フォーリミ・オーラル・ブルエン、アリーナツアー初日で放った光
「ONAKAMA 2021」
「ONAKAMA 2021」(撮影=ヤオタケシ)
04 Limited Sazabys、THE ORAL CIGARETTES、BLUE ENCOUNT、ロックシーンを牽引する同世代3バンドが集結した「ONAKAMA 2021」アリーナツアーの初日公演が、1月24日に日本ガイシホールで開催された。
同じ釜の飯を食った仲間、つまりONAKAMAな3バンドが互いを高め合い、尊重し合い、その上でバチバチにやり合う三つ巴的ライブで新時代の到来を叩きつけたあの日の新木場STUDIO COASTから5年。04 Limited Sazabys、BLUE ENCOUNT、THE ORAL CIGARETTESによるONAKAMAがコロナ禍真っ只中の2021年にアリーナツアーに規模を拡大して帰ってきた。コロナ渦での開催にいたって不安に思う人もいただろう。しかし会場では徹底した感染対策がなされており、随時アナウンスもされていた。スタッフそしてメンバーもこの日のために、十分検討し、準備を重ねたのだろう。安心してライブを楽しめる空間がそこには用意されていた。
決して馴れ合いは好きじゃないであろう3組が今このタイミングでONAKAMAを開催したことは偶然なのか必然なのか、またそこにどんな意味があるのか、色んなことを想像するが、その色んなことを全部飲み込んだ上でまず感じたのは、「ああ、きっと対バンイベントをしたかったんだろうな」というバンドマンとしての彼らの欲求だ。新型コロナウイルスが国内で発症してから1年、ライブが全く出来ない時期もあったし、配信や無観客ライブという新しいスタンダードも生まれた。様々な規制の中で試行錯誤しながら行われたライブの多くはキャパを制限したワンマンライブだ。そういった活動のひとつひとつに意味があり、どの選択も間違いではなかった。だけど、きっと、バンドマンは対バンがしたいはずなんだ。それはステージに立った12人の表情が物語っていた。筆が止まらない。止まらないから続ける。この1年、バンドもリスナーも戦ってきた。戦い続けてきた。そういう意味ではステージの上も下もなくみんながONAKAMAだ。
そんなONAKAMAが集まったんだから湿っぽいのはなしだ。ツアー初日、名古屋はガイシホール。全員が全員、揃いも揃って5年前とは比べ物にならないほどパワーアップしてお互いの成長をぶつけ合うような、まさに「対バン」なライブを見せつけた。
BLUE ENCOUNT
トップを切ったのはBLUE ENCOUNT。田邊駿一(Vo・G)の国歌斉唱ならぬONAKAMA斉唱な独唱にガイシホールが包まれると、その静寂を切り裂くようにカッティングギターとチョッパー、そして追いかけるようにスネアが連打され「バッドパラドックス」でライブがスタート。目の前に大切なファンがいて、その前でライブをする。そんな当たり前だったことに興奮した表情を浮かべ「全員で飛びませんか!」と会場を煽る。声が出せないという制限の中、ジャンプで応戦するオーディエンスの姿にメンバーも嬉しそうだ。「君が居て僕が居る」そんな当たり前のことを幸せだと思える抑えきれない感情を2ビートに乗せた「THANKS」や祭りビートが炸裂する「VS」と「これがライブだ!」と、思わず叫びたくなってしまう気持ちを堪えるのが必死だ。
「手を叩いて正解だと言ってくれる人もいれば、それは誰かにとっての不正解でもある。今日ここに来るというあなたの選択に負い目を感じないで正解だと信じて欲しい」そう語り掛け歌った「ハミングバード」には考えて考えて出したそれぞれの答えを肯定する優しく温かいメッセージが込められていた。ライブに行くことをどこか後ろめたい気持ちで居る人もいるだろう。弱さは問いかけてくるけれど、そんな不安に「夢中で飛び込んだ世界は正解だ」と肩を組んでくれる。それがBLUE ENCOUNTだ。ツアー初日のトップバッターが彼らであったことで不安も後ろめたさもガイシホールから吹き飛んだように感じた。
THE ORAL CIGARETTES
2番手はTHE ORAL CIGARETTES。BLUE ENCOUNTに続き「人生は選択の連続だ。ライブに行く、行かない、ライブをやる、やらない、みんな正解だ。自分の意志で選択してほしい」と語る山中拓也(Vo・G)。色んな選択がある中でTHE ORAL CIGARETTESが選択したのはキラーチューン祭りだった。音楽というものはとても不思議で、そのときそのときの状況や感情が曲に宿ることがある。ライブのオープニングを飾った「容姿端麗な嘘」は「規則正しい世界が幕を閉じ 今はすでに当たり障りなく規則正しい世界が幕を閉じ 生命の総入れ替えの衝動」という言葉から始まり、不思議とコロナ以前とは違って聴こえる。妖艶に攻め立てるライブを展開しつつ、「トナリアウ」ではONAKAMAバンドやオーディエンスと支え合い、共に成長していくことを力強く叙情的に歌い上げる。悲しみは降り注ぐけれど、隣り合った仲間と成り合って鳴らし合う。これがTHE ORAL CIGARETTESのONAKAMAに対する向き合い方なのかもしれない。
不安や絶望の先にある光がぼんやりと見えた頃にまた失って、もうずっとそんなことを繰り返している気がする。だけど闇を切り裂くのはやっぱり光で、決してTHE ORAL CIGARETTESはその希望を捨てていない。全く諦めていない。会場が「5150」の声無き大合唱で包まれた頃、ステージのメンバーが光に先導する勇者のように見えた。閉ざした昨日を照らして、戻れない場所を探して、ライブを自分達の手で自分達のもとに取り戻す。そんな覚悟と決意を「狂乱 Hey Kids!!」では感じずにいられなかった。まだ時間は掛かるかもしれないけれど、一歩一歩進めていけばいい。きっとONAKAMAはすぐ隣で付き合ってくれるだろう。勿論、THE ORAL CIGARETTESも。圧巻のライブを見せつけ、彼らは地元名古屋の04 Limited Sazabysにバトンを渡しステージを後にした。
04 Limited Sazabys
大トリを飾ったのは、YON EXPO、MERRY ROCK PARADE、そしてこの日のONAKAMAと、活動再開後は地元愛が爆発している04 Limited Sazabysだ。4人が元気よくステージに飛び込んでくると、その圧倒的ヒーロー感に感動すら覚える。ガイシホールに広がる耐えて耐えて超えてきたからこその景色。彼らの真骨頂である名曲「monolith」から畳みかけるようにアンセムを連打する彼ら。制限こそはあるが感覚は完全に取り戻しているようだ。「大人になって最初に失くなるのって悔しいっていう感情なんだって。だから俺たちはブルエンとオーラルに悔しいって思わせるライブをします」と宣言した後に「旅の仲間とすぐに行くから」「旅の仲間と確かめながら」と歌う「My HERO」でのONAKAMA愛に彼らが切磋琢磨してきた長い時間を想像する。立っているのはガイシホールというとんでもなく大きなステージだけど、まるでそこが屋根裏の奥の引き出し秘密基地に見えるのは、同じ釜の飯を食ってきた仲間と一緒に立っているからだろう。
音楽やライブが、勿論それだけじゃないけれど、誰かにとって生活そのものであったり生き甲斐そのものであるものが不要不急だと言われるようになって、ライブに足を運ぶことに胸を張れない人もきっと会場にはいたと思う。胸は張れないけど心は晴らしたい。そんな思いをGENの「音楽は心の健康には絶対に必要だ」というMCから感じる。直接会って、直接届けることの重要さをバンドマンはもう嫌ってくらい感じているはずだ。「ライブで届けられること、救われるものがあるはずだ」という言葉は、ファンに向けて言った言葉だけど、自分自身にも言い聞かせているように見えた。複雑な世界になってしまったけど、くしゃくしゃになった地図をもう一度広げて旅を再開させよう。ラストは「Squall」「midnight cruising」と続けて披露し地元名古屋に、もう何度目かの錦を飾った。
ラストはブルエン田邊、オーラル山中を呼び込みONAKAMAスペシャルverでの「swim」をかっこよくキメる…はずが田邊は何故か腕を吊っての登場。どうやらライブの最後に、熱くなりすぎたのか肩が脱臼したようだ。「何やってんの?」と笑いながら突っ込むGENが更に心配するのは山中のキー問題。「ちょっとだけキャラ崩壊しちゃうかも」と山中もスイッチが入りトリプルヴォーカルでの「swim」を披露。なんだろう、今回のONAKAMAでのメインヴィジュアルは真っ黒な服に身を包みまるで暗黒騎士みたいだった彼らが、ステージでは眩いまでの光を放っているのだ。その光は閉ざした昨日を照らし、どんな答えもどんな選択も間違いではないと教えてくれる。同じ時代に、同じ痛みも、同じ喜びも共有しているんだ。バンドだけじゃない、集まった全員がONAKAMAだ。この光を、もっと光を、繋いでいくのが2021年のONAKAMAなのかもしれない。ツアー初日、名古屋ガイシホールにて確かに感じたその光は1月31日、大阪城ホールへと。先に進むだけ。さらに進むだけだ。【柴山順次(2YOU MAGAZINE)】