女優・歌手の知英が主演を務める映画『殺る女』が27日に公開初日を迎え、都内でおこなわれた舞台あいさつに、知英と共演の駿河太郎、武田梨奈と、作品でメガホンをとった宮野ケイジ監督が登壇した。前回の完成披露舞台挨拶からさらに駿河を加え、改めてお互いの印象を語ると共に、本作の印象や撮影現場の様子などを振り返った。

 『殺る女』は、幼いころに家族を殺された女性が、その犯人に復讐を果たすべく殺し屋家業に手を染める姿を、彼女を取り巻く様々な人物を交えて描く。主人公の殺し屋である女性・愛子を知英、過去に暴力団の仕事に手を染めながら、足を洗い家庭を持つ身となった男・加賀俊介役を駿河太郎、その妹・由乃役を武田が演じる。また本作品は、先ごろ韓国でおこなわれた『第22回プチョン国際ファンタスティック映画祭』のワールド・ファンタスティック・レッド部門にも正式出品されており、現地では世界最速上映が実施され話題を呼んだ。

役に没頭するあまり、お互いのプライベートな表情が消失した現場

 「俳優って、演出以上に自分で考えて答えを出さなければいけないときがあると思うんですが、今回は皆さんそれをされて現場に入られていたので、素晴らしかったですね。ジャッジがしやすかった」と優秀なキャスト陣のもと、今回の撮影現場が充実した現場であったことを振り返る宮野監督。

宮野ケイジ監督

 知英は本作で今年3作目の主演作。これまで殺し屋の役柄も何度か経験がある一方で「女優としても、お芝居的にもいろんな勉強になりました。今回の作品での役柄は、冷静で冷たい人だったけど感情に関してもセンシティブで、そんなところで愛子としてどうこの作品に向き合えばいいかと、悩んだところもあり、監督に助けていただきました。演技することにいっぱい悩んだけど、すごく良い時間がすごせたし、もう一度愛子に会いたいと思いました」と自身の女優としてのキャリアに、また新たな1ページを加えた現場の様子を振り返る。

知英

知英

 一方、武田がそんな知英の印象を改めて問われると「知英さんは本当に完璧過ぎるので、ちょっと何ともいえない。全てキラキラしているので。でもこの間、取材の際に天然っぽいことを言われていて。そのギャップというか欠点も素晴らしいという。本当にうらやましいです」と、全てにおいて絶賛の言葉を投げかける。対してもともと共演や映画祭の出席時などでたびたび顔を合わせている駿河の印象について「年に数回合う親戚のお兄さん」的な人だという武田は「心強く、こんなお兄ちゃんが本当にいたらいいなと」と深く親しみを感じている様子。

武田梨奈

武田梨奈

 しかし撮影では雰囲気作りもあってか、現場で皆あまり親しくもしていられなかった様子で、駿河は今回の武田との共演に関し「以前ドラマで一緒になったときは、ずっとふざけまくっててすごく楽しい人の役柄をやっていたけど、今回はずっと闇を抱えていて、現場では(そういうものが)俺も入っているところあって。役柄自体も結構苦しい役だったので、現場のことをあまり覚えてない。だから後で見返すと“あ、お芝居してる”と思った。お互いに兄妹役を演じたけどみんな孤独を感じている役なので、今日久々に会って“全然覚えてへんわ”って言い合っていました」と現場で演じることにかなり集中していた様子を振り返る。

駿河太郎

駿河太郎

 そんな駿河に対して知英も「現場で無口な人なのかなと思ったし、やっぱり怖い人なのかなと思った」と初対面の印象を振り返る。そんな駿河は、知英との現場に関して「映画祭の方が逆に話せたかなと、すごく明るい人だというのを韓国(プチョン国際ファンタスティック映画祭)で知って。初めて長い時間を一緒に過ごしたけど…やっぱり“天然かな”と思うこともあった」と武田の抱いた印象に同調、会場を沸かせていた。

見所は、知英と元K-1王者との格闘シーン!武田も思わず「挟まれたい」

 この日は映画のストーリーにちなんで「自分と向き合っていると思う、あるいは向き合いたいと思う瞬間は」という質問が投げかけられ、知英は役者として役を演じること自体、そして日記をつけていることに関して挙げ、「紙とペンで書くのってすごく気持ちいいし。すごく日にちが飛ぶことがあるけど、そんな間にも“この間に、何があったんだろう”とか考えるし」とその様子を明かすが、向き合っていることという質問に対して少し自信なさそうな表情を見せる。すると駿河は「めちゃくちゃ向き合ってますよ! 俺、日記なんか書いたことないし」などとコメント、武田も思わず「すごい…」と尊敬のまなざしを向ける。

駿河太郎、知英、武田梨奈

 一方、武田は「私は結構一人で考えることが多くて。先週一人で(新宿の)ゴールデン街に行って一人で考えることが多いです」と一人酒で思いにふけっていたことを明かす。すかさず駿河は「酒に飲まれることないの?」などとイジワルなツッコミ。しかし武田は「ギリギリのラインが、一番自分を考え直す時間になっていて。シラフだと、ちょっと頑固な自分がいるので、“負けず嫌いだからこうだしな”という考えが先行するときがあるんですけど、ちょっと酔うと、弱い自分が出るので…」と自身の持論を展開。

武田梨奈

 また駿河は、自身の趣味であるサーフィンを挙げ「自然と戯れると、自分の小ささを痛感するというか。悩むことっていろいろあると思うけど、自然と戯れるとそんなことを考えず波のことだけを考えて、その中でうまく波に乗れると嬉しいし、その状態で陸に上がると、悩みって小さく感じるし」と語る。すると知英は「名言ですね! “陸に上がって、悩みは小さいことだと認識する”って」とすっかりその言葉に感心した様子。

駿河太郎

駿河太郎

 さらに映画の注目ポイントを聞かれると、知英はストーリー冒頭に出てくる、知英と大男との格闘シーンを挙げる。このシーンでは知英がコールガール風のスタイルで登場、そして知英に襲い掛かる大男役を元K-1王者のニコラス・ペタスが演じるという、作品としては隠れた見所ポイントとなっており、自分でもそのシーンを見たことを明かしながら「自分でも見て“ああ、怖い女だな”と思いましたね」などとコメントし、笑いを誘う。対して空手家でもある武田もこのシーンを気に入っていたことを明かし「怖い女性ですけど美しいですし。また相手がニコラス・ペタスさんじゃないですか?間に挟まれたいな、と思っていました」などとコメント、さらに笑いを誘っていた。

知英

知英

 また駿河はその格闘シーンと、クライマックスで自身が演じた加賀の娘と対面、狂ったような表情を見せるシーンとのギャップを語り、自身が思い描いていたものとは違うアプローチを、知英が今作で見せたこと「そうくるか、と。いろんな世界でいろんな人とお芝居をしたり、色んな世界を見た人は、引き出しが違うところがいっぱいあるんだなというのを背中で感じた」と知英の演技に大いに刺激を受けたことを明かしていた。【取材・撮影=桂 伸也】

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