布袋寅泰「苦かった思い出もワインのように甘くなってくるもの」
■BOØWY時代の楽曲も披露
間髪開けず、“カラダはあたたまったかい?”と言わんばかりに、3曲目に鳴り響いたリフレインは「BE MY BABY」。1989年、吉川晃司と結成したユニット、COMPLEXのヒット曲だ。日本を代表する伝説的なロックンロール・ナンバーのプレイに沸き起こる熱狂的な大歓声。今回は、会場に高崎市民限定スペースもあるがゆえに、布袋で初ライブを体験する子供たちも多いことだろう。もしかしたら、今日をきっかけに新たなロックスターの継承が起きていたかもしれない。
幾何学模様のHOTEIモデルにギターを持ち替え、BOØWY時代に1曲だけ布袋がリード・ヴォーカルを担当したダンス・チューン「DANCE CRAZE」をホーン・アレンジで披露。ソロ・デビュー・アルバム『GUITARHYTHM』のルーツともいえるノーウェイヴなビートは、音楽は絶対的に自由な存在であることを主張しているように感じた。ファンキーで印象的なギターリフは、どことなくベースラインのようなセンスも感じる。様々なバックボーンを血と肉としながらも、オリジナリティーが際立つ布袋らしいユニークなアプローチだ。後半、LOVEによる妖しく派手めなコーラスワークも絶品だったことも付け加えておこう。
■苦かった思い出もワインのように甘く
ここで一瞬、布袋はクールダウン。地元高崎での思い出を、優しい口調で話しはじめた。
「この街で14歳の時にギターと出会って、いつかデヴィッド・ボウイの隣でギターを弾きたいなと夢見てました。それこそ、この辺に医療センターというホールがあって、アマチュア時代によくライブをやっていました。そして素晴らしい仲間と出会って、BOØWYというバンドを結成して日本一のバンドになりました。そして、ソロになってからも長い長い年月が経ちました。なかなか自分の人生、振り返ってばかりだと前に進めないし、時には、ほろ苦い思い出ばかり見つけてしまいそうで記憶の扉に鍵をかけてしまうこともありましたけど、30年〜35年も経つと、ちょっと苦かった思い出もワインのように甘くなってくるものですね。次にお送りするのは最新のシングル『8 BEATのシルエット』です。この曲は、自分の人生を故郷の景色とともに歌った曲です」
前夜、会場隣の高崎市庁舎に向けて、布袋マークをデザインしたダイナミックなプロジェクション・マッピングがおこなわれた。巨大なビルへ向けて投影された最新曲『8 BEATのシルエット』への布袋の思い入れは深い。どこを切っても布袋サウンドというエネルギーの強さはもちろん、注目は35周年という節目で今までを振り返った歌詞だ。
歌い出しの“One Day 風の街 夢を見つけた少年は”の“風の街”とは、空っ風が吹く街、高崎からはじまったHOTEIヒストリーをあらわしている。『8 BEATのシルエット』は、ライブで演奏を耳にするたびに進化を感じたナンバーだ。数年後には、布袋を代表する楽曲になっているかもしれない。そんな、抜きん出たポップセンスを再認識させてくれた楽曲だ。