秦 基博、タイアップ曲への心構え 初の連ドラ主題歌「スミレ」
INTERVIEW

秦 基博、タイアップ曲への心構え 初の連ドラ主題歌「スミレ」


記者:木村武雄

撮影:

掲載:16年03月01日

読了時間:約13分

メロディと密接な関係にある歌詞

20枚目のシングル「スミレ」初回盤

20枚目のシングル「スミレ」初回盤

――「スミレ」は劇中で楽曲がかかるタイミングなども考慮して制作された?

 そうですね。エンディングの方でかかるというのは聞いていましたし、エンドロールというよりか、劇中の終盤でその曲が乗っていくという風に聞いていたので、その回の終盤の高揚感と、連続ドラマなので次週に向けての期待感なんかもきっとそこにはあるだろうな、と。そういうのをイメージしてイントロを作ったり、サウンドを作ったりしました。

――歌詞はどのようにして書かれたのでしょうか。ちなみにどこで作られましたか?

 一カ所で完成させるという訳ではなくて、喫茶店で書くこともありましたし。パソコンを使ったり、ノートに手書きしたり。メロディとサウンドが先に出来て、歌詞は後から作りました。楽曲全体のテイストとして、そのドラマを彩れればなと思ったので、歌詞のどの部分を使ってもらいたいか、というようなことまでは考えませんでしたね。

――思いついたフレーズや言葉を書き溜めていることは?

 ストックはしていませんね。曲が先のことが多いので、メロディが呼ぶ言葉でないと意味がなくて、あまり言葉をメモしていてもそれが使える事は少ないんです。よっぽど気になった言葉なんかは書き留めておくんですけど。それが曲になる事は、僕の場合はけっこう少ないですね。メロディを作った時点で、そこに何を乗せるというか、どんな歌詞にしたいかという自分のイメージはもうあるんです。それを探していくような感じに近いですかね。

――作家には自身の経験を物語に投影していく人もいれば、イマジネーションから組み立てられる人がいます。秦さんは、ご自身の経験というよりも色んな想像が出来る方なのかなと思いましたが。

 そう受け取っていただいても構わないんですが(笑)、自分ではどちらとも言えないというのが正直な所ですかね。「曲の主人公=秦 基博」という事でもないし、「全く他人」という事でもないし、僕の場合それがもう、入り交じっています。

――レコーディング風景はどういった感じでしたか。

 たくさんのセッションをご一緒してきたミュージシャンの方々なので、和気あいあいと、アイディアを出し合いながら録っていきました。まず「こういう音にしたい」というアレンジのデモを作るんですが、それを聴いてもらって、皆で音を出して細かい調整をしていって、という感じです。

メジャーデビュー10年目で変わったこと

秦 基博

秦 基博

――メジャーデビューをして今年で10年になりますがご自身の変化などはありますか。

 10年という月日の中で得てきた経験値もあるし、単純に年齢を重ねる中で考え方とか、物事に対する価値観も変化していきますよね。シンガーソングライターとして詞や曲を書いて歌うという事は、やはりそこに自己を投影していくでもあるので、おのずと作品のテイストなどは変化していると思います。あとは自分のやりたい事、音楽的欲求というのもどんどん変わっていきますし。やっぱりデビューした頃とは違うと思いますね。

――秦さんはこれまでに多くのミュージシャンと共演されてきました。この10年で様々なミュージシャンと関わったことで変化したことはありますか。

 一つの出会いに限らずと言いますか、一緒に共演させてもらったりしたアーティストや、今回のようにミュージシャンの方々とか、エンジニアの方やスタッフの方など、アーティストに限らず、出会いの中で色んな事を自分自身で考えたり、学んだり、吸収したりして来た事はあると思います。その全てが自分に変化をもたらしていると思います。あとは、音楽を続けていく中で、先輩方から、本当に音楽を真剣かつ「遊んで」いるというか、楽しみながら音楽を創っている事を知れたりすると、もっともっと音楽というものを楽しんで届けられるといいなと思ったりする事もあります。

――バンドは基本的に固定のメンバーでやっていきますが、秦さんのようにソロの場合は、様々なミュージシャンと作品を創ったりツアーを回れたりできると思うんです。その違いをどのように感じますか。

 それはシンガーソングライターとして一人でやっている利点ですよね。固定されたメンバーで10年20年続けていくからこそ見える景色というのも絶対あると思うんですけど、僕の場合はそのサウンドによってとか、その時やりたい音楽によって、色んなミュージシャンの人に来て頂けるという「幸せ」があると思います。色んなミュージシャンと触れあえられるという事は、良いなと思っているポイントでもあります。

――ミュージシャンの中で影響を受けた方は?

 影響と言うか、理想としてはジェームス・テイラーみたいに弾けたらいいなと思います。すごく自然体で力が抜けているので音がとても良くて。ギターの1弦1弦それぞれの音色、響き方が凄く良い音をしていて。そういう「達人」的な域に行けたらいいなと思いますけど、まあ、まだまだ先は長いですね。

――最後に改めて「スミレ」への想いをお願いします。

 この曲はアルバム「青の光景」を作り終えてすぐに取りかかった、新たなモードの作品です。シングルとしても久々に恋愛というのをモチーフに作った曲でもあるので、ドキドキしたり、ときめいたり、戸惑ったり、という恋に落ちた瞬間の気持ちを味わってもらえたらと思います。12月にアルバムを出して3月からツアーが始まる前に、こういう短いタームでシングルをリリースするのは僕にとっても初めての事なんですけど、アルバムと合わせて「スミレ」もライブで楽しんでほしいですね。また「スミレ」のカップリングにもアルバム「青の光景」の楽曲のライブバージョンが入っていたりしますので、一緒に楽しんで頂けたらなと思います。

(取材/撮影・木村陽仁)

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