来日したフィリップ・グラスら(撮影・松尾模糊)

来日したフィリップ・グラスら(撮影・松尾模糊)

 米作曲家のフィリップ・グラス(79)が3日、東京・すみだトリフォニーホールで来日記者記者会見を開いた。11年ぶりの来日。4日に同ホールの大ホールで『THE POET SPEAKS ギンズバーグへのオマージュ』、5日は『THE COMPLETE ETUDES』の2公演を開催する。会見には共演する米ミュージシャンのパティ・スミスや、作曲家の久石譲らが参加し、今回の公演について意気込みなどを語った。

 『THE POET SPEAKS ギンズバーグへのオマージュ』は、パティとフィリップが深い親交を持ち、今年で生誕90周年を迎える米ビート詩人のアレン・ギンズバーグさんに捧げられた作品。海外では限られた機会にのみに上演され、過去全ての公演は瞬く間にソールドアウトを記録してきた。今回は日本での初開催となる。

 そのオープニングアクトとして出演する、チベット音楽家のテンジン・チョーギャルと、パティとともに詩を朗読する娘のジェシー・スミス、パティのバンドに参加する米ギタリストのレニー・ケイが今回の公演についてそれぞれコメント。ジェシーは「やっと母と共演できるのが楽しみ」と、日本では親子初共演になる今回の公演にエキサイトしている様子。

 日本での上演は、作家の村上春樹氏、翻訳家・柴田元幸氏が、劇中朗読されるアレン・ギンズバーグさんとパティの詩の完全新訳を手掛け、舞台上の大スクリーンに在りし日のギンズバーグさんの写真やイラストともに投影される。パティは「今回はフィリップとともに素晴らしい詩人であり活動家でもあったアレン・ギンズバーグの世界観を言葉として、作品として紹介できることになり光栄です。そして、その翻訳を素晴らしい小説家である村上春樹さんと、柴田元幸さんに手掛けて頂いたことにとても感謝しています」と日本初公演が開催できることを喜んだ。

 フィリップは「パティとアレンと3人で当時から演奏していた。アレンとパティが詩を朗読し、私がピアノを弾いた。1997年にアレンが亡くなってからは数年間、このような活動はやっていなかった。つい最近、やっとパティと一緒に復活することができた。不思議なことにパティがアレンの詩を読むと、アレンがそこに宿っているように聞こえる。僕らにとってアレンは大きなお兄さんのような存在でこうやって彼の詩とパティと“3人”で東京で公演できるのはとても嬉しい」とこの公演に対する特別な想いを語った。

 『THE COMPLETE ETUDES』は、フィリップが自身のピアノ楽曲の集大成として1990年代より作曲に取り組んだピアノ・エチュード20曲全てを演奏する貴重な演目。毎回開催地のピアニストと共演する形がとられ、2014年発表のフィリップのアルバム『The Complete Piano Etudes』で、全曲演奏を担当したオーストリア在住のピアニスト滑川真希と、久石譲が出演する。

 久石は「グラスさんのコンサートに参加させて頂いて本当に光栄に思っています。彼の緻密な世界を表現できるように頑張ります」とコメント。滑川は「ヨーロッパの知人に今回、久石さんとご一緒すると言ったらみんな『わぁ、すごいねぇ!!』と言ってくれて。フィリップの音楽をこの日本の素晴らしいホールでどのように再現できるか、非常に楽しみです」と抱負を語った。(取材・松尾模糊)

 ◆フィリップ・グラスとは 米メリーランド州ボルチモア生まれ。シカゴ大学、ジュリアード音楽学院卒業。オペラ、ダンス、演劇、映画音楽など様々な作曲活動をおこなっている。1998年公開された米映画『トゥルーマン・ショー』の音楽をブルクハルト・ダルウィッツとともに手掛け、ゴールデングローブ賞最優秀音楽賞を受賞している。2015年には、生涯に渡り優れた業績を残す音楽家に授与される“芸術のノーベル賞”とも称されるグレン・ゴールド賞も受賞している。

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