冨田勲さんのお別れの会(撮影・小池直也)

冨田勲さんのお別れの会(撮影・小池直也)

冨田勲さんのお別れの会(撮影・小池直也)

 5月5日に逝去された、作曲家・編曲家・シンセサイザーアーティストの冨田勲さん(享年84歳)のお別れの会が15日、東京・青山葬儀所で執りおこなわれた。多くの参列者のなかで山田洋次監督が挨拶し、SUGIZOや浅倉大介ら音楽関係者が故人を偲んだ。

 この日の参列者は800人で、SUGIZO、浅倉大介、作曲家の吉松隆ら、多くの音楽家らが参列。御供花も坂本龍一、小室哲哉、松武秀樹、渡辺貞夫、葉加瀬太郎、宇川直宏、森田一義など錚々たる名が並んだ。

 式中では、サラウンドシステムで冨田さんの楽曲を流しながら、彼の功績を振り返った。数々の劇伴音楽や、71年から個人輸入という形で手に入れたモーグシンセサイザーによる創作は今でも美しい音像である。

 そして、晩年は初音ミクを起用した「イーハトーヴ交響曲」、さらに11月11日に上演予定の遺作「ドクター・コッペリウス」の打ち合わせを、亡くなる1時間前までおこなうなど最後まで創作意欲が消えなかったという。

 冨田さんとは、音響映画『学校』シリーズでタッグを組んだ映画監督の山田洋次氏、初音ミクを開発したクリプトン・フューチャー・メディア代表の伊藤博之氏、そして、VTRでメッセージを寄せた米ミュージシャンのスティーヴィー・ワンダー氏、それぞれが次の通りの要旨で弔辞を述べた。

弔辞を述べた山田洋次監督(撮影・小池直也)

弔辞を述べた山田洋次監督(撮影・小池直也)

 ◆山田洋次氏 冨田さんが音楽の世界に残された大きな業績に比べれば、僕の映画音楽の領域はほんの一部分かもしれません。僕は、これからも仕事をするつもりでした、その予定がありました。同じ世代の友として一緒に仕事がしたかったのに、なんで先に逝かれてしまうのですか。とても残念です。心から悔しい想いにかられつつ、お別れの挨拶を申し上げなければいけません。さようなら冨田さん。美しい音楽を作ってくださってありがとう。あなたと、あなたの芸術を僕はいつまでも忘れません。

 ◆伊藤博之氏 (初めてお会いした時)冨田先生は初音ミクの事もご存じで、昔、モーグシンセサイザーをいかに“歌わせるか”に随分試行錯誤した話をされていました。ちょうど先生が「イーハトーヴ交響曲」を構想されている時で、クラシック作品のプリマドンナにバーチャルシンガーである初音ミクを起用することについてワクワクしながら話したことを今でも覚えています。モーグシンセサイザーにせよ、初音ミクにせよ、先生は先入観や偏見を持たず作品に取り入れて、面白いと思う事に対する好奇心が最後の最後まで途切れませんでした。

 また、昨年11月の国際交流基金賞授賞スピーチでは、第二次世界大戦中のドイツの歌謡曲「リリー・マルレーン」が敵国でも歌われた事を例に挙げて、地球全体の国々が心を一つにすることの必要性と、世界共通言語である音楽の可能性について説かれました。この先生の想いを実践し、後世に伝えるのが私を含めてここにいる皆さんの使命だと思っています。いつか宇宙でばったり会える事を楽しみにしています。

 ◆スティーヴィー・ワンダー氏 その発想は並外れていて、その精神は他に出会ったことがなく、その心はいつも思い起こさせてくれる。私が生まれた時に母から授かったものを。

 2006年、私の誕生日5月13日と同じ月の31日、母は天国へと旅立った。でも私は知っている。いつかどこかで永遠の生命を得たTOMITAと母は出会い、私について語り合う。そして母は彼に話すだろう、私がどれだけ彼の音楽を繰り返し聴き、その天賦の才能を信奉していたかを。

 御親族の皆さん、あなた方は素晴らしい贈り物を与えられました。そして、ご存じの通り、天からの贈り物は天に返されなければなりません。だから今は祝福しましょう。彼が遺してくれた素晴らしい作品を。ありがとう。

 喪主の冨田勝さんのあいさつは次の通り。

 ◆冨田勝さん 「渡り鳥が危険を冒してまで海を渡るように“やらねばならぬ”ことは人それぞれにある。私の場合はそれが音楽だったのです」。これは冨田勲が82歳の時の言葉でした。父は「まだやりたいことが2つある」と言っていました。一つは言うまでも無く「ドクター・コッペリウス」ですが、もう一つはなんだったのか正確にはわかりせん。冨田勲の最後の夢とはトミタサウンド理想の宇宙を次世代に引き継いで、さらに発展、進化してもらいたかったのかもしれません。

 今、そんな父が恐らく皆さんに一番お聴き頂きたいと思っているのは「イーハトーヴ交響曲」の「銀河鉄道の夜」です。そして、この曲の中に冨田勲が作詞した讃美歌が出てまいります。どいう気持ちで作ったのかわかりませんが、その一説は「もうよい、お前の務めは終わった。その地を離れて、ここにおいで。永久に平和に暮らしましょう」というものです。この後、みなさんにもお聴きいただきますけれども、曲が終わりましたら父に盛大が拍手をどうぞよろしくお願いします。本日は本当にありがとうございました。

(取材・小池直也)

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