meg、ジャズで培ったスタイルをポップスに 多彩な表現で魅せる
ジャズで培ってきたスタイルをポップスにも反映させ多彩な表現力で聴かせるmeg
メジャーデビュー10周年を迎えたジャズシンガーのmegが昨年12月21日に、東京・銀座のジャズレストラン・No Birdで『origin best』リリースライブを開催した。megのポップスシンガーとしての一面を全面に押し出したライブで、12月7日にリリースしたベストアルバム『origin best』の収録曲を中心とした1stセット、クリスマスソングのカバーを中心とした2ndセットと趣を変えアンコール含め全17曲を2部構成で届けた。今年1月30日には同所で『meg quest II ~「大丈夫」リリースライブ~』をおこなう。
ポップスインmeg
街は鮮やかなイルミネーションでキラキラと輝いていた。銀座の大通りの地下にあるNo Birdには大人の空間が広がる。様々な人が食事を楽しみながらライブの開演を待ちわびているようだった。定刻を少々過ぎたところで、サポートメンバーがステージに登場。サポートバンドのSpooky Wolfによる、ジャジーな生演奏に導かれるようにmegもステージに。オープニングナンバーは「Dream Applause」。心地よいリズムが紡がれる中、セクシーで艶やかなmegの歌声がNo Birdを包み込んでいく。Shellsの貝田由里子(cho)と吉野ミキ(cho)を呼び込み、「Kiss & Umbrella」へ。傘をさして街を優雅に歩いているかのような、フレンチポップなリズムに乗って楽しげに歌い上げていく。
そして、湯川れい子が作詞、小室哲哉が作・編曲した「再愛〜Love you again〜」をその時のエピソードとともに披露。Shellsのコーラスとmegのエモーショナルな歌声の相乗効果で、楽曲をドラマティックに展開していく。小室哲哉の持つ世界観を、megの歌声で命を吹き込んでいくようだった。
「ここでしばしジャズシンガーmegに戻りたいと思います」と告げ、ショパンの「ノクターン」に、イギリスの詩人ジョン・キーツの「Bright Star」の歌詞をのせた「Bright Star」を披露。もとからこの歌詞がのっていたのではないかと思えるほど、ナチュラルに響いてくる。megも自由にそして伸び伸びと歌う姿が印象に残った。
続いて、恋の魔女の話をモチーフにした「Love Witch」をラテンジャズグルーヴで恋の甘酸っぱい雰囲気を表現。megとShellsの3人が魔法のステッキを振りかざし、恋の魔法を観客に掛けていく。クトゥルフの呪文がふんだんに盛り込まれた楽曲で、魅了していった。
このメンバーと観客と共に作り上げた曲「Thank you Mama」。客席からのリクエストで、母へ向けた感謝の曲というお題の元作られた楽曲は当時披露した際、ステージも会場も涙で包まれたエピソードを持つ。優しさと感謝が存分に詰まった温もりある歌で紡いでゆく。母を想う気持ちが強く打ち出された楽曲は、観客をやさしい気持ちにさせていった。
そして、SWEEP作曲による「サヨナラマタイツカ」。友との別れの切ない気持ちを、ファルセットを織り交ぜながら表現し、楽曲の持つ世界観を鮮明に映し出していった。憂いを帯びたmegの歌声は、過去の記憶を呼び覚ますような感覚を与えてくれた。
1stセットラストに届けたのは『origin best』に収録された新曲「大丈夫」。megが参加しているチャリティイベント『Women In Jazz』での活動の中から生まれたという楽曲。「途上国の子供達に元気になってもらいたい」という想いを歌に乗せて紡ぐ。<大丈夫♪>という安心感のある言葉が、聴く者の背中を押してくれているようだった。今後のmegの活動の中でも、重要な1曲になるであろう楽曲で1stセットを終了した。
カバー曲を中心としたクリスマスならではのセットリスト
2ndセットはクリスマスツリーのような衣装に身を包んだmegと、頭にサンタやトナカイの装飾付きカチューシャを、身に着けたサポートメンバーたちがステージに登場。2ndセット1曲目はクリスマスのスタンダードナンバー「Santa Claus is coming to town」を軽快なリズムで一気に会場をクリスマス色に染め上げ、パーティー気分を盛り上げていった。
続いては、竹内まりやの「すてきなホリデイ」を、クリスマスを彷彿とさせる鈴の音、スレイベルの美しい響きをバックに、柔らかい歌声で届けた。観客も思わず口ずさんでしまうサビは、何ともほっこりとした空間を作り出していった。
趣を変え、稲垣潤一の代表曲「クリスマスキャロルの頃には」を披露。男性曲をmegの持つリズム感と安定感のある低音で、また違った世界観を見せた。そして、「ジングルベル・ロック」では、重量のあるスレイベルをmegも振り奏でながら歌唱。バンドサウンドにキラキラと雪の降る景色が、目の前に浮かんでくるような音色で楽曲を彩っていく。
ここでいったんカバーを休憩し、megのキャリアの中でも古い付き合いになるという「Christmas Rose」を届けた。11月29日のライブで披露されたジャズピアニストの守屋純子とのジャズバラードバージョンとは、また違った表情を見せた。しかし、込められた感情はどんなスタイルになっても変わらない。鮮やかに情景を映し出す楽曲は、一足早くクリスマスを投影しているようだった。
MCではmegがサポートメンバーに突撃インタビュー。各々の“クリスマスの悲しい思い出”で盛り上がった。megを支えてきたメンバーとのやりとりは、アットホームで和やか。この空気感が演奏にも表れているようだった。
ライブも佳境に入り、ジョン・レノンの「Happy Xmas(War Is Over)」を届けた。世界平和のメッセージが詰まった楽曲を、megのテイストで歌い上げていく。<War Is Over If you want it♪>のシンガロングで一体感を高めていった。本編ラストは松任谷由実の「恋人がサンタクロース」をファンクテイストのグルーヴィーなアレンジで届けた。間奏ではトナカイの着ぐるみを着た2人が登場し、カーテンでステージを覆うと、megが早着替えでサンタクロースへ変身。視覚でも観客を楽しませ、感謝を伝え本編を終了した。
大きな拍手から手拍子に変わり、ステージを離れずにすぐさまアンコールに応える。megは「様々な人に巡り合えてライブを続けて来れたのかなと思います。2017年も良い年になると確信しています。なぜなら、素敵なメンバーやスタッフ、そして、温かいお客さんが付いててくださるので、皆さんに笑顔をいっぱいお届けできるように頑張れると思っています」と来年への展望を明かした。
そして、「ジャズシンガー人生でまさかParaParaの曲を歌うとは思っていなかった」と自身でも意外な事だと語り、MISAの「BANZAI」を歌い届けた。今までの楽曲とは趣を変えたハッピーなナンバーで、周りにポジティブなエネルギーを振りまいていく。megの天真爛漫な部分がこの楽曲にフィードバックされ、元気あふれる空間へと変えていき、ライブは大団円を迎えた。
前回とはガラっと趣を変え届けた楽曲は、ポップスシンガーmegの魅力が随所に垣間見れた。ジャズで培ってきたスタイルをポップスにも反映させ、実力に裏打ちされた独特な空気感はmegならではと言えるのではないだろうか。メンバーへの突撃インタビューのコーナーなどトークでも楽しませてくれる。ジャズ、ポップスと幅広い音楽性をこなすmeg。次回のライブではどのようなスタイルで、我々を楽しませてくれるのだろうか。(取材・村上順一)
セットリスト
12月21日 東京・銀座 No Bird
1stセット
01.Dream Applause
02.Kiss & Umbrella
03.再愛〜Love you again〜
04.Bright Star
05.Love Witch
06.Thank you Mama
07.サヨナラマタイツカ
08.大丈夫
2ndセット
01.Santa Claus is coming to town
02.すてきなホリデイ(オリジナル:竹内まりや)
03.クリスマスキャロルの頃には(オリジナル:稲垣潤一)
04.ジングルベル・ロック(オリジナル:ダリル・ホール&ジョン・オーツ)
05.Christmas Rose
06.All I Want For Christmas Is You (オリジナル:マライア・キャリー)
07.Happy Xmas (War Is Over) (オリジナル:ジョン・レノン)
08.恋人がサンタクロース(オリジナル:松任谷由実)
ENCORE
EN1.BANZAI(オリジナル:MISA)
ライブ情報
2017年1月30日(月) 東京・銀座 No Bird
「meg quest II ~「大丈夫」リリースライブ~」
新曲「大丈夫」を手掛けた有木氏と『megの新世界探求』をテーマに様々な楽曲に挑戦するプログラムの第2弾。
出演:meg(vo)
有木竜郎(pf) 斎藤千穂(vln)
齋藤隆広(gt) 北村規夫(b)
足立浩(ds)
music charge 4000yen(2ステージ合計)
open 18:00 / 1st 19:30~ / 2nd 21:00~(入替なし)