INTERVIEW

今井翼×塚本高史

「hideさんをすごく近くに感じた」、『TELL ME ~hideと見た景色~』対談


記者:村上順一

写真:木村武雄

掲載:22年07月09日

読了時間:約8分

 今井翼と塚本高史が、映画『TELL ME ~hideと見た景色~』(7月8日公開)に出演。hideの実弟・松本裕士氏による著書『兄弟 追憶のhide』を原作に、hideが遺した音楽を世に届けるため奮闘する弟たちの軌跡を描いた。hideの弟で主人公の松本裕士役を今井翼、hide役をJUON(FUZZY CONTROL)、hideの共同プロデューサー・I.N.A.役を塚本高史、レコード会社重役・鹿島役を津田健次郎が演じる。今井は本作が初の映画主演となる。今井、そして塚本はどのような思いで臨んだのか。【取材=村上順一/撮影=木村武雄】

お互い芝居の中で会話していた

――実在の人物を演じる難しさがあったと思いますが、どのような意識で撮影に臨みましたか。

今井翼 原作と台本を読ませていただいて、正直現場に行ってみないとどういう気持ちになるのかわからないことの方が多かったんです。というのも役柄として決め打ちでいくとちょっと違和感があるかもしれないと思いました。それは、兄弟でありながら、普通の兄弟ではあり得ない関係になっていた2人で、アーティストとしてのhideさん、兄としてのhideさんを突然失って、そこでようやく気づく思いというのもあったと思います。hideちゃんが亡くなった後に重点を置いたストーリーで進んでいく中でI.N.A.さんという存在があって、裕士さんも人として成長していくという過程も丁寧に描きたいという思いで演じていました。

塚本高史 僕はhideちゃんの一ファンなので、「I.N.A.」という役を全うしたいと思いました。ファンの皆さんから見ても嘘のないように描きたいということを一番心掛けながらやってました。コロナ禍になって1年ほど撮影が延期しましたが、またhideさんの映画に携われると思っていなかったので、この作品に携わるのが僕じゃなければ僕自身すごく嫉妬していただろうし、本当に参加できて嬉しかったです。

――ファン目線も入っていて?

塚本高史 それは8割ぐらいあったかもしれないですね。この「TELL ME ~hideと見た景色~」に参加するにあたって、やるからにはファンの皆さんが納得するようなものを作りたかったので、そこが僕の中で一番大きかったと思います。

今井翼 僕は活動をお休みしていた時期があって、休養後から色々とお仕事をさせていただく中で、今回このお話をいただけた時はすごく嬉しかったです。僕自身初めてロックバンドと出会ったのが小学生の時のX JAPANで、もちろんhideさんのことも好きなので光栄でした。その反面、裕士さんを演じるということに関しては、すごく身の引き締まる思いでした。

――hideさんの言葉で印象的なものは?

塚本高史 場面場面で出てくるhideちゃんの格言みたいなものはすごく残っていて、特に映画の中でhideちゃんが言っていた「死ぬ気でやれよ、死なねぇから」というセリフです。すごく遊び心のある人だったので、それは本気で言ったのかわからないんですけど、そういった言葉がすごく突き刺さったり響いたりするのが、hideちゃんだと感じました。

今井翼 「hide with Spread Beaverはバックバンドじゃない、俺たちは一緒の仲間なんだ」というセリフや、映画では描かれていないんですけど、hideさんは難病を抱えた少女の所に慰問に行かれたりもしていて、すごく奇抜なようで愛に溢れている方なんだと改めて思いました。

――思い入れのある楽曲は?

塚本高史 「DICE」が好きです。この曲で僕はhideちゃんを知ったので、今でもよく聴きます。

今井翼 僕がhideさんを知ったのはX JAPANなんですけど、楽曲だとX時代のhideさんの曲「Joker」が好きです。

――JUONさんがhideさんを演じていましたが、いかがでしたか。

塚本高史 格好良かったです。もともとJUON君の中に魅せ方はあったと思うけど、すごく重圧があったと思います。でも、自信を持って演じているのが伝わってきました。

今井翼 昔からhideさんを愛している高史君が、hideさんならこうする、とかアドバイスしていたので、それはJUON君にとっても大きかったんじゃないかなと思います。

――塚本さんはファンということもあり、hideさん役をやりたかったという思いも?

塚本高史 おそらくhideちゃんの役だったら、僕には無理と(出演を)断っていたかもしれないです。僕はI.N.A.さんとして携わることで、この作品がよりリアリティを持ったものにできるなら、という思いでお引き受けさせていただきました。

――今回共演されて印象的だったことは?

塚本高史 各々の与えられた役で考えてきたもの、思っているものを現場であえて言葉を交わさなくても、お芝居の中でお互いを尊重しながら、リスペクトし合いながら進めていけたという印象があります。

今井翼 自分も全く同じことではなくとも、裕士さんと同じような経験を自分の中から摘み出して丁寧に演じたいという思いの中で、高史君がどんな球を投げても、I.N.A.さんとして僕に言葉をかけてくれているような瞬間があったからこそ、今回成立したと思っています。その感覚が印象的でした。

塚本高史 当初の予定では、撮影初日がラストシーンの撮影からだったんです。晴れ晴れとしたシーンなんですけど、その間にある2人の葛藤などはまだ撮影していなかったので、どういう感じでラストシーンを撮るのかなと思っていました。それで現場で初めて翼君と会った時に「高史君は全然緊張しないでしょう。僕はすごい緊張してるんだ」という言葉を聞いて、その言葉が裕士さんっぽいなとも思いましたし、ずっとその緊張感がオールアップするまで翼君の中にあったように僕は感じました。「ここはこうしよう、ああしよう」と話さなかったのが良かったと思っています。お互い芝居の中で会話していたんじゃないかなと思います。

今井翼×塚本高史

hideさんをすごく近くに感じた

――ライブシーンはこの作品の肝だと思うのですが、どのような心境で臨まれたのでしょうか。

今井翼 は、プロセスとしてバンドメンバーがどれほどの期間をかけてやっていた過程というのは全く触れていないんですけど、撮影中の演奏する各メンバーの姿、完成したものを見た時は、一人ひとりがすごくカッコ良くて現場で見た印象と映像での印象も温度差は感じなかったですから。それはみんなの結束力の凄みだと僕は思いました。

――塚本さんはステージに上がってみていかがでしたか。

塚本高史 一回、撮影が延期になったのは逆にいい期間だったとは思うんです。D.I.E.さん(Key)役を演じたくぼゆうき君はお笑い芸人で、楽器はピアノをやっていたので、その期間にキーボードの動きを研究していたみたいです。僕がリハーサルに参加させていただいたのは2回ぐらいしかなかったんですけど、今までずっと見てきた好きだったhide with Spread Beaverの面々がそこにいました。だからライブシーンに挑む前の顔合わせ時は何の心配もなかったし、逆に僕がこうしよう、ああしようと言う前から、この時I.N.A.ちゃんはこういう風に動いてたよね、とか周りが言ってくれて。hide with Spread Beaverを演じた面々とはディスカッションを現場でさせてもらいながらライブシーンは作れました。当時の映像も残っているので、オリジナルと照らし合わせながら嘘のないようにみんなとやれたなと思います。

――撮影中に印象に残っている出来事は?

今井翼 実は余裕がなかったので芝居のことは覚えてますけど、どこで何があったのかは記憶になくて。

塚本高史 この取材で久しぶりに翼君と再会したんですけど、「この道で撮影したよね」と話したら、「いやそれが覚えてないんだよ」と言っていて。逆にそのぐらい裕士に入り込んでいて、その中で翼君がいたからこそ、I.N.A.と裕士の関係で撮影が進んでいったなと思います。

今井翼×塚本高史

原動力

――そんなお二人の原動力は?

塚本高史 原動力は辛さです。大変な時があるからこそ楽しい時がより楽しく思えますし、達成感を感じられるのかなと思っています。

今井翼 プロセスが原動力になっていると思います。エンターテインメントというのはサービス精神がなければ自己満足で終わってしまう。僕はお芝居にしてもステージにしても、プロセスを大事にしていて、例えば大切な人にプレゼントを送るときに、何がいいかな? これだったら喜んでくれるかな? とか考えている時間も楽しいんですよ。

――いま注目されているエンタメはありますか。

今井翼 「これ!」というものではなくヒューマンですよね。人が描くからこその喜びや感動や面白さがあると思っているので、僕は人間が肉体を通して描けることを諦めたくないという思いがあります。

――hideさんファンの方に、どのような心構えで観に来ていただくのが良いと思いますか。

塚本高史 心構えというのは難しいですけど、この映画を観たい反面、悲しい出来事を思い出したくないから観るのをためらっている人もいると思います。でもエンタメの世界にいる僕らからしたら、まずは観てもらわないと何も始まらないので、もし映画を観ようか迷っているのなら、観てから賛否両論でいいんじゃないかと思います。ただ、僕は観た後に、ファンの方への一つの区切りになるような作品だと感じました。僕はどこか納得するような、そんな気持ちを抱いたんですよね。とりあえず一度観て欲しいです。

今井翼 賛否両論はあるかもしれないけれど、hideさんファンに観てもらいたいという思いは出演者もスタッフの方々も強いです。誠心誠意hideさんに対して敬意を払いながら撮影してきましたし、この作品の中で「hideの魂がここにある」という、津田健次郎さん演じるレコード会社重役・鹿島さんの言葉にもあるように、僕はhideさんをすごく近くに感じることができました。

 当時hideさんが残した作品や想いを遺された人たちがどんなことがあっても絶対カタチにするんだ、という思いで突き進んだように、今コロナ禍で辛い思いをされている方もたくさんいらっしゃると思うんですけど、僕たち俳優の仕事は見てくださる方の気持ちがちょっとでもいいからプラスになれたら嬉しいという思いでやっています。だからこの作品で前を向いていこう、という気持ちになっていただけたら嬉しいです。ライブシーンもすごく充実しているので、hideさんの魂、想いを感じながら音楽もぜひ楽しんでいただきたいです。

今井翼×塚本高史

(おわり)

〇今井翼
スタイリスト:渡邊奈央(Creative GUILD)
ヘアメイク:中谷圭子(AVGVST)

〇塚本高史
スタイリスト:上井大輔
ヘアメイク:YASU

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木村武雄

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