■踊れるロックンロール

布袋寅泰と黒田晃年(G)(撮影・山本倫子=Michiko Yamamoto)

布袋寅泰と黒田晃年(G)(撮影・山本倫子=Michiko Yamamoto)

 6月22日に発売されたばかりの、未来を見据えたベスト・アルバム『51 Emotions -the best for the future-』。その1曲目に収録された、ラップとロカビリーの融合によって生み出された「バンビーナ」のイントロが鳴り響くとオーディエンスがざわめいた。一筋縄ではいかないギミッカブルなリリックと楽曲展開、なのにとことんポップ。ホーン隊がバンドサウンドに絡み合うことで生まれるエモーショナルな音の厚み。まさに布袋らしさ溢れる斬新な踊れるロックンロールに酔いしれる。

 続けて響き渡る、河村"カースケ"智康のカウントから解き放たれる8ビート。聞き覚えのある派手めなシンセ・フレーズとともに国民的ヒット曲「スリル」が炸裂する。黒田晃年とのツインリードによるギターソロ、LOVEとのハーモニー、聴きどころ満載のヒットチューンだ。歌詞の一部を改変して、眼前で跳ねるオーディエンスをさらに煽ることも忘れない。どこまでも、どこまでも走り続けていく、そんな思いの強さを感じられたナンバーだ。

 本編ラストは、ザ・ルースターズの井上富雄が引っ張るベースラインが痛快な、パンキッシュなモータウン・ビートが切ないリリックに絡み合う「POISON」。HOTEIヒストリーを凝縮したステージを締めくくるにふさわしい、グラマラスなヒット・チューンだ。オーディエンスによる熱狂が、至福な空気感を会場いっぱいに満たしていく。歌詞にもあるように、このまま時が止まればいいのに、そんなことを思ったワンシーンだ。

■音楽のチカラ

 フリーライブであることによって、普段のライブとは違い、様々な世代の老若男女が集まったフェス会場。多様性ある人々がひとつの音楽で熱狂をする。こんなに胸が高鳴ることはないだろう。音楽にチカラを感じる瞬間だ。布袋は、野外フェスティバルが似合う。改めて確信したライブだった。

 鳴り止まないアンコールに答えて、再びステージに登場する布袋。ここでまさかの「NO.NEW YORK」をプレイ。屋外で聴くとさらに喜びが120%増すBOØWYの人気チューンだ。ギターが2本、キーボード、ホーン隊の参加といえば初期アレンジを彷彿とさせながらも、強力な進化を感じさせてくれる最新型の「NO.NEW YORK」。間奏で、大きく右腕を振り回す布袋のシルエットが目に焼き付いてはなれない。こんなに絵になる、弾きながら歌うギタリストは他にはいないだろう。

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