氷室京介「LAST GIGS」の意味とは

一昨年の横浜スタジアムでの氷室京介

 今年開催する4大ドームツアーをもってライブ活動を休止する氷室京介(55)。そのファイナルツアーが4月23日・京セラドーム大阪から始まる。一昨年、耳の不調により満足のいくパフォーマンスが出来なくなったことを理由に、ライブ活動の休止を発表した。当初は、その年の7月19日・20日の横浜スタジアム公演でその活動を終えるはずだったが、最終日の20日公演では、肋骨骨折や雷雨による中断などに遭い、不甲斐ないものになったとして再演を誓った。氷室京介はなぜ再演へと向かったのか。そして、ファイナルツアーのタイトル『LAST GIGS』に込められた思いとは。

氷室京介という存在

 氷室京介は、伝説のロックバンドとして今も語り継がれている、80年代を代表するロックバンド「BOØWY」のボーカリストとして活躍。人気絶頂期の1987年12月24日に解散を宣言。翌年4月に東京ドームで『LAST GIGS』をおこない、バンド活動を終えた。

 氷室はその年に「ANGEL」でソロデビュー。ファーストソロアルバム『FLOWERS for ALGERNON』で第30回日本レコード大賞とアルバム大賞、シングル「ANGEL」で金賞をそれぞれ受賞した。その後も「KISS ME」や「VIRGIN BEAT」「魂を抱いてくれ」「SQUALL」「HEAT」「Claudia」など数々のヒット曲を世に送りだした。

 東日本大震災では復興支援として、2011年6月に『東日本大震災復興支援チャリティライブ KYOSUKE HIMURO GIG at TOKYO DOME “We Are Down But Never Give Up!!”』と銘を打ったチャリティコンサートを開催。50万人を超える応募があり、2日間の開催で約11万人を動員。チャリティライブとしては当時、国内最大規模を記録。東京ドーム1日の動員数5万5千人は過去最大だった。

引退報道

 そして、その氷室に一昨年、突如として引退報道が流れた。山口県周南市の周南市文化会館での公演で引退を発表したという内容だ。正確には「氷室からの卒業」ではあったが、衝撃が走った。事態を重くみたレコード会社は急いでホームページを更新。「来年予定されているファイナルコンサートをもって“氷室京介”としてのコンサート活動を休止する」と改めた。

 だが、情報は限られていたため様々な憶測が流れた。そうして迎えたのが横浜スタジアムでの最終2DAYS公演だった。氷室から何が発せられるのか、ファンのなかで交差するライブへの期待と不安。

 その初日で伝えられたのは「7年前から耳の調子が悪い」「聞き耳は左なのでそれでやっていたけど左側の耳がどこかのトーンだけが聞こえなくて」「これ以上やっていくのは無理」というもので、この公演をもってライブ活動を休止するというものだった。

 しかし、結果的には今回の再演へとつながった。なぜだろうか。その理由は、あの時のスタジアムの光景にあった。

再演に繋がったスタジアムでのファンの姿

 あの日は、近隣で花火大会が行われるなど、幻想的な夜を映していた。しかし、次第に雲行きが怪しくなる。稲光が閃光を放つようにあたりを照らし、間もなくして怒号にも似た雷鳴が地面を揺らした。ぱらつき始めた雨は豪雨へと変わっていった。このためアンコール2曲目「The Sun Also Rises」を披露したところで中断。観客は屋内へと避難した。

 中断時間はおよそ50分。残るのはアンコールの数曲のみだった。中止も考えられた。こうした悪環境を考えれば、帰宅する人も出てくる。しかし、再開のアナウンスが告げられると、観客席の空席は見られず、待ち続けた多くのファンの姿がそこにはあった。

 氷室は当時、肋骨3本を折っていた(初日は2本がひび、1本が骨折)。取材で痛み止めを飲んでライブに挑んでいたことが明らかになっている。

 中断中はテントで待機していた。この頃には痛み止めの効果も切れ、「最後の最後で天からもタオルを投げられた」とライブ活動の休止勧告を受けたかのような心境だったという。そのようななかで、観客には「早く帰らせた方がいい。お客さんを試しているようでかわいそうだ」と気遣っていたが、一方では「1曲だけでもファンのために歌たった方が良いか」と最後まで葛藤した。

 このまま氷室京介としてのライブ活動を終わらせてしまうのか…。そんな折に、降雨が少し収まってきた。満身創痍でステージに向かった氷室の眼前に広がる多くのファン。結局、この日は「ANGEL」だけにとどまったが、その後に、「今日は本当に申し訳ない、プロとして。怪我をして、今日はこれ以上出来ないけれど、このリベンジをどこかで必ず」と述べて再演を誓った。

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