僕の中では1枚目、175RのSHOGO “原点回帰”再開までの道のり
INTERVIEW

僕の中では1枚目、175RのSHOGO “原点回帰”再開までの道のり


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年03月29日

読了時間:約13分

175Rが活動再開。SHOGOはいま何を思うのか

 パンクロックバンドの175Rが4月5日に、前作『JAPON』から7年ぶり、通算7枚目となるオリジナルアルバム『GET UP YOUTH!』をリリースする。2003年1月発売のメジャーデビューシングル「ハッピーライフ」がいきなりのオリコン週間チャート1位を獲得して鮮烈デビューを飾ると、その翌年となる04年には日本武道館でワンマンライブを実施。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで活動を続けてきた。2010年には無期限活動休止を発表するも、昨年12月に6年ぶりに活動を再開させた。青春パンクの草分け的存在の彼ら。活動再開後初のオリジナルアルバムである今作について、フロントマンであるボーカルのSHOGOは「僕の中では(バンドとしての)1枚目だと思っている」とバンド結成時と同じ感覚で臨めたとの想いを語っている。活動を休止した経緯から再開までの流れ、そして今作にかける思いとは。SHOGOに話を聞いた。なお、今回はその内容を前編と後編の2回に分けて紹介する。

このまま続けて行くと音楽を嫌いになるんじゃないか

SHOGO

SHOGO

――6年ぶりに活動再開しました。改めて活動を休止した経緯を教えてください。

 活動休止を決めた当時は「このまま続けて行くと音楽を嫌いになるんじゃないか?」という感じの時期でした。一緒にやってきたメンバーとの“音楽との関わり方”に、どんどん差が出てきたという事が大きくて。ライブは生もので、その場その場での“一回切り”という感覚が楽しかったりもするんですが、僕らの場合はリリースをしてからライブという流れなので、どうしてもそのあとに「制作」の時期が来るんです。僕は今までの楽曲を全て作ってきましたが、その制作時にどうしてもメンバーに対しての不満や“個々の音楽との関わり合い方が違うな”という疑問を持ってしまって…。

――それはメジャーデビューされてからどれくらいの時期でしたか?

 徐々にでしたね。一気に来たわけではなかったです。それは決してメンバーだけが悪いわけではなくて、そうなっていった経緯にはリーダーとして僕の責任もあったと思うんです。

――活動休止後は単身でイギリスに渡りましたが、以前から考えていた?

 ちょこちょこイギリスへは遊びに行っていたんです。活動休止を決めたタイミングは、落ち込んでいて精神的にもあまり良くない時期にイギリスへ行き、1人でフランスなどにも行って考えたりしていまいた。その中で、ロンドンで友達に「ロンドンに住みたいな」とポロッと言った時に「SHOGO、それ2年前も同じ事を言っていたよ」と言われたんです。

 僕は有言実行しないと嫌な“たち”でして、けっこう“ハッ!”としたんです。「2年前と変わってない」と。しかも行動に移さず、ちょっと落ち込んで日本を飛び出しているなと思えたんです。「これは駄目だ」というわけで「来年からロンドンに住むわ」と言ったのが2010年8月くらい。それですぐに帰国して、9月頭くらいにバンドの活動休止を発表しました。

――本当にすぐだったんですね。

 そうなんです。友達はロンドンでYahoo!のニュースを見て、びっくりして連絡をくれたんです。でも「俺住むって言ったじゃん」って(笑)。

――ロンドンのご友人はちょっとした“冗談”だと思っていたんですね。

 きっと「バンドもあるし、無理だよね」と思っていたんですよね。でも、そういうわけですぐに決めたんです。自分の中で“175RのSHOGO”として生きてきたなかで、“SHOGO個人”としての人生を選択させてもらったという事も大きいし、バンドを休止して日本にいると何かしらの音楽のお誘いを頂くと思うんです。

SHOGO

SHOGO

――休止されてもきっと色んなアプローチがあるでしょうね。

 休止を発表した時も、周りの人達から「ソロやるんでしょ?」と言われたりするんですよ。「いや、僕は音楽自体からも離れるし、日本からも離れるので、他のメンバーを宜しくお願いします」みたいな感じで言っていました。

 まず“音楽から離れる”、“日本から離れる”、日本にいるときっと音楽から離れられないから、自分の中で「余裕が生まれない荒療法で行くんだ」という思いで引っ越しました。

――昔から考えが浮かんだ時はすぐに行動に移してしまう?

 そうです。“鉄は熱いうちに打て”と。

――結果的にイギリスに渡ったことはご自身にとって成功でしたか?

 はい。自分の中で良い経験ができましたし、もっと早く色んな国へ行っておけば良かったとも思いました。あの時に行っていなければ、今の175Rは無かったわけですから、タイミングは「やっぱりここだったのかな」という気はしました。

――音楽から離れる事に対して不安はありませんでしたか?

 この業界的に考えるとそういう事もあるかもしれませんが、僕は歌を歌うのが好きという気持ちを「引退」とか「卒業」という事にするはきっと無いと思うんです。

 ライフスタイルの一つだし、例えばCDをリリースせずとも歌い続ける事はできますし。こういうふうに取材を受けさせて頂ける環境にないとしても、歌を発信し続けている仲間もいるので、「どういうスタンスでやるか」の違いというだけだと思うんです。

 ただそういった部分に関してはなかったんですけど、どちらかと言うと、活動休止をして日本を離れる時に、今まで家族よりも一緒にいたメンバーと離れるという事に対しては「大丈夫かな?」という思いはありました。それでも、1カ月くらいで連絡を取らないのも慣れました。

――けっこうな期間、メンバーとは連絡を取らなかったのですか?

 ロンドンに渡っていた1年くらいはほとんど連絡を取っていないです。でも、それはロンドンに住むまでの準備期間で既に慣れちゃっていました。自分ではそれが意外でした。1カ月ずっと海外ドラマを観ていた時期があったんです。それで慣れました。

――そんなに観ていたんですか?

 もう動かなすぎてそれで腰を悪くして(笑)。スケジュールが入っていないものだから「よっしゃ! とにかくこれ全部観よう!」とレンタルショップを往復。そこから準備をしてロンドンへ向かいました。

ファンに背中を押されたソロ活動

SHOGO

SHOGO

――帰国してソロアルバムを出されましたが、それはやっぱり音楽への情熱が再燃して?

 どちらかと言うと、自分で音楽を作って歌うという事に関しては、そんなに「すぐにやりたい」とは思わなかったんです。イギリスへはギターも持って行きましたけど、ほとんど弾かなかったですし。僕は歌を歌うのが好きで、カラオケも大好きなんです。よくいるじゃないですか? 歌手なのにカラオケでは「俺は歌わないよ」という方。

――確かにそういうイメージはありますね。ではSHOGOさんにリクエストをしたら歌ってもらえる?

 歌いますよ! でも「175Rの曲以外ね」という感じです。やっぱり皆、175Rの曲を勧めてくるんですけど、いつも生でやっている自分で作った歌を歌うのも面白くないんですよ。「それ意外だったらなんぼでも歌うよ」と。

――例えばどのようなアーティストの楽曲を歌われるんですか?

 玉置浩二さんやゆずさんとかMr.Childrenさんが大好きだから良く歌います。歌が好きだからカラオケや歌えるバーなどに行くんですけど、ミュージシャンは皆歌わないんですよ。

――仕事で歌っているからプライベートではという方も多いでしょうね。

 だから知らない人と歌ったりしてね。もう知らない人と肩を組んだり、ライブ状態ですよ。自分はそういうタイプなので、歌を歌うのが好きでカラオケに行ったりしていましたけど、活動休止中は「自分で作って歌う」という事はずっとしていなかったんです。

 けど、帰国してからソロで音源を作るという前に、舞台の活動などもけっこう盛んになってきて、ファンの方々と会う機会が多くなりました。そこで「いつCDリリースするんですか?」という質問が凄く多く寄せられて、それに背中を押されたという事もあります。元々ソロをやるというつもりはなかったですから。

――ファンの方からの期待を受けたのが大きかったんですね。

 よくミュージシャンが役者さんになっていくというパターンがあるじゃないですか?

活動再開した175R

――そういう転身を見せる方もいますね。

 特に、僕の地元の先輩にそういう方が多いんですよ。ただ、自分的にはちょっと違うと思ったんです。役者になりたいとか、タレントになりたいというわけではないと。1回誘われた仕事に出演したら、オファーを絶えずに頂けたのでやらせてもらっているだけで、自分は「基本的にはバンドマン」だと思っているんです。

 でもファンの方に期待を寄せられて、じゃあ「今はまだ175Rをやれる状況ではないし、ソロをやろうか」という話を事務所にしました。「どうせソロをやるのだったら175Rとは違うものをやりたい」という事で、ソロアルバムは、どちらかというと歌モノというか、玉置浩二さんに曲をお願いして。175Rは自分で作詞作曲をするけど、ソロでは175Rではできない事をやろうという事で、共作が凄く多いアルバムやシングルになって。

――音楽性としては対極にありますよね。全く違うSHOGOさんの一面を感じられたりと。

 どちらかと言うと、ソロの方が本当の僕のような気がしています。だからカラオケで歌うと皆にびっくりされるんです。普段はロックのイメージがあるみたいで。どちらかと言うと尾崎豊さんが好きで、このような感じになりました。

――激情型?

 そうそう。「僕、実はそっちなんです」と思いながらね。だからMr.Childrenさんなどを歌うと気持ちが良いんですよ! ソロではそれを凄く発散できたので、今は凄く良い自分のバランスが取れていると思います。

――そのバランス感覚はイギリスで得たものでしょうか。

 そうですね。やはり休止をする事によってソロもやれるようになったから、自分の中ではもう一つのアウトプットができました。その反動がバンドにもくるから、休止前はメロコアやパンキッシュな音自体も聴きたくなくて、全く聴いていませんでしたが、また175Rを組んだ初期の頃に戻ったというようなイメージです。僕の中では今作は1枚目だと思っているんです。

――ソロアルバムから2年後に活動再開を発表されましたが、これにはどういった経緯で活動再開を?

 去年の年末に『骸骨祭り』というフェスに出ましたが、主催のSKULLSHITという洋服ブランドの大滝哲也さんから、3、4年くらい前に「今度の20周年は大々的にイベントをやりたいから、SHOGOもバンドとして出演してくれないか?」と言われたんです。それが一番大きかったですね。「あのあたりにイベントのスケジュールがくるな」と思いながら、ソロのライブをやったり、舞台に出たりしていたんです。

――けっこう前からオファーされたのですね。

 そうなんです。前倒しで言われたから、僕も「そこのタイミングでは175Rを多分やっているんじゃないかな?」という感じだったんです。最初はそういう“だろう運転”で始まりました。

SHOGO

SHOGO

――徐々にメンバーにも「こういうイベントに誘われている」と話始めて?

 最初は言わなかったです。僕の中での“Yes”を決めていて、タイミングがきたら言おうと思いました。わざわざそれで連絡を取るのも嫌だったので(笑)。

――ソロ活動期間中はメンバーに会っていた?

 ソロでのバンド編成によるライブの時はISAKICK(Ba)が弾いていて、アコースティックライブ編成の時はYOSHIAKI(Dr)がパーカッションをやっていました。

――リズム隊のお2人にはちょこちょこと会っていたんですね。

 そうですね。KAZYA(Gt)以外とは会っていたんです。KAZYAは活動休止をしてから北九州へ引っ越したんですよ。だからずっと会うタイミングがありませんでした。他のメンバーには言っていたイベントの事も、KAZYAには言っていませんでした。復活する前年に、僕らがお世話になった方が亡くなって、その方のお別れ会で久しぶりにメンバー4人揃って。その時に再始動の話をした気がします。

――再始動を伝えた時の皆さんの反応は?

 「待ってました」という感じと、「ようやく?」という感じでした。多分メンバーも「この人、本当に動かすつもりあるのかな?」と思っていたと思うんです。

――やきもきしている部分もあったのでしょうね。

 あったかもしれないですね(笑)。自分が楽しそうにソロ活動していたので。実際自分でスケジュールを切って、舞台もどんどんやっていって楽しくて仕方なかったですからね。

僕は再録とライブ盤は嫌い

SHOGO

――その頃から175R用に曲も作り始めていたのでしょうか?

 作り始めてはいませんでしたが、ソロで曲を作っていた時に「これ175Rっぽいな」と思ったのは全部NGにしていたんです。でも一応データとしては入れていたので、「(この)先で使えるかも」みたいなのはありました。だけど、実際にはリリースが決まってから作り始めた曲の方が多いです。

――再び175Rをやると決まってから、ベスト盤を再録で出されましたが、これはもう一度今の自分達で録り直してみようというところと、活動再開の名刺代わりのような感じでしょうか?

 そうですね。活動再開が決まり、今のレーベルと契約をする事になり、レコーディングが始まった途中で決まったんです。活動再開の1カ月前くらい。僕らの過去の曲は、“大人の事情”でiTunesなどには無いんです。ずっと“大人の事情”に悩まされていたんです。僕は再録とライブ盤は嫌いなんですけど、“大人の事情”には勝てなくて…。

 それで急遽、「活動再開するのに過去の曲が聴けないのは何だかな…」という話になって。アルバム用に取ったスケジュールの中で急いで録って、活動再開に合わせて出しました。だから本当に1カ月前くらいですね。急いで1日3曲ぐらいを録っていました。これがまた面白くて「再録いいな!」と思えました。

――ちょっと考え方が変わった?

 再録って絶対に良くないものになると思っていましたから…。

SHOGO

SHOGO

――昔のテイクは超えられないとはよく聞きます。

 そう言うじゃないですか? 僕はもう超えたと思っていて、またやろうと思っています。やっぱり歌い慣れているから。いつもそうなんですけど、曲を作って歌い慣れる前に録るじゃないですか? 歌詞なんかも覚えていなくて見ながら歌うから。やっぱりライブとかで曲が育ってからの方がいいですね。

――インディーズスタイルですね。

 そうです。だからバンドのファースト盤が良いって。ライブで育てて満を持して発売するというのがありますよね? でもいつからか、新曲、新曲という流れで録っていくものだから。だから再録良いなと思いまして。アレンジは昔のままあえて変えていませんからね。

――6年以上ブランクがある楽曲を急遽レコーディングも大変ですよね。

 メンバー皆が何を弾いたか覚えているのかなという不安はありましたが、みんながしっかりやってくれたので、歌は2~3テイクで終えました。

――それこそ一発OKの勢いでもありましたか?

 本当にそんな感じです。良い手応えがあったのでまたやると思います。

(取材=村上順一/撮影=冨田味我)

作品情報

GET UP YOUTH!


175R『GET UP YOUTH !』
4月5日発売

▽初回限定盤(2CD)
UPCH-29246/7、3,500円(税抜)/3,780円(税込)

DISC 1.「GET UP YOUTH!」(全13曲収録)
1.歓びの詩
2.これから
3.Weakness
4.ROMAN ROAD
5.トカイノネオン
6.シャナナ
7.Walk your way
8.君にまで
9.1999
10.4seasons
11.遠く遠く
12.Restarted
13.新世界

DISC 2.「175R(e) BEST」 (全6曲収録)
1.ハッピーライフ
2.空に唄えば
3.YOUR SONG
4.僕の声
5.「手紙」
6.SAKURA

▽通常盤(1CD)
UPCH-20444、2,500円(税抜)/2,700円(税込)
「GET UP YOUTH!」(全13曲収録)
※初回限定盤(DISC 1)内容同様

ライブ情報

「175R 活動祭開!青き春の野音!」
会場:日比谷野外大音楽堂
日程:2017/4/8(土)
時間:OPEN 17:15/START 18:00

会場:大阪城野外音楽堂
日程:2017/4/15(土)
時間:OPEN 16:15/START 17:00

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