久石譲に聞くミニマル音楽とは、難解か?ポップか?
INTERVIEW

久石譲に聞くミニマル音楽とは、難解か?ポップか?


記者:編集部

撮影:[写真]久石譲に聞くミニマルミュージックとは(3)

掲載:15年09月19日

読了時間:約6分

[写真]久石譲に聞くミニマルミュージックとは(2)

ミニマル・ミュージックについて語る久石譲

 ミニマル・ミュージックという音楽がある。最小限の音を、同じパターンで反復させながら少しずつズラしていく音楽の手法で、現代音楽のジャンルのひとつに数えられる。なんだか難しい音楽みたいで、ちょっと近寄り難い雰囲気があるのは否めない。

 そんなところへ、数々の映画音楽やCM音楽を世に送り出してきた作曲家の久石譲が“バリバリ”のミニマル・ミュージックのアルバム『ミニマリズム 2』を8月にリリースした。

 そうした先入観もあって、恐る恐る久石に話を聞いてみると「あれ? 意外にも難しくない!」。クラシック音楽の要素にプログレッシブ・ロックやジャズ&フュージョンが加わり、さらにリズムやビートが入っていて、とっても聴き易い。何よりもポップで、ドキドキワクワクするような高揚感すら感じる。

 アルバムタイトルの「ミニマリズム」という言葉は、ミニマル(Minimal)とリズム(Rhythm)を組み合わせた造語だという。キーワードは「リズム」か?

[写真]久石譲に聞くミニマルミュージックとは(3)

丁寧に応えてくれた久石譲

 久石に尋ねると「小さい音型が何度も繰り返されるだけなので、最初はあれ? と思ってしまうかもしれない。でも、実はリズムを基調にした上で組み立てていますので、ロック音楽にも共通項があって、根はそんなに難しいものではないんですよ(笑)」と聴き易さの秘密を明かしてくれた。

 初期の前衛的なミニマル・ミュージックは、ズレを聴かせる、いわゆる難解なものが多かったそうだ。久石は現代音楽といわず、あえて“現代の音楽”と呼ぶ。

 「リズムというのは音楽の垣根を崩して、誰にでも理解できるものになるんです。このリズムがあるおかげで、ワクワクするとか躍動感といった感覚が生まれ、“現代の音楽”は垣根を崩して入り易くなる」。

 確かに、このアルバムを聴いているとジャンルや垣根といったカテゴライズがどうでもよくなってくるから不思議だ。

 「今、僕が作っているのは、何か新しい体験をするための音楽。あ〜面白かったね、と素朴に感じてもらえるような音楽。色々な人に聴いてもらえればと思っています」

 久石は昨年より、“未来につながる音楽を紹介する場”として『Music Future』コンサートを主宰しており、第2回の今年は9月24日と25日に東京・よみうり大手町ホールで開催される。

[写真]久石譲に聞くミニマルミュージックとは(1)

インタビューに応えた久石譲

 ミニマル・ミュージックの古典から、ポストクラシカルと呼ばれる“現代の音楽”気鋭の作曲家に加え、このコンサートの為に久石は新曲を書き下ろす。まだ世界でも稀な6弦のエレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーした全3楽章から成る大作だ。

 「第1楽章は、6弦のエレクトリック・ヴァイオリンでディストーションを利かせた“ロック”。衝撃的な出だしになります!」と新曲の構想に目を輝かせながら話す。

 「クラシックをよく知っているとか、ミニマル・ミュージックに詳しいとかは全然関係ない! なんだかわからなかったけど、もの凄く面白かった! と、そういう感覚を味わってもらえるだけで、いいと思います! その体験が、もう一回こういった音楽を聴いてみたいというきっかけになれば嬉しい」。

 クラシック系のホールでプラグド・サウンドが響き渡るとは。想像するだけでも楽しそう。

 さらに年末に開催される『第九スペシャル -2015-』や、『ジルベスターコンサート2015 in festival hall』では、第九の序曲として演奏される「Orbis~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」で、新たな楽章を書き加えた完全版を披露する予定だという。こちらもミニマル・ミュージックの手法で書かれ、変拍子を多用しているため演奏者にとっては至難の曲になりそうだ。

<CD概要>
▽タイトル:ミニマリズム 2/ Minima_Rhythm II
▽CD:UMCK-1518/価格(税込):3024円
▽収録曲
祈りのうた for Piano (2015)
Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas (2012-2014)
Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion (2014-2015) 
WAVE (2009)
String Quartet No.1 (2014)
I. Encounter/II. Phosphorescent Sea/III. Metamorphosis/IV. Other World

[写真]久石譲に聞くミニマルミュージックとは(4)

「ミニマリズム 2/ Minima_Rhythm II」

<久石譲プレゼンツ ミュージック・フューチャー Vol.2>
日時:2015年9月24日(木)&9月25日(金) 18:30開場/19:00開演
会場:東京 よみうり大手町ホール
チケット価格(税込):全席指定7,800円※未就学児不可
出演:久石譲(指揮) 
西江辰郎(Future Orchestraコンサートマスター)、崎谷直人(弦楽四重奏) ほか
演奏予定曲;
スティーヴ・ライヒ「エイト・ラインズ」/ジョン・アダムズ「室内交響曲」/久石譲「Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion」(世界初演)/ブライス・デスナー「Aheym」(日本初演)/久石譲「室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra」(世界初演)
※演奏曲目は変更になる場合もある。
公式Facebook:https://www.facebook.com/hisaishi.concert

<久石譲 第九スペシャル -2015->
東京公演:12月11日(金)19:00開演/東京芸術劇場 コンサートホール
神奈川公演:12月12日(土)15:00開演/ハーモニーホール座間 大ホール
出演:
指揮:久石譲
管弦楽:読売日本交響楽団/合唱:栗友会 ※東京公演は一般公募のコーラスを含む
ソリスト:林 正子(ソプラノ)、谷口睦美(メゾソプラノ)、村上敏明(テノール)、堀内康雄(バリトン)
チケット価格(税込):S席9200円/A席8200円 ※未就学児入場不可
演奏予定曲:
久石譲「新 Orbis~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」
ベートーヴェン「交響曲 第9番 ニ短調 作品125 合唱付き」
公式サイト:http://hisaishi-no9.com/

<久石譲 ジルベスターコンサート2015 in festival hall>
日時:2015年12月31日(木)17:00開演
会場:大阪・フェスティバルホール
出演:
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
合唱:大阪センチュリー合唱団、大阪音楽大学合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団 他
ソリスト:林 正子(ソプラノ)、谷口睦美(メゾソプラノ)、村上敏明(テノール)、妻屋秀和(バス)
チケット価格(税込):S8500円/A7500円/BOX10000円 ※未就学児入場不可
演奏予定曲:
久石譲「新 Orbis~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」
ベートーヴェン「交響曲 第9番 ニ短調 作品125 合唱付き」

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