シンガーソングライターの阪本奨悟が9月29日に、東京・ラフォーレミュージアム原宿でワンマンツアー『阪本奨悟 ワンマンツアー2018 SPROUT~綿毛の宴~』の追加公演をおこなった。ツアーは7月25日にリリースされたメジャー1stアルバム『FLUFFY HOPE』を引っ提げて、8月4日の大阪・ABCホールを皮切りに東名阪全4公演をおこなうというもの。ライブは『FLUFFY HOPE』の楽曲を中心に「Treasure」や「アスファルトに咲く花」など地元関西で活動していた時の楽曲など、アンコール含め全15曲を熱演。何度も訪れた観客に感謝を告げ、初の東名阪ツアーの幕は閉じた。【取材=村上順一】

綿毛を皆さんに届けていきます

阪本奨悟(撮影=木村泰之)

 台風24号が近づいているということもあり、この日は雨が降り続いていた。会場には天気が悪いなかとはいえ、多くのファンが駆けつけ満員だ。観客が開演を待ちわびるなか、会場が暗転するとサポートメンバーがステージに登場。そして、スクリーンに阪本奨悟がストリートライブの準備を始める映像が投影され、その映像に続いて阪本がステージに登場。アコースティックギターを手に取り、アルバムでもオープニングを飾る「夏のビーナス」でライブの幕は開けた。ギターと阪本の歌声のみの弾き語りでしっとりとした音源とはまた違った導入から「楽しんでいきましょうか!」と投げかけドラマティックにバンドサウンドが楽曲を彩り、清涼感のある歌声が会場に広がった。サビでは観客もワイパーのように腕をリズミカルに振り、一体感のある空間を作り上げた。

 「もっともっと盛り上がっていこうぜ!」と1stシングルから「しょっぱい涙」を披露。躍動感のあるグルーヴィーなリズムと力強い歌声で会場を満たしていった。「1曲1曲大切に僕の曲を、僕のメッセージを、綿毛を皆さんに届けていきます」と、ライブ終演後には晴れていることを願い、インディーズミニアルバム『Fly』から「I Never Worry ~虹の向こうへ~」を届けた。
 ここから一転しシリアスなセクションへ。真っ赤なライティングと宗本康兵(Key)によるピアノが緊張感を生み出し、そこに乗る阪本の歌がリアルに響き渡った「オセロ」、続いて、迫真の歌声が印象的だった「カラカラな心」と阪本の心情を映し出したナンバーを立て続けに届け、このライブのアクセントになっていた2曲だった。

 そして、今年3月に配信リリースされた「下手くそなLOVE SONG」は、提供された楽曲ということもあり、シンガーに徹した阪本が垣間見れる楽曲。ギターを持たず、ハンドマイクで感情を注入していく姿が印象的だった。大きな拍手が鳴り響くなか「ちゃんと受け止めて頂きましたね。ありがとう」と感謝を述べた。

 ここで、サポートメンバーがステージを後にし、阪本の特色の一つでもあるルーパーという多重録音が可能な機材を使用したセクションへ。阪本はアコギを使って、様々な奏法を駆使し一人でアンサンブルを構築していくというもの。そして、初めて阪本のライブに訪れた観客の名前を2人に聞き、その名前を曲に組み込むことに。南国の島をイメージさせる陽気なサウンドに乗って<みんな大好きな〜♪>と、その選ばれた観客の名前をコールするという、楽しい一時を演出。

 引き続き、ルーパーを使用し、地元で活動している時に歌っていたという「Treasure」を披露。美しいアルペジオにギターのボディを叩いて作り出したパーカッシブなサウンド、そこに厚みのある壮大なコーラスを重ねバックサウンドを構築していく。その一部始終を見守るようにステージを見つめる観客の姿。阪本が“分身の術”と呼んでいるという、自身が作り出した120%阪本奨悟といった濃密な演奏に乗って、メッセージを丁寧に伝えていった。

 まさに宝物のような空間を与えてくれた楽曲に続いて、「歌詞にも注目して聴いて頂けたら…」とアルバムの中でも一際切なさがあふれていた失恋ソング「会いたくて」を届ける。<会いたくて 会いたくて♪>と多くの人が思った事があるであろう感情を、情感を込め紡いでいく。そして、白昼夢を感じさせるイントロが揺れる阪本の心情を表現していたかのような「スクランブルドリーミング」。様々な感情が渦巻く都会。<強く握りしめ 誇れる自分になれると信じて>と、阪本の揺るぎない強さを感じさせた1曲だった。

逆に僕が勇気をもらっています

阪本奨悟(撮影=木村泰之)

 メンバー紹介を挟みライブはラストスパート。心弾ませるナンバー「Please me!!」へ突入。観客もサビではステージに向かってエネルギーを送るかのように、腕を振り上げ盛り上がり、さらにシンガロングで心地よい一体感を作り出していた。

 「自分らしく生きていたい それだけなんだけど」に続き、会場をよりヒートアップさせたのは、アルバムの中でもポップさが際立った「人生のピーク」。リズミックなサウンドに合わせフロアはタオルを回す観客で埋め尽くされ、その光景に阪本も「最高!」と声をあげた。本編ラストは「メッセージを受け取って下さい」と「bloom ~心の花~」。自身を輝かせるために日々戦っていく女性を主人公に、前向きな言葉を歌に乗せて放つ。会場に笑顔の花が咲いた多幸感に満ちた空間を作り上げ本編を終了した。

 アンコールを求める手拍子は次第にコールへと変化。一丸となったアンコールに導かれるように阪本が再びステージに登場。阪本は今回のツアーについて「僕がメッセージを書いて、皆さんを後押し出来ないかなと頑張っているつもりなんですけど、いつの間にか各地で逆に僕が勇気をもらっています。皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」と感謝を述べ、「アスファルトに咲く花」を披露。大阪時代の日々や当時の思いが詰まったバラードナンバーを弾き語りで届けた。アスファルトに負けず強く咲く花のように、阪本も力強い歌声を響かせた。

 「成長に繋がるエネルギーを皆さんから頂いたと思っています。これからも新しい曲をバンバン作っていきますので、楽しみにしていて下さい」と嬉しい言葉を告げ、ツアーを締めくくるラストの曲はデビュー曲「鼻声」をフルバンドで演奏。心地よいゆらぎのあるサウンドと、情景が浮かんでくるかのような温もり溢れる歌声で丁寧に紡ぎあげ『阪本奨悟 ワンマンツアー2018 SPROUT~綿毛の宴~』の幕は閉じた。嘘のない今の等身大とも言えるステージはきっと多くの人々に届いたはずだ。さらに多くの人々へこの綿毛を届け芽吹かせるべく、次のステップへ踏み出した阪本奨悟に期待が高まった。

セットリスト

01.夏のビーナス
02.しょっぱい涙
03.I Never Worry ~虹の向こうへ~
04.オセロ
05.カラカラな心
06.下手くそなLOVE SONG
07.Treasure
08.会いたくて
09.スクランブルドリーミング
10.Please me!!
11.自分らしく生きていたい それだけなんだけど
12.人生のピーク
13.bloom ~心の花~

ENCORE

EN1.アスファルトに咲く花
EN2.鼻声

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