宮野ケイジ監督、知英、武田梨奈

 女優で歌手の知英と女優の武田梨奈が3日、都内でおこなわれた映画『殺る女』の完成披露上映会に出席。主演を務めた知英は共演の武田とともに作品の見所や撮影の苦労などを振り返った。この日はメガホンをとった宮野ケイジ監督も登壇した。

 『殺る女』は、幼いころに家族を殺された女性が、復讐を果たすべく殺し屋家業に手を染めていく姿を描く。主人公の女性・愛子を知英、過去にヤクザ家業に手を染めながら、足を洗い家庭を持つ身となった男・加賀俊介役を駿河太郎、その妹・由乃役を武田が演じる。また本作品は先ごろ、韓国でおこなわれた『第22回プチョン国際ファンタスティック映画祭』のワールド・ファンタスティック・レッド部門にも正式出品されており、現地では世界最速上映が実施され話題を呼んだ。

女殺し屋のストーリーがやりたい」という着想から、「セリフの少ない台本」へつながった経緯

 もともと「女殺し屋のストーリーがやりたい」と思っていた宮野監督の思いから始まったという作品の制作。構想について「今回はなるべく言葉を少なくして、それぞれの感情を心に浮き彫りにして、言葉も少なくなり、台本も薄くなっていって。カット数はしっかり撮っていくけど、心が動いているかどうか、ということを見極めるのが演出の判断ポイントになりましたね」と、今作ならではの作風が作り上げられていった経緯をたどる。

 知英が演じた“殺し屋”という役柄は、知英がこれまで演じたきた中では2度目のチャレンジとなる。一方でそんな今回の現場は、知英にとっても例外なく少ないセリフで実施された。知英は自身のキャリアの中でも、最もセリフが少なかった現場だったと振り返りながら「最初は“(セリフを)覚えなくていいや”と、ラッキーだと思ったんです。でも現場に入ったら間違いでしたね。キャラクターの奥底の悲しみや苦しみを、セリフなら言えば楽に表現できるじゃないですか? それを表情のみの演技で表現しなければいけなかったので…」とその演技には相当苦労したことを回想する。

 一方、武田が演じる由乃という役柄は、これまで武田が演じてきた快活なイメージのある役柄とは全く違う、引っ込み思案で暗い雰囲気。武田は今作でこの役を演じるに当たり、撮影期間もなく、宮野監督らにもあまり相談できるタイミングも無かったため「撮影前から、色んな闇を考えながら毎日過ごしました」と、知英同様にその役作りにはかなり苦労した様子。また劇中では武田がタバコを吸うシーンもあり「タバコなんて普段全く吸わないけど、1カ月ほど喉が“ウェッ!”となりながら、ずっとタバコを吸っていました」と、涙ぐましい努力を重ねていたことを振り返った。

初対面の知英と武田 それぞれが明かした「自身のターニングポイント」

 この日、トーク中には度々仲良さげに笑顔で顔を合わせていた知英と武田だったが、実は撮影では完全に絡みがなく、実際に対面したのはこの日が初めて。しかしもともとアクション女優としての武田を知っていたという知英は、武田のことを「可愛いです! 可愛いし、とても素敵な笑顔に惹かれちゃいます!(皆さん)この笑顔を見てください!」と絶賛しながら「(武田さんの)アクションとかってすごいじゃないですか。今回はそのイメージを念頭にスクリーンの上の武田さんを見たんですけど、か弱い感じの素敵な感じで出てらして、こういう面もあるんだと新しい発見をしました」と、映画で見た武田の、知らない一面を劇中に見た印象を明かす。

 一方の武田は「さっき初めてお会いして、(取材時のスチール撮影で)“これくらいの距離で見つめ合ってください”って言われたけど、(素敵過ぎて)見ていられなくて。天然記念物みたいというか“知英さんって、本当にいたんだ…”という感じでした。性格も優しくて、悪いところが一つも無いから、悔しいです!」と知英に対して最高の賛辞を送った。

 そんな二人は意気投合、武田は「他の作品で共演するシーンあれば良いですね。では次回作で監督、お願いします」と宮野監督にアピール。「力を合わせれば、本当に力強い女性を演じられるし」と知英も続け、会場を沸かせていた。

 またこの日は、作品にちなんで「自身の人生の中で、運命が代わったと思う瞬間は?」などと司会者から御題が渡されると、知英は女優を始めたこと自体と答え「本当に第2の人生を生きているみたいな感じ。しかもこうやって日本で活動ができることも、人生の中で大きなポイントだと思うし。色んな現場での出会いとか、本当に大切にしていきたいと思います」と女優・知英が登場してから現在までの道を振り返るとともに、そんな機会への感謝の気持ちを言葉にした。

 一方の武田は10年ほど前、初主演となった映画『ハイキックガール』への出演とコメント。「ちゃんと映画界の一人として、私をこの世界に正式に迎え入れてくれた作品で、それがあって今、全てがあるなと思う。だから、10年前の自分に“良かったね”と言ってあげたいですね」とこれまでの思い出をたどっていた。

国際派・知英大活躍、ガンアクションも果敢に挑戦

 今回、キャストには日本の俳優陣のほかにも、フィリピン出身のシンガーのシャリース、デンマークの格闘家ニコラス・ペタスなど、国際色豊かなバラエティーに富んだ顔ぶれが名を連ねている。そんな映画のカラーについて、宮野監督は「もともと知英さんが英語も喋れるというところから、こういう無国籍映画になったというところもあったので、その意味では知英さんが助けてくれましたね」と知英のカラーが作品にうまくはまったことに、満足な様子を見せていた。

 その一方で、今作の大きな見所の一つは、精悍なガンアクションと語る宮野監督は「グリップが大きい銃を女性が握っているのがかっこいいと思ったので、ベレッタという大振りの銃を持ってもらったんですが、大変でしたね」とそのこだわりを語りながら、大変な苦労もあった様子を思い返す。

 特に殺し屋という役柄の知英も「プロっぽく見せなければいけなかったので、持ち方とか姿勢とかすごく気をつけてやっていました。まばたきをしない、とか。あと、撮影期間も短い中で撃てるようにしなければいけなかったので、撮影期間中は、友達に接するようにずっと(銃を)触っていました」とその苦労を吐露していた。【取材・撮影=桂 伸也】

宮野ケイジ監督

武田梨奈

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