福島県出身の4人組音楽グループ、GReeeeNのリーダーHIDEが、TBS系放送番組『NEWS23』の取材に応じ、3日放送の同番組で、東日本大震災後に遺体身元確認の検視に携わった当時の心境を語った。メディアへの露出は少ない彼ら。今回は声のみの出演となったが、当時、検死をおこなった福島に訪問した。

 メンバー全員が歯科医師の免許を持ち、音楽活動が私生活に影響しないように顔を出さずに活動しているGReeeeN。HIDEは、東日本大震災が発生した2011年3月の翌月、福島で歯科医師として検死作業に従事していた。原発事故の影響で検死作業が滞っている、遺体収容所の歯科医師が足りないという張り紙を見て、自分が行くことを決意したという。

 番組では、先月に福島県南相馬市の帰宅困難地域を訪れたHIDEの様子を放送。HIDE自身がカメラを持ち、映像を撮っていたため姿は見せず、音声のみ。このなかでHIDEは放射能廃棄物に埋め尽くされた光景を車両から眺め「5年が経ってみんなの意識が変わっていく。薄らいでるのかな? 一日も早く元に戻ってほしいと思うが、現実はこれだから」と心境を吐露した。

 また、HIDEは遺体確認作業を行っていた施設にも訪問した。検死作業の経験は音楽活動にも影響を与えたことも明かし、「すごい衝撃を受けた。しばらく音楽のメロディが思い浮かばなかった。音楽に意味を見いだせなかった」と語った。そのGReeeeNは震災後の5月6日に「Green Boys」を復興企画として無料で配信している。

 「人生、震災だけじゃなくいろんなことが起こる。悩んだこととか楽しいことがあって、それが歌になって、聞いてくれた人が何かを思ってくれればいいかな、と。僕らはきっかけでしかない。それで充分」と、どん底から希望を見出すきっかけとなった曲への思いと今の気持ちを語った。

 同番組によると、歯形による遺体確認は岩手で2.8パーセント、宮城で9.8パーセント、福島で12.4パーセントと福島の割合が高くなっている。これは、原発事故のために遺体確認作業が遅れて歯形による遺体確認に頼らざるを得なかったという。

 キャスターの岸井成格さんは番組内で「放射能の恐怖と闘いながら、遺体確認作業を行った方々はたくさんいるが、その活躍はあまり知られていない。今回は“そういう現状を変えたい”と言って、HIDEさんは取材を受けてくれたんですね」と語り、今回のHIDEの取材の真意を汲み取っていた。

この記事の写真

ありません

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)