「言葉」を届けたい、Swimy 孤独と愛の短編集「おひとりさま」
INTERVIEW

「言葉」を届けたい、Swimy 孤独と愛の短編集「おひとりさま」


記者:木村武雄

撮影:

掲載:16年06月27日

読了時間:約29分

小説の世界感を膨らませるトリプルボーカル

みっけ(Vo&Dr)

みっけ(Vo&Dr)

――アルバムの世界観は「1冊の本のような感覚で作った」と聞いていたので、インタビューを受ける相手が小説家というイメージで聞く内容を考えようと思ったのですが、断念しました。

Takumi はははは(笑)。

――今回は平成のまおさんやみっけさんが歌っている部分が多いという印象です。「本」という先入観がありましたので、お二人の役割はなお一層重要かと思いますが、例えば「Killer Killer」はどのようなボーカルの割り振りでしょうか?

平成のまお 「Killer Killer」は基本が私で、ハモリがみっけです。

――みっけさんの歌声はTakumiさんと似ていますよね?

みっけ いや、どちらかと言ったらこのお二方(Takumiと平成のまお)の方が。

Takumi でもエンジニアさんに「声質が似ている」というか「声のアクのある部分とか届き方」がみっけとTakumiはわりと近いって言われましたね。

――共鳴しているというか、そういう風に感じたんです。「Killer Killer」では。平成のまおさんが歌っている「深く深い眠りの中」の部分、すごく意味があるような気がするのですが。

平成のまお 歌詞にストーリー性があるので、歌い手は変わるんですけど一つの物語として一貫して届くように、とにかく歌詞をしっかり意識して歌うように。

――「御一人様」は小説の中にあるプロローグやナレーションの役割があると感じたんです。平成のまおさんとみっけさんが歌っている箇所はやはり、物語の全体像を説明するナレーションの箇所。例えば「Killer Killer」では、歌い手がTakumiさんから平成のまおさんに変わっていますよね。歌の2番「深く深く 眠りの中♪」から物語が転換されている、もし主人公がTakumiさんだとしたらTakumiさんはその前の「僕を殺して 慈しむようだ♪」のところ死んでいて、それ以降の物語はナレーション、いわば平成のまおさんが進めていくという感覚。ここの部分をどういう気持ちで歌われたのでしょうか?

平成のまお 死んでるとまではいかないんですけど、そういう意味では確かに主人公が変わるくらいの気持ちしたね。転調もしますし、スポットライトが当たる場所が変わるみたいな。そういう意味では死んでるのかな。魂だけもらって、違う見た目で魂は一緒みたいな。

――基本「御一人様」で宣言しているのは、この物語は「感情にまつわる歌」ですよという。感情が死んでしまったというか。

Takumi そうですね。この曲は、自分は人に嫌われたくないとか人に好かれたいとか、そういう思いで日々生きていく中で自分自身を出せなくなっていってしまった時に、やっぱり人に合わせてしまうというか、本来の自分がどんどん感情と共に無くなって、それこそ自分を殺してるなという歌詞だったので、「Killer Killer」で言うとその部分が唯一ゆったり、まったりとした空気感が流れる場所なんです。

 わりとテンポが速い曲の中で平成のまおさんが「深く深い~」と歌うのは、僕の中でやっぱり言葉もそうなんですけど、この楽曲に対して「どう感じてもらいたいか」という。そこの部分以外は僕がそこに対する思い、自分を偽っているなとかそういう自分に対する思いだったりとか、そういう事に対しての思いを言葉として並べているんですけど、そのBメロの「深く深い~」という所だけは、この音を通じてリスナーにどう感じてもらいたいかという。やっぱり僕らの音楽に浸って、こう深い深い世界に潜り込んで欲しいなという思いがあったので、音も今までアップテンポだったのをちょっと落とし気味に聞こえるように大きくしたりとか。

タイキロイド(Gt&Cho)

タイキロイド(Gt&Cho)

――ここの箇所はもともとまおさんに歌ってもらおうというのはあったのですか?

Takumi 2番は平成のまおに歌ってもらうつもりだったんですが、1番をどうしようかは悩んでたんです。聴き心地は、歌い手を変えて切り替わった方が世界観が変わったという演出できるかなと思って。だからそれは聴いてからの判断でしたね。僕も一回歌ってみたりしたんですけど。

――平成のまおさんはそういったTakumiさんの思いは聞いていなかった訳ですよね?

平成のまお 聞いてなかったですね。

――歌の割り振りを決める時に、歌詞はこういった意図であるという事は基本教えない?

Takumi 教えないですね。全員がソングライターであってしまったらバンドである意味が無いと僕は思っていまして。僕は自分の曲を客観視できないんですね、自分が作っているので。でも一緒に制作している人間、最も近い身内で唯一自分達の曲を客観視してくれる人がメンバーだと思っているんで、そこに説明しすぎるとこちらの観点になって演奏してしまうと思うんです。やっぱり僕はリスナーに近い立場で一緒に作って欲しいんですよね。その方がより広がるというか。僕はこういうつもりで歌ってたけど、私はこう捉えた。そういう捉え方のリスナーもいる訳じゃないですか。僕の意図と違う受け取り方をしてくれるリスナーが。そういう感覚でメンバーには演奏して欲しいので。

――こう歌に感情をぶつけたけど、冷静になって皆さんどうでしたかというような。

Takumi そうですね。

――「唯」も面白いですね。「唯」は平成のまおさんが通して歌っているので転調に気付くんですけど、「Killer Killer」はボーカルが入れ替わる事によって転調に気付きにくい。「唯」の場合は明らかに転調であることがはっきりしています。歌詞の「もういいよ」というところが前半と後半それぞれで違いますが、これは何か意図が?

Takumi どちらでも捉えてほしいというか、この曲は今作で唯一分かりやすくラブソングとして受け取られる事が多くなる楽曲だと思っているんです。男目線のラブソングだったり、女目線のラブソングだったりというのを、ボーカルが一人だと「この人の彼女や彼氏に向けて歌った曲なのかな」というのをリスナーが勝手に想像しちゃうことがあるじゃないですか。そういった部分の性別感というのを男女共に響いてほしくて。

 だからタイトルも「唯」というのは「唯一の人」という意味なんですが、その人にとって唯一の人を思い浮かべてほしい、それが男性にも女性にも捉えられるように。それをより演出するには女性が歌ってるとやっぱり「彼氏の事歌ってるのかな?」とか、僕が歌ってると「女性の事想って歌ってるのかな?」と受け取られてしまうので。両方捉えてほしかったので、あえて男女が歌っているのをわかりやすくしようと。

バンドの利点が最大限に活かされる

Takumi(Vo&Gt)

Takumi(Vo&Gt)

――それが効果的に出ていますよね。バンドの利点を活かしているという感じですね。それを思うと掛け合いや転調は確信的ですね。

Takumi 「Killer Killer」の場合は「あれ? 1番はTakumiが歌っていたはずなのに聴き進めていったら歌っている人が変わっている?」というような仕掛けがしたかったので、“転調を匂わせない”というのは僕らの狙い通りだったんです。でも今回の「唯」に関しては、歌っている人が変わっているということをよりしっかり伝えなければというのがありまして。ナチュラルに気付かないままに変わっていったら僕らの意図する部分じゃないので、「男女が変わっている」という部分に気付いてほしいので、この曲の方が転調はわかりやすいと思うんです。

 この曲は平成のまおやみっけと女性が歌う曲で、2曲目は僕がメインで歌う曲でという男女の強みもあると思うんですけど、僕は同じ曲のサビを平成のまおが歌っているのを聴いてみたい、逆も然りTakumiが歌ってるのも聴いてみたいとか、そうなるなと思うんです。好きなバンドを見ていてそう思うんです。複数人が歌っているパターンでたまに「パートチェンジして歌ってくれないかな?」と思いながら聴いているんですよ。なのでそれなら僕らは「そういう曲を作っちゃえばいいんじゃないか」というので、それを意識をし始めたのはわりと最近なんです。なのでそういった仕掛けは今までにはなかったですね。

――この曲こそ、作り手の「意図」を知らなければならないと思いますが。

平成のまお これは特に説明はしていないんですけど、歌詞を見たらTakumiにしては珍しくストレートなラブソングだったので、読んだら失恋して大切な人を失った曲だなというのが分かったので、そういう意味では自分がそういう立場になって歌おう、みたいな。

Takumi この曲は主人公に対して相手がいるんですね。「その相手は間違いなくこの世にはいない人だという事をふまえて歌ってほしい」ということを伝えたのは覚えていますね。

平成のまお だからこの曲は分かりやすかったですね。他の曲はどういう気持ちでこの歌詞を選んだのかがちょっと分かりづらい部分もあったんですが、これは歌詞もストレートに入ってきたので訊かずともこう…。初めは失恋という捉え方だったんですが、「相手はこの世にいない」というという話を受けて、「ああそうやったんや」と、より切なさを出す感じでした。

――それはレコーディング前に?

平成のまお そうですね、レコーディング前に「ちなみにコレ…」くらいな感じで。

Takumi 平成のまおの歌い方から、失恋のエモさの部分に毒を感じたんですね。それは間違いではなくて、例えば「別れた男性への歌」という。でも僕がイメージしていたのは「別れるつもりじゃなくて別れた2人」について歌ってたので。

平成のまお 相手が生きているつもりで歌ってたので。

――怨念を込めてみたり?

平成のまお そうです(笑)。ちょっと憎しみを感じさせちゃったんです。

Takumi この曲はそういう物語ではなかったので、そこだけはちゃんと理解してもらった方が良いかなと思って、さすがに伝えたんです。

平成のまお きたない部分だけを排除した感じですね。キレイに歌うけど、切なさも。初めは憎しみの失恋というテーマだったんですが、Takumiの話を聞いてから憎しみを排除して。

――みっけさんはコーラスもやっていますが、コーラスをやる上でこの曲に関して何かありましたか?

みっけ 色んな所でコーラスを入れたり掛け声を入れたりしたんですけど、ただただ教科書通りにキレイにハモっていくよりも、ちゃんと感情をしっかり入れて、私の場合は曲の話を聞かずにその歌で感じとったので、ブレスの所とかもニュアンスを意識したりしていました。

――死別だというのは知っていたのですか?

みっけ 知ってました!

――受け止め方としては、Takumiさんが歌ってコーラスで入る時は、もしかしたら死別した相手かもしれないという?

みっけ そうですね。

――その“死に別れた方”の過去の声を意識させて、コーラスするのもドラマチックですよね。回想ではないけど。

みっけ ああ、確かに。ちょっと意識しよう(笑)。

――平成のまおさんの場合は、平成のまおさんの心持ちというのがコーラスとして入ってくるのもまた面白いのかなと思いますね。ところで、3人ボーカルで、タイキロイドさんがいずれボーカルとして入るという話を以前されていましたが、今回マイクは置いてなかったですか?

タイキロイド コンカイハ スコシ。スコシダケ ハイッテマス。

――そうなんですか? ちなみにどの辺でしょうか。

タイキロイド 「ナイトミュージック」ノ、カシニ ハ ノッテイナイ サケビゴエ ヲ。

――今後、ボーカルパートは増えていくのでしょうか?

タイキロイド ドウデショウカ?

Takumi タイキロイドさん次第でしょうか(笑)。

平成の?究極の?まお誕生の秘話

平成のまお(Vo&Ba)

平成のまお(Vo&Ba)



――そういえば平成のまおさんは何で“平成の”なんですか?

平成のまお 名前を決める時に「画数占い」にハマッていて、「まお」だけじゃなんかなあと思って、何か付けたかったんですけど、せっかくなら運勢のいい名前がいいなと思って、何パターンも試していたら、「平成の」と付けたらすごく良くて(笑)。でも2択だったんです。「平成のまお」と「究極のまお」でメンバーにアンケートをとったところ、「究極よりは平成じゃない?」といった感じで、「じゃあ平成でいくわ!」と。でも、後悔はしてますね。

Takumi 後悔してるんか(笑)

平成のまお その名前のおかげで、名前の由来を聞いて頂ける事があるんですけど、そんなに大したエピソードじゃないので結局は話がカットされて終わるんで(笑)。もっと面白いエピソードがあればなあと思って、安易に付けた事にちょっと後悔を。

――じゃあ、カットせずに丸ごと載せますね。

Takumi 貴重だね(笑)。

平成のまお 結局全然記事にならなかったし、ラジオの収録でもだいたいカットになるしね(笑)。後付けで何か面白いエピソードを作ろうかなと思うんですけどなかなか思い浮かばなくて…。後悔してるんです。もしかしたら次のアルバムから「まお」になってるかも。

一同 はははは(笑)!

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