのシンガーソングライター)もルーパーを使ってライブをしたりするので、 ライブではエド・シーランのカバーもやったりしていたんですけど、自分の曲でルーパーを使ってやりたいなと思って書き始めた曲です。

――ルーパーありきの楽曲なんですね。曲自体はどのように作っていったんですか?

 イントロのループフレーズからです。Aメロは10パターンくらいあって、結局ここに辿り着きました。本当にルーパーを使いたくて作っていました。

――歌詞がシニカルですよね。これはそういう心境だった時期があった?

 本当に僕自身なんですよね。高校2年生の頃に役者をやめるタイミングで地元の高校に転校したんです。僕は強がりな部分があって、自分から打ち解けるのが苦手で、「友達が出来ないんじゃなくて作らないんだよ」という。でも結局は寂しかったんですよね。転校先に馴染みたいんだけど、それが怖くて学校にも行かずに、近くの公園でシクシク泣いていました。

――泣いていたんですか?

 泣いていました。その時は役者をやめた後悔もあったので「何ひとつ上手くいかないな」という思いでした。その時の気持ちを掘り起こして書いた曲です。

――自分の暗黒時代を晒すという事は勇気が要りますよね。

 そうですね。なるべく人には言いたくないですよね。

――今後もそういた部分も出していく?

 そういった部分を曲にすると、凄く強くなれた気になれます。自分の弱い部分が曲になる事によって、誰かがそれに共感してくれると自分を認めてもらえる瞬間が来るので、僕にとっては自分自身を曝け出して歌うという事に意味を感じます。最初は書いたものをビリビリに破りたくなるくらい恥ずかしかったですけど(笑)。

――バイオリズム的にはけっこう上下激しい方ですか?

 そうですね。書いている時はあんなに楽しいのに、時間を置いて冷静になって見てみるとガックリして気落ちしてしまいます。

――気分が落ちた時やストレスを感じた時の発散法は?

 ゲームです。「モンスターハンター」とか。基本的には現実逃避したいんだと思います。あとは映画館にも行くし、DVDを借りて観たりもします。それも気晴らしになっているのかもしれません。

――アーティストはネガティブな方が良い曲を書ける気がします。

 そうかもしれませんね。「歌うしかなくなって曲を書いている」という気がします。

――逆に幸せな時にネガティブな曲は書き辛かったりしますか?

 そうですね。なかなか自分に嘘をつけない不器用な性格なんですよ。実直に今感じている心境を歌うという事でちょっと救われるんです。

――それを聴いて背中を押されるという方もいるでしょうし。

 それが凄く嬉しいです。

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