秦 基博、タイアップ曲への心構え 初の連ドラ主題歌「スミレ」
INTERVIEW

秦 基博、タイアップ曲への心構え 初の連ドラ主題歌「スミレ」


記者:木村武雄

撮影:

掲載:16年03月01日

読了時間:約13分

ドラマから離れても歌い続けるからこそ自分の考えも

秦 基博

秦 基博

――2月24日にニューシングル「スミレ」がリリースされます。表題曲について伺う前に、特別収録されている「季節が笑う」と「ダイアローグ・モノローグ」「トレモロ降る夜」「Q & A」のライブ音源について。こちらは昨年開催の、あおもり三内丸山遺跡での世界遺産劇場ライブで披露されたものですね。この音源がとても素晴らしくて。

 ありがとうございます。

――このライブには、ドラムにあきらゆうこさん、ベースに鈴木正人さん、キーボードに皆川真人さん、そしてストリングスカルテットが参加されています。音源を聴いてから参加メンバーの情報を見て驚いたのは、ギターは秦さんお一人だということです。あのギターのダイナミックさは、ギターを弾き語る秦さんとは別に、ギタリストがいるバンド編成で、その方が伴奏されていると思ったので。ギターに集中しなければ出せないような音に感じまして、秦さんのギター演奏技術の高さを改め感じたと言いますか。

 そうですかね。ギターをもって歌うスタイルは、自分が音楽を始めた頃からのスタイルなので、一つの形にはなっていると思います。ギターがあるからそういうリズムになったり、歌のリズムも変わりますし、ギターのリズムの中で歌がありますし。当然、歌に合わせて強弱は付けますし、その時々によっても変えますし。自分が歌う上で、一番近しい楽器は何かと言われたら、やはりアコースティックギターになるとは思います。

――一心同体であるからこそ奏でられる音だったということですね。改めて凄さを感じました。さて、秦さんは数々のタイアップ曲を手掛けられてきました。記憶に新しいのは、映画『STAND BY MEドラえもん』の主題歌「ひまわりの約束」ですが、曲を書き下ろす際には、対象作品を特に意識したりしますか?

 それは、どっちに寄りすぎても良くないと言うか、一番良い着地点があると思いながら作っています。作品にとって、今回(編注=スミレ)で言ったらタイアップを頂いたドラマにとっても彩る上で必要なテイストだったりとか、そういったものも、もちろん出したいですけど、あくまで自分の作品として世に出していくものなので、表現としてそこに自分の想いがないと。例えば、ドラマを離れても僕は「スミレ」という曲を歌い続けていくわけですから。ドラマや映画が伝えようとしている事をそのまま写し取っても意味が無い。それを自分の言葉に置き換え歌う事で、少し、良い意味でズレが生じてきて、それが広がりを持たせると思うんです。

――ドラマや映画の場合は原作や映像などにじっくり目を通すほうですか?

 作品の簡単な概要のようなものとスタッフの方々からの意向を受け取って。それから今発売されているマンガの原作全巻を購入して読みました。

――楽曲の構想はどのような場所で考えられるのでしょうか。

 自分の家に作業部屋があるんですけど、そこでギターを弾きながらとか。あとはプロトゥールス(PCなどで用いる音楽制作ソフト)を使って作っていったりとか。歌詞も自分の部屋だったりとか、スタジオだったり、事務所のミーティングルーム、喫茶店など、色んな場所で書くので様々な状況があります。

――極端な話ですがタイアップの楽曲とノンタイアップの楽曲の違いはありますか。

 両方とも自分の思いで書いているというのは変わらないです。スタート地点が違うというだけで、アウトプットとしてはそんなに変わらないと思います。タイアップであれば作品や原作があるので、今回で言ったらドラマを作っている皆さんにも、観ている皆さんにも喜んでもらえるものにしたいというのはあります。

――さて、今回の作品「スミレ」は、テレビ朝日系金曜ナイトドラマ『スミカスミレ 45歳若返った女』の主題歌です。どのような意識のもとで手掛けられたのでしょうか?

 最初のデモに対してドラマサイドからはアレンジに関して「ミステリアスさを感じる要素が欲しい」というオーダーが返ってきたんです。ラブ・ミステリーを主軸にストーリーが展開していくという事だったので、それをサウンドの中でどう表現しようかな、というのは考えました。アップテンポにしたのも具体的なサウンド感ももともと自分の中にイメージがあったので、その上でミステリアスさを加えるべく、ストリングスの和音の中でそういう部分がより出るようアレンジしていきましたね。

“秦 基博”を色付けする多彩なミュージシャン

秦 基博

秦 基博

――今作で参加されているミュージシャンの方々はとても個性のある方々ですが、各々の印象と特徴などをお聞きしたいのですが。

 まずドラムのあらきゆうこさんは、ドラムの音色に凄く色あいがありますね。ドラムは打楽器なのに、それが歌っているように僕自身は感じます。瑞々しくて躍動感もあるのできっと合うだろうなと思いました。

 ベースの鈴木正人さんは、何でも出来る方なんですけど、「うねる」と言うか、ベースラインが凄く洋楽的で、今回の「ドライブする感じ」と言うか、どんどん疾走感が増す感じに合うと思いました。

 皆川真人さんには演奏だけでなくストリングスのアレンジをお願いしているんですけど、ピアノという楽器の特性や、そのほかの上モノの中でキラキラ輝く音色だったりで、楽曲が持っている魅力を引き出す重要な役割を担ってもらっています。

 ギターの田中義人さんはアイディアが豊富でギタープレイも凄くカッコいいですし、自分が今回「スミレ」という楽曲で表現しようとしている世界がより増幅されるのではないかなというイメージが湧いたのでお願いしました。

――「スミレ」は秦さんにとっての「新境地」という解釈もありますが。

 新しいサウンド感というか、今までにないテイストの楽曲が作れたんじゃないかとは思いますね。

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