ダイスケ、5周年記念ライブで歌唱ハプニング 急きょ生歌披露
熱演するダイスケ
シンガーソングライターのダイスケ(27)が7日、東京・豊洲PITで、デビュー5周年記念公演『No You No Live 2016「Go Go 5!!」』を開催、デビュー曲「ボク☆ロケット」など全19曲を熱唱した。アンコールでは、歌唱トラブルで歌い直すハプニングもあったが「しまらないので…」として、終演直後に1人ステージに残り、マイクを通さず生声でギター弾き語り。ファンにとっては貴重なひと時となった。また、この日は4枚目アルバム『君にかける魔法』の発売と全国ツアーの開催決定も発表された。
ダイスケは2011年2月にエピックレコード・ジャパンより、シングル「ボク☆ロケット」でメジャーデビュー。その年の5月から2013年3月まで日本テレビ系『ZIP!』内コーナー「ZIPPEIスマイルキャラバン」にレギュラー出演し、全国各地を巡った。歌手活動としてはこれまでに、11枚のシングルと、3枚のアルバムをリリース。甘いルックスと、力強く包容力のある歌声で人気を集めている。
この日の会場は、女性ファンを中心に多くの観客で埋め尽くされていた。場内の灯りがゆっくりと落とされると、正面のスクリーンにはライブのタイトル。そして、ダイスケの幼少期から最近までの写真が次々と披露されていった。彼の成長過程を見守るように、1枚をめくるたびに黄色い歓声が上がった。全て写真がめくり終わると、目の前にはシルクハットを取って頭を下げるダイスケのシルエット。バースディソングのメロディに合わせて幕が上がっていくと、ペイントを散りばめたタキシード姿のダイスケが。割れんばかりの歓声を受けて「HAPPY」を披露した。
挨拶代わりに明るくポップなナンバーが届けられると、高揚した気持ちに突き刺すように2曲目はメッセージ性の強い「いつだって。」。ダイスケ自身はアコギを持ち、甘くとも力強く歌声で歌い届けた。勢いをそのままに「夏めく坂道」。ひまわりの丘を駆け抜けるように、まばゆい黄色のライトの合間を疾走感のあるサウンドが伝っていく。立春を迎えつつも厳しい寒さが残るきょうの夜の気候を忘れさせる爽やかなナンバーが続いた。
この日の編成は、ギター、ベース、ドラムにキーボード。会場は一昨年オープンしたばかりの豊洲PIT。比較的、同規模の会場よりも音響設備が充実していると言われている会場だ。優れた音響環境もあってか、ドラムやベースなどの一音一音がくっきりとしていた。特に、ダイスケが奏でるアコギの音色はきめ細かに表現されていた。
3曲を終えてMC。「まさかこんなに来てくれるとは思わなかった。カーテンが落ちた時に誰もいない夢を5回見た。今日、皆がいてくれて良かった」と開演まで不安を抱えていたことを告白。そして、デビューから5年を振り返り「僕についてきてくれる皆と最高の1日したいと思います」と語った。
話終えるとタイミングでリズミカルなドラマのプレイが始まる。それをバックに、ブルースの掛け声のように、ファンとコールアンドレスポンスを繰り返し、楽しむ。盛り上がってきたところで「たった1日しかない今日を最高の日にしよう」とそのまま「晴れ空のマーチ」へと入った。
リズミカルなサウンドと甘い歌声は、あたかもファンの手を添えてともにステップを踏んでいるようだった。そうした陽気な気分に合わせて5曲目「せかいにひとつのフタリ」などを披露していく。それを受け継ぐように展開されたのはメジャーファーストアルバム『ボクにできること』メドレー。同作品収録の楽曲をメドレーで届けた。ファンも思い入れが強いようでファン同士顔を見合せ喜んでいる姿も見られた。
バックバンドがジャジーなサウンドを奏でている間に、ダイスケが衣装チェンジ。先ほどのタキシード姿から、シャツに黒のベストとパンツのカジュアルな井出立ち。アコギを構えるとファンクラブでアンケートを取ってリクエストが高く、大学の頃に書いたというライブソング「her」を披露した。この曲は好きだった女性のあだ名と彼女の事を思ってタイトルに付けた曲。ダウンピッキングの音色は力強く。一方でアルペジオは鮮やか。淡い青春期に絡み付くようだった。
トークを挟んで、一番付き合いが長く、クラシックギターと思われる楽器を構えたギタリストのヒロを呼び込んで「愛は散って ライライラライラ」を奏でた。そのギターサウンドからは熱い血が通うようフラメンコのように情熱的で、脈打つ血潮が感じられた。速弾きやドラマティックなコード演奏は圧巻だった。
そして、後半戦はロックナンバーの「Oh Yeah」で幕開け。これまでの楽曲とは一線を画すど真ん中のロックサウンド。激しさを伴った構成にダイスケの額も汗で濡れる。ドラムプレイを残したままメンバー紹介。それぞれがソロで演奏すると、その乗りのまま「空想ワンダーランド」に突入。この曲から更に深化する。
ジャジーでソウルフルなサウンドのなかで、ギターのデイストーションがかかった荒々しさが割り込んだ「Monster」は、リズミカルなサウンドを下地に様々なロックサウンドか入りんだ。その上に君臨するダイスケの歌声は甘く力強い。
一呼吸置いてダイスケは高揚感のもとで「もうね、凄く楽しいです」と笑顔。「皆さんのおかげです。ちらちら見える楽しそうな顔が嬉しくて」と語った。そのムードのなかで、今度はセカンドアルバム『星のドロップス』メドレー。ギターを弾きながら「疲れたら座っていいからね」という些細な言葉も優しさが滲み出ていた。ここでギターを外してマイク1本で歌う。2曲目以降、しばらくギターを抱えながら歌っていた彼はステージを伸び伸びと使い、ファンに歌い届けた。
「ここからしっとりした歌を歌います」と語って披露した「五畳半とラヴソング」では「デビュー前は五畳半の小さな部屋が僕の活動スペースでした」と語り、当時を回顧するように力強く歌った。さらに、『スッキリ!』の「スマイルキャラバン」でともに全国を歩いたサモエド犬のZIPPEI兄弟との不遇の別れを振り返りながら、「公にしていないけど、ZIPPEIに書いた曲です」と述べて「Moshimo」を歌い捧げた。感情がこもった力強い歌唱に息を呑んだ。そして、あちらこちらですすり泣くが小さな声が聞こえた。
感情に突き刺さる歌声は今度はポップに変わる。最後はデビュー曲「ボク☆ロケット」。電子サウンドを織り交ぜた明るいナンバーで観客はタオルをめいいっぱいに回す。そのタオルを、ミラーボールに反射する青と黄のライトが照らす。ドラムも左手のスティックにタオルを巻き付け、キーボードも左手でタオルをまわす。飛び跳ねるベース。そして最後は「僕が操縦する船に乗ってついてきてください」と高らかにお礼の言葉を添えて本編を終了した。
アンコールは「ドレミ」からスタート。リズミカルなサウンドで再び陽気にさせると「あっちゅうまだったな。みんなもそれぞれの五年間を過ごしてきたと思う。嬉しいこともあれば悔しいことも。でもこうして一緒にいられることが良い。この先も何が起こるかは分からないけどこれからも宜しくね」と語った。グッズコーナーを挟んで再び、想いを語る。
「あまり心が強い方ではない。将来の不安もあるし。でもこうしてライブをやるたびに自身が付く。お客さんやファンの間柄ではなく、皆家族。本当に好きなの。これからも宜しくね。おじさんになっても、おじいちゃんになっても音楽は続けていくから。きょうは僕らの記念日になった」と語って意気揚々に「birthday」を歌い始めたものの、ここでハプニング。最初から歌い直した。
最後に「5年経ってもこんなことをしてしまうボクだけど宜しくお願いします」と笑顔で語るとメンバーと頭を下げてはけようとした瞬間、ダイスケはさきほどのハプニングを反省して「しまらなかったので、生声で唄います。皆寄ってもらっていいですか」と生歌で弾き語りを披露。シーンと静まり返る場内でただダイスケの歌声とギターの音色、時折挟むダイスケが床を踏む音だけが轟いた。その一音をしっかり受け止めようとファンは微動だにせずしっかりと聴き込んでいた。
最後にダイスケは満面の笑みを浮かべてステージを去った。だれもいなくなったステージは幕が下ろされた。その幕には、4枚目アルバム『君にかける魔法』が3月2日に発売されることと、全国ツアーの開催決定などが記されていた。その発表毎に再び黄色い歓声が轟いた。(取材・木村陽仁)