それぞれの個性でも魅せる

塾長、SEAMO(撮影・杉田 真)

塾長、SEAMO(撮影・杉田 真)

 この日は、アルバム曲やソロ曲を挟みながら、多彩な描写と音楽が奏でられていった。そして、楽曲を呼び込むパフォーマンスも凝っていた。例えば、8曲目の「ドンマイ Don’t cry」。AZUはSEAMOにこう語り掛けた。「塾長は一番泣き虫。すぐ泣くんです。感動しても泣く、冷たくしても泣く。塾長がいなくなったら死んじゃう」。そんな言葉に泣きっ面のSEAMO。AZUが続ける。「どんまい」。この言葉を合図に同曲が披露される具合だった。

 2人のソロコーナーもバラエティに富んでいた。ロックサウンドを織り混ぜながら「翔べ!ガンダム」などの懐かしのアニメソングをラップに載せて高揚感を煽れば、「Continue」などのSEAMOの核に触れる楽曲も歌い届けた。また、同郷・名古屋出身のRAYSとの「HEY 中部 feat.RAYS」も披露した。

 一方のAZUも多彩な表情を見せて観客を虜にさせた。SEAMOのソロパートを終えた17曲目は、彼女のソロ曲のメドレー。明かりが落とされた会場に、緑色の星空が浮かび上がる。ドレス姿のAZUはピアノの音色にのって情緒豊かにそして力強く歌い届ける。アコギのサウンドが際立った「Tonight’s The Night Co. DEPAPEPE」は一転、清楚な姿を作り上げる。続けて送られた「Promise」は朝日が薫るように4つの暖色が会場に温かみをもたせた。ハートを突き抜けるような高音パートも力強かった。そうした歌唱力の高さを見せたかと思えば、トークでも巧みに男性客の心を転がした。

欲情の華、満開

(撮影・杉田 真)

(撮影・杉田 真)

 そして、この日の山場はライブ終盤に展開された、人間の欲望を映し出したダークサイドだった。シーモネーターならぬ、シーモベイダーが、“清楚な”AZUを揺さぶる。「最近、男に抱かれてないんじゃないか? どれが好みだ?」と、既婚・未婚の有名俳優等の名前を挙げる。誘惑に負けそうになりながらも「まだ私、音楽続けたいし…」と禁断の愛へ自制を働かせるAZU。

 心をかき乱すように歪んだギターサウンドが会場に轟く。ハードロックに載った欲情の嵐だった。そして、それを、体を使ってユーモアに体現した。AZUは結局、「不倫は文化とちゃいまっせ。ダークサイドにはいかへんよ」と断ち切る。そして、アルバム収録曲のなかで最も欲情が出ている「I(ハート)B」へと向かう。

 「お得意のバナナミルクジュースをつくります」といって観客を巻き込んでの実演。バナナの皮をむく、バナナをちぎってミキサーに入れる、真っ白い牛乳を入れる、ミキサーにかける、飲み干す――、このパフォーマンスそのものは特段変わったことではないが、AZUの語り口が相まって“禁断の遊び”と化していた。このシーンで溜まったモヤモヤを晴らすように、銃声が鳴り響く「ルパン・ザ・ファイヤー」が届けられた。そして、「DACARENA」では、AZUが「踊るよ」と言って観客を巻き込んでのSEAMOとのダンスバトル。その勢いのまま「a love story」、「心の声」と流れて本編は終了した。

(撮影・杉田 真)

(撮影・杉田 真)

 大アンコールを浴びて再登場した2人は、盟友のKGと「AKS99」を披露。3人一緒にステージで歌うのは本ツアーでは東京公演で初めて。KGは「やっと3人で歌えました」、SEAMOは「いつもいる感じだけど、やっぱりでてきたら違うよね」と讃えあった。

 アンコールの曲が届けられたあと、SEMAOとAZUはこのユニットでのツアーに手ごたえを感じている旨を話した。「2人の時は景色が違う。この活動を良い経験にしたい。ソロも。皆さんが良いと言ってくれたらこのユニットでもね」(シ)、「またアルバム作りましょう」(A)、「音源つくってね。全国もね。オリンピックまでに2枚、3枚とね」(シ)、「嬉しい! 有言実行ね」(A)とユニット継続に含みをもたせた。

 そして、AZUが続ける。「帰りたくない」。SEAMOが応える。「俺が時間を止めてやるからよ。時間を止めます!」。そのまま「時間よ止まれ」と歌い届け、ライブは終了した。約3時間半にわたって歌い届けられた甘く、色っぽい言葉の数々はしっかりと観客の胸に高揚感という形で残った。目まぐるしく展開されたステージに、時間は足早に過ぎ去った夜のひと時だった。(取材・木村陽仁)

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