ロックバンドの175Rが10月20日に、東京・恵比寿LIQUIDROOMで『175R 20th ANNIVERSARY TOUR 「乾杯」』のファイナル公演をおこなった。結成20周年と10月3日にリリースされた175R BEST『ANNIVERSARY 1998-2018』のリリースを記念し、13日の大阪 umeda TRADを皮切りに、東名阪3カ所を回るというもの。ライブはベスト盤を中心に新曲の「ANNIVERSARY」などアンコール含め全23曲を披露。訪れたファンと一緒に20周年を祝した。【取材=村上順一】

出だしからアクセル全開のパフォーマンス

175R(撮影=Ai Yakou)

 結成20周年という節目のツアーファイナルは、時間を忘れさせてくれるような充実したステージだった。小媒体のインタビューでも、この3公演に賭けていると話していたように、それを体現していたライブだった。本編終了間際には、オーディエンスから「もう一周!」という声があがっていたのが、それを物語っていた。全23曲、約2時間30分をあっという間に駆け抜けてしまったという印象だ。そのライブの模様を以下にレポートする。

 外は突然の雷雨に見舞われたが、会場には多くのファンが175Rのアニバーサリーをお祝いしに集まった。開演時刻になり会場は暗転、SEが鳴り響きISAKICK(Ba)、YOSHIAKI(Dr)とサポートメンバーのキタムラチカラ(Gt)がステージに登場。まずは楽器隊による疾走感のあるインストナンバーで、オーディエンスをお出迎え。そして、大歓声のなかSHOGO(Vo)がステージに登場し「楽しんで行こうぜ東京!」と煽り、披露されたのは「旅人」。ロケットスタートといったアクセル全開のパフォーマンスによって、クラウド・サーフィングが起きるほどの盛り上がりを序盤から見せた。

 「20年前、この曲から始まったんだ」と投げかけ、記念すべき175Rの処女曲「Freedom」を投下。バンドの初期衝動が存分に詰まった楽曲を、今のスキルとともに想いをぶつけていく。キャリアを経て進化した、がむしゃらな中にも洗練されたバンドサウンドで魅了した。「感謝の気持ちを込めて思いっきり最高の1日にしたいと思います」と宣言し、ヒット曲「ハッピーライフ」を演奏。何とも心地よいメロディとビートを浴びながら、オーディエンスも一際大きなシンガロングで、会場全体がひとつになっていくのを感じさせた。

 アグレッシブな「PICASSO」に続いて、語りかけてくるような歌とスケール感の大きなサウンドが会場を包み込んだ「ORANGE」、YOSHIAKIの威勢の良いカウントから「YOUR SONG」と畳み掛ける。昂揚感を煽るソリッドなサウンドからサビでの広がりはドラマチックに響き渡り、クライマックスのような瞬間を感じさせた。

 SHOGOは「リハをやっていて、あんなことがあったなと思いだして、うるっときたけど、リハで泣いてたら気持ち悪いとみんなから思われると思ったからグッとこらえたけど、色々な思い出が走馬灯のように蘇ってきて…」と、この20年を噛みしめるようなコメント。そして、観客がゼロだった時にも歌っていたという初期のナンバー「和」を届けた。穏やかなビートに身を委ね、オーディエンスも体や腕を横揺れさせながら、演奏と歌を堪能。立て続けにメロウな「「手紙」」、「雨のち君」と情感込めた歌声でしっとりと聴かせる曲では、さきほどまでエキサイトしていたオーディエンス達も、その場に立ち尽くし静かに耳を傾けていた。ビートの効いたナンバーだけじゃない、幅広いスタイルを見せてくれたセクションだった。

みんなから力をもらったツアーでした

175R(撮影=Ai Yakou)

 ここで、20周年を祝しYOSHIAKIによる音頭でオーディエンスと乾杯。さらに、サポートギタリストのキタムラチカラが、祝辞を述べるなどアニバーサリーらしいMCで楽しませた。前日は盟友であるガガガSPのコザック前田の弾き語りの動画を観ていたと話すISAKICKは、「前田君は30歳を超えて、これからの人生が見えてきた時からが青春だと話していて。だから、まだまだいけるよ青春!」とコザック前田の言葉を借り、熱いメッセージを届けた

 ライブは後半戦へ突入。天国へ行ってしまった大事な仲間へ向けて作った楽曲「シャナナ」、引退も解散もない、まだまだ叫び続けていくんだという決意を存分に感じさせた「これから」と再始動後にリリースしたナンバーを立て続けに演奏。SHOGOは「こんな最高の夜はないぜ!」と盛り上がり必至のナンバー「Party」を披露。オーディエンスも心地よいビートを浴びてヒートアップ。更に体を揺さぶりかけた「GLORY DAYS」。ドライブ感のあるISAKICKとYOSHIAKIによるリズム隊が繰り出すパワーは圧巻。SHOGOもそのパワフルな演奏を背中で受け止め、よりエネルギッシュな歌声を放っていた。

 「みんながボーカルで、みんなから力をもらったツアーでした」とこのツアーを総括。本編ラストはこの曲がきっかけでメジャーデビューへの道が開いたというナンバー「SAKURA」。恒例のオーディエンスによる、サクラ色の紙吹雪をサビで盛大にばら撒き、楽曲をもり立てた。SHOGOはアウトロで「ありがとう!みんなのおかげだよ!!」と再び感謝を叫び、メンバーはステージを後にした。

 オーディエンスによるアンコールに応え、再びステージにメンバーが登場。届けられたのは活動休止前のアルバム『JAPON』に収録されている「Hello」を、言葉を噛みしめるように熱い歌声で歌い上げた。

 再始動してからのライブを観た人から「良くも悪くも変わっていない」と言われた時、少し疑問に思ったと話すSHOGO。だが、今回のベストアルバムを作ってみて「良くも悪くも変わっていないというのは褒め言葉だと思った」と考えが変わったという。「それが今回のベストアルバムやツアーのテーマだったと思う。このツアーを観に来て、あいかわらずだなと思ってもらえたらそれでいいんです。チケットを手に入れてこうして集まったら、あの時と変わらぬ景色が見れたり、変わらぬ想いが蘇ってきたりと、それが今回のツアーでは正解なんじゃないかなと思っています。俺たちと同じ時代に生まれて、175Rの曲に出会ってくれて、本当に有り難いなと思いました」としみじみと語った。

 そして、ベストアルバムのために書き下ろした新曲「ANNIVERSARY」。また出会える日を約束し、<明日への僕らに乾杯!>と記念日を祝う。今の175Rの感情が詰まった応援歌を全身全霊で届けた。「ちょっと充電して面白いことを考えていきたい」と期待が高まる言葉から、「青春のカギを開けたこの曲で…」とラストは代表曲「空に唄えば」を披露。まさに会場にいる全員がボーカルといった、一丸となった歌声が響き渡り、『175R 20th ANNIVERSARY TOUR 「乾杯」』は大団円を迎えた。

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