シンガーソングライターの阪本奨悟が5月26日、大阪・松下IMPホールで『ワンマンツアー 2019「X -cross- ~心のアンサンブル~」』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは5月17日のヒューリックホール東京を皮切りに、25日の名古屋・ボトムライン、26日の大阪・松下IMPホールの東名阪3公演をおこなうというもの。ライブは今年2月に配信リリースされた劇場版アニメ『王室教師ハイネ』のオープニング主題歌「パラレルな関係」などアンコール含め全15曲を披露した。ツアー初日となったヒューリックホール東京の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

この会場で一つとなってアンサンブルを作りたい

阪本奨悟(撮影=関口佳代)

 昨年9月29日、ラフォーレミュージアム原宿でおこなわれたライブ以来のワンマン公演ということと、過去最大規模のツアーということもあり、ライブへの期待感は高まっていく。開演時刻になり、会場は暗転。6拍子のトリッキーなSEが流れるなか、まずはサポートメンバーの赤堀眞之(Ba)、宗本康兵(Key)、遠藤タカヒロ(Gt)、伊吹文裕(Dr)の4人がステージに登場し、ソロを回していくかのように各々が、SEに生の演奏を重ねていく。

 そして、本日の主役である阪本奨悟がステージに登場し、相棒のアコースティックギターを手に取り、「カラカラな心」でライブの幕は開けた。自身の欲望も反映したクールなナンバーを、真剣な表情で歌い上げ、一気に会場の空気感を変えていった。「一緒に楽しんで熱くなって頂ける準備は出来ていますか?」と、投げかけ始まったのは「自分らしく生きていたい それだけなんだけど」へ。ガラッと場面を変えるかのような大胆な流れは、次にどの曲がくるのか予想ができない高揚感を覚えた。

 「みんなの明日を素敵なものに変えたいですね」と、これから紡がれていくライブへのワクワク感をフォーク調の弾き語りで表現。「色んな心を持ったみんなが、この会場で一つとなって熱くなれたら素敵じゃありませんか。最高のアンサンブルを作り上げましょう」と、このツアータイトル『X -cross- ~心のアンサンブル~』に込められた想いを説明し「bloom ~心の花~」を披露。リズムに合わせ振り上げたオーディエンスの腕は、花が開花するかのような、快活なエネルギーに満ち溢れていた。

 ここまでのライブの感想として阪本は「皆さんがじっくりと受け取ってくれている感じがして、めちゃくちゃ嬉しいです」と、オーディエンスの阪本の歌を聴く真摯な姿に、喜びをストレートに伝えた。さらに『王室教師ハイネ』で共演した、橋本祥平との串カツ屋でのエピソードは、阪本のまさかの行動に会場の笑いを誘った。メリハリのあるMCでも楽しませてくれた。

阪本奨悟(撮影=関口佳代)

 ここから阪本の特徴の一つでもある、ルーパーという多重録音が出来る機材を使用したセクションへ。このルーパーを説明するために、初めて阪本のライブに訪れたという観客の方の名前を借りて実演することに。一人でギターと声を重ね、「ズンドコ節」のバックトラックをコミカルに作り上げ、それに合わせて、選ばれたその観客の方の名前を会場全体でコールし盛り上がった。

 そのルーパーを使用した1人での演奏は久しぶりだと話し、心の中の闇の部分を表現したという「オセロ」をパフォーマンス。阪本は丁寧に音を重ねていき、世界観を構築していく。間奏ではギターのみで作り上げたとは思えない、カオスなサウンドに耳を奪われる。続いて、上京したときになかなか歌詞が書けなかったという「ながれ」をキーボードを使用し、ピアノ弾き語りで届けた。家ではピアノを弾くことが多いと話す阪本。その情報もあり、ピアノを弾く姿はプライベートな空間を観ているかのような瞬間でもあった。そして、儚さと力強さが混ざり合う歌声に、オーディエンスも静かに耳を傾けていた。

皆さんの糧になってもらえるようなエンターテインメントを

阪本奨悟(撮影=関口佳代)

 ライブも後半戦へ突入。再びフルバンド編成に戻りデビューシングルから「鼻声」を届けた。阪本にとっても大事な曲のひとつ。甘酸っぱい恋模様が目の前にリアルに広がっていった。続いてのイントロでのアコギによる美しいアルペジオが印象的だった「恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~」では、情景描写が見事な1曲で、阪本の歌声も凛とし伸びやかだ。

 メンバー紹介を挟み、「最後のメンバーは…皆さん!」とオーディエンスにとって嬉しい言葉を投げかけると、ホールから大きな歓声が響くなか、まだまだ続く熱いアンサンブルを完成させる為の準備運動として、コール&レスポンスで気持ちを高め、一足早く会場に夏の風を運んできた「夏のビーナス」「しょっぱい涙」とアップチューンで扇情していった。

 ライブも佳境へ。ここで、今年2月に配信リリースされた劇場版アニメ『王室教師ハイネ』のオープニング主題歌「パラレルな関係」を投下。身体を揺さぶりかける、情熱的でノリの良いナンバーに、オーディエンスも一体感のあるクラップで楽曲を後押し。エンディングではマイクを握りしめ、力強い歌声を響かせる阪本。

 「汗をかいていきましょう!」と本編ラストはタオル回しで盛り上がるナンバーの「人生のピーク」。アウトロで流れる<Joy of Life>という言葉を体現するかのような空間で、阪本も全力で音楽を楽しんでいる姿が印象的だった。

 パフォーマンスに大きな拍手が送られ、アンコールを求める手拍子へと変化。アンコールに応え阪本が再びステージに登場。まだまだ満足はしていない、もっともっとすごい景色が見たいと意欲をのぞかせ、「上京して音楽をやっていく、エンターテイナーとして自分を磨いていくんだ」と決意表明の1曲「I Never Worry ~虹の向こうへ~」を弾き語りで届けた。訪れたオーディエンスの顔を見渡しながら歌い上げていく阪本。その歌声はホールの隅々まで響き渡っていた。

記念撮影(撮影=関口佳代)

 大阪で路上ライブをおこなっていた時代のことを振り返り、「その頃と気持ちは何も変わっていないです。皆さんの糧になってもらえるようなエンターテインメントを届けていきたい、という気持ちは強くなっていると思います」と、変わらない気持ちと強くなっていく想いを込めて、ラストはフルバンドで「Please me!!」を披露。

 オーディエンスの一丸となったシンガロングも盛大に響き渡り、会場一体となった“心のアンサンブル”を完成させた。最後に「ライブって本当に楽しいです。みんなの顔を見て歌える時間が幸せなんだと実感しています」と想いを述べ「X -cross- ~心のアンサンブル~」ツアー初日の幕は閉じた。

セットリスト

『ワンマンツアー 2019「X -cross- ~心のアンサンブル~」』

5月17日@ヒューリックホール東京

01.カラカラな心
02.自分らしく生きていたい それだけなんだけど
03.bloom ~心の花~
04.Fly
05.スクランブルドリーミング
06.オセロ
07.ながれ
08.鼻声
09.恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~
10.夏のビーナス
11.しょっぱい涙
12.パラレルな関係
13.人生のピーク

ENCORE

EN1.I Never Worry ~虹の向こうへ~
EN2.Please me!!

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