秦基博、10周年ツアーは生弦楽を取り入れた光と音の圧巻ステージ

　シンガーソングライターの秦 基博が11月1日に神奈川・横浜アリーナでデビュー10周年を記念した全国ツアー『HATA MOTOHIRO 10th Anniversary ARENA TOUR “All The Pieces”』の初日公演をおこなった。自身初のアリーナツアー。10月19日にリリースした通算21枚目の両A面シングル「70億のピース／終わりのない空」を引っさげて、全国６都市７公演を廻る。計７万人を動員する予定だ。自身のワンマン公演で生のストリングスをダブルカルテット編成で従えるのは初の試み。アニバーサリーライブならではのデビュー10周年を記念した全国ツアーは生のストリングスを導入し圧巻の世界観で届けた。秦は「横浜の熱気を胸に刻んで全国を廻ってきます」とツアーへの意気込みを語り、ヒット曲「ひまわりの約束」や最新曲「70億のピース」などを披露、訪れた１万2000人のオーディエンスを歌とトークで魅了した。アンコールでは、来年５月に横浜スタジアムでワンマンライブをおこなうことも発表した。

「終わりのない空」をライブ初披露

　平日にも関わらず、横浜アリーナは多くのファンで埋め尽くされていた。定刻を少々過ぎた頃に暗転すると、クラシックの公演でも観ているかのような壮大なストリングスの音色に導かれるように、バンドメンバーと秦 基博がステージに登場した。アコースティックギターを抱えた秦が大きく息を吸い込み、ブレスが1曲目の始まりを知らせる。幻想的な空間のなかで初のアリーナツアーの幕は開けた。

　今回のツアーメンバーには、前回の全国ツアー『HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2016』のあらきゆうこ（Drums）、鈴木正人（Bass）、皆川真人（Keyboard）、弓木英梨乃（Guitar）といったおなじみの面々に加え、佐藤帆乃佳ストリングスを招聘。さらに厚みを増した演奏で展開した。

　このアリーナツアーのステージセットにはV-TUBEと呼ばれるLED電飾をが使用され、色鮮やかに楽曲に演出を加えていく。そして、佐藤帆乃佳ストリングスによる計８人によるダイナミックで繊細なストリングス隊の演奏で、楽曲の臨場感をさらに盛り上げていった。生のストリングスのサウンドに高揚感は高まっていく。

　そこに乗る秦の凛とした歌声が艶やかに響き、オーディエンスの耳を癒していく。普段の生活の中で出来た溝にスッと入り込むような感覚。それは、一つひとつの楽曲に聴き入る観客の表情からも見て取れた

　また、“ピースの窓口”と名付けられたMCコーナーでは、同じ神奈川県出身のいきものがかりからVTRでメッセージが届けられ、彼らの地元である海老名・厚木を横浜出身の秦がアピールするといった一幕も。こうした演奏面以外での特別企画がアニバーサリームードを煽っているかといえば、むしろ秦の素の一面を引き出すことに一役買っているのが印象的だ。

　現在公開中で話題の映画『聖の青春』の主題歌でもあり、ライブ初披露となった「終わりのない空」はダブルカルテットによる弦重奏の躍動感で楽曲をよりドラマチックに展開。秦のスケール感あふれる歌声で会場を包み込み、聴くものを魅了していく。そして、デビュー10年で辿り着いた楽曲「70億のピース」では、幻想的なV-TUBEの演出によって、新たな世界観を魅せた。情感たっぷりに優しく、時に熱い歌声で横浜アリーナを染め上げていった。

　物語を読んでいるかのような情景の浮かぶバラード、自然と体が弾むファンキーな楽曲、シリアスで重厚な世界観を持った曲と、幅広い音楽性で我々を楽しませた。秦の温かい歌声は耳に至福を与えてくれる。そんな瞬間が続く“All The Pieces”。

　秦はMCで「大きな会場で出来る喜びは、より沢山のみんなに逢えるのが嬉しい」と語った。このアリーナツアーでの出会いが、今後の秦 基博にどのような変化を与えていくのか楽しみだ。（取材・村上順一）

秦基博

ライブの模様

ライブの模様

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秦基博

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