バンドにとっての頂上とは、BLUE ENCOUNT 初の武道館を終えた今
INTERVIEW

バンドにとっての頂上とは、BLUE ENCOUNT 初の武道館を終えた今


記者:榑林史章

撮影:

掲載:16年11月25日

読了時間:約8分

バンドシーンで注目を集めるBLUE ENCOUNT(撮影・榑林史章)

バンドシーンで注目を集めるBLUE ENCOUNT(撮影・榑林史章)

 4人組ロックバンドのBLUE ENCOUNTが11月23日に、シングル「LAST HERO」をリリースした。現在放送中の日本テレビ系ドラマ『THE LAST COP/ラストコップ』(唐沢寿明、窪田正孝ほか)の主題歌(シングル表題曲)を担当するほか、来年3月からは幕張メッセでの単独公演を含む全国ツアーの開催が決定しているなど、バンドシーンで注目を集めている。そんな彼らがこの曲に込めたものは? 10月に初日本武道館公演を終え、今どんな心境なのか? 快進撃を続ける若手バンドの真意に迫った。

「ここで死ねるか」僕らの心の叫び

BLUE ENCOUNT「LAST HERO」初回盤

BLUE ENCOUNT「LAST HERO」初回盤

――「LAST HERO」は、ど派手でソリッドなかっこいい曲になりましたね。ドラマ『THE LAST COP/ラストコップ』主題歌としても好評ですが、ドラマの台本などを読んで書かれたのですか?

田邊駿一 脚本の草案を読ませていただいたのと、2015年に「Hulu」で放送されたバージョンを見ていたので、そこで感じていたものもあって、それを元にして作りました。単純に唐沢寿明さん演じる京極浩介はとても熱い人で、物語は刑事ドラマだけど、ユーモアもありシュールもあり、でも最終的には熱いメッセージを投げかけるんですね。それは、僕らBLUE ENCOUNTの音楽に通じるものがあると思ったので、結果的に自分たちの今の想いをぶつける曲になりました。たとえば1番のBメロで「ここで死ねるか」と歌っていますが、これはまさしく僕らの心の叫びです。

――主人公の京極は昭和の刑事なので、捜査のやり方は泥くさいし、良い意味でのあきらめの悪さがあって。そこは、結成から10年かけて武道館までたどり着いた、BLUE ENCOUNTと似ているなと思います。

田邊駿一 僕らも京極さんに負けないくらい、あきらめが悪いですから(笑)。負けが見えてるのに戦いに挑んでしまったり、僕らもアウェーだろうと関係ないですし。そういう僕らが辿って来たバンド人生と、『THE LAST COP/ラストコップ』というドラマの持つものが、ハマったんだと思います。

――レコーディングはどんな感じでしたか?

辻村勇太 この曲には核が2つあって。1つは勢いがありながら壮大さのある、今までのブルエンにはなかったメロディー。でもメロディーだけではダメで、それを支える楽器の核がもう1つ必要だと思っていて。そこでギターのイントロを聴いた瞬間、2つが揃ったなって。だからベースはいかにどう乗りやすくするかとか、おのおのの立ち回り方が明確になりました。最初の状態からまとまってたし、曲全体の構成もみんな同じ方向を見ていたし。

高村佳秀 激しいドラムのフレーズにしても、ギターに活かされているところがありますね。特徴的なギターによって、この曲を最初から最後まで飽きさせずに聴かせているポイントになっています。だからドラムは土台を支える役割りですね。

江口雄也 作ってる段階で、この曲はギターが担う部分が大きいというのは感じていました。だからいろんなところで攻めるフレーズを弾くことが出来ました。サビへ向かうパートは、基本ずっと目立ってて、耳を引くようなものになっていて。そこは音作りもこだわりました。だからギターは、これまで以上にフレーズの構成やいろんな音だったりとか、練って練って考え抜いたので、自分的にも納得のいくものが出来たと思います。

バンドにとっての頂上って、バンドが終わるときなのかな

使用BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNT

――みなさんにとってのヒーローは? やはりバンドとかアーティストだったり?

高村佳秀 4人が共通して好きなのは、ELLEGARDENです。バンドをやるきっかけになったバンドだし、高校生のころから好きで。その中心人物の細美武士さんは、当時から今も変わらず最高最強のヒーローです。

田邊駿一 フェスやイベントのバックステージで、いろいろな先輩バンドの方とお会いしますが、細美さんは別格で緊張しますね。「LAST HERO」という曲名は、僕ら自身も誰かにとっての、最初で最後のヒーローでありたいという気持ちでつけたんです。でも、そう言ってもらい続けるためには、僕ら自身もずっとかっこいい存在で居続けないといけないという、自分たち自身にも言い聞かせているところがあります。

――カップリングの「WINNER」も、ブルエンらしい応援歌。歌詞には頂上という言葉が出て来ますが、みなさんにとっての一つの頂上である日本武道館ワンマン公演を10月9日に経験した今、次の目標や頂上は?

田邊駿一 実は、頂上だと思って立ってみたら、まだ5合目にも届いていなかったというのが正直な感想です。

辻村勇太 雲に隠れてて分からなかったけど、もっと上があったみたいな。

田邊駿一 バンドにとっての頂上って、バンドが終わるときなのかな? って、武道館をやってから思いました。それくらい、終わる気はまったくないし。MCで、「ここで終わりたくない」とずっと言っていたんですけど。イメージしていた感覚と全然違うんだなって。

高村佳秀 ステージを降りた瞬間から、反省会が始まって。次はこうしよう、もっとこうすれば良かったって。気持ちが次へ次へと向かっていました。

江口雄也 楽しかったし達成感はあったけど、気持ちが舞い上がるようなことはなかったですね。

辻村勇太 あのときの武道館に対しては、今のBLUE ENCOUNTを100%出せたと思うので後悔はありません。でも、もし次にやる機会が訪れたときは、こうしたいああしたいという気持ちが大きくて。それは、やってみてから感じたことです。

――そこに立たないと見えないものがたくさんあったと。

田邊駿一 もちろん大きいところでやるとか、ツアーをやるとか、映画主題歌をやるとか、誰々と対バンしたいとか、そういう類いの夢はたくさんあります。でもそれ以上に今考えているのは、自分たちがもっと強くなるためにはどうしたらいいかということ。夢とか目標とかよりもっとエグい部分で、バンドとしてもっとCDが売れるためには? 動員を増やすためには? どうしたらいいかを必死に考えています。

「こんなにも浸れないものなのか!」

BLUE ENCOUNT使用

BLUE ENCOUNT

――バラードの「夢花火」という曲も収録されていますが。

田邊駿一 「夢花火」は、熊本時代に作った曲なので、憧れや夢に浸っている歌です。だから正直言うと、武道館をやったとき「こんなにも浸れないものなのか!」と思いましたよ。もっと浸りたいと思ったし、後輩バンドを山ほど呼んで「あのときはこうだった」とか自慢したかったです(笑)。でも、そんなことやって次に結果を出せなかったら、めっちゃ寒いと思って。だから何だろう、順番で言うと今が、やっとスタートラインなんだと思います。

――武道館は学生のときからの夢だったから、武道館まではずっと学生のときの気持ちを引きずっていたのかもしれないということ?

田邊駿一 おっしゃる通りで、ずっと武道館まではノスタルジックに浸っていたんだと思います。でも僕らは想い出を語るだけのバンドにはなりたくないし、武道館をやったことでノスタルジックな想いと決別出来た。だからこそ、次の日からすぐに次のことや新しいことを考えることが出来ています。

――来年1月11日にはニューアルバム『THE END』をリリースするとのこと。武道館後のアルバムなので期待値も高いですね。それに際してのツアーもあって、3月20日には幕張メッセ国際展示場でのライブが決まっていますね。

田邊駿一 アルバムは、ツアーと並行しての怒濤の制作だったけど、僕らにしては余裕を持って作れました。今回は1曲1曲クセのある曲を作れたし、期待に応えつつ良い意味でそれを裏切れるものになったと思います。楽しみにしていて欲しいです。

江口雄也 次の大きな会場としては、幕張メッセという武道館以上のキャパが控えています。武道館は1回目の俺らの夢の頂点だったけど、その先にまた新たな幕張メッセというものが見えて来て、そこに向けてまだまだ俺らのことを知らない人たちに、どうやったら俺らのことを知ってもらえるのか、チーム一丸となって考えていきたいです。

高村佳秀 今のままでは、幕張メッセは未知数だけど、埋まるにしても埋まらないにしても、応援してくれる人たちにもっと広い風景を見て欲しいし。ずっとその作業の繰り返しなのかなって思います。

辻村勇太 不安はあるけど、根本的なところで俺たち自身がどれだけ楽しめるかというところだけは、地続きでずっと繋がっている。武道館もすごく楽しかったけど、もっとスキルアップしたり、もっとかっこいいパフォーマンスをするためにはどうしたらいいか、どうやったら楽しめるか。それを求めていれば、おのずと成長出来ると思っています。音楽に対する貪欲さは忘れずにいたいですね。常に何かを吸収していないと、持っていないものはアウトプット出来ないですからね。(取材・文/榑林史章)

 ◆BLUE ENCOUNT 熊本で結成した4人組バンドで、メンバーは田邊駿一(Vo&G)、辻村勇太(B)、江口雄也(G)、高村佳秀(Dr)。インディーズ活動を経て、2014年にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。これまでにアニメ『銀魂゜』OPテーマ「DAY×DAY」、アニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』OPテーマ「Survivor」などがヒット。エモーショナルなバンドサウンドと、田邊の熱いMCがファンの胸を掴んでいる。2017年1月11日にアルバム『THE END』をリリースするほか、3月からワンマンツアーを開催する。

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