NakamuraEmi、オーガスタ期待の新星 裏打ちされた歌の説得力
INTERVIEW

NakamuraEmi、オーガスタ期待の新星 裏打ちされた歌の説得力


記者:村上順一

撮影:

掲載:16年01月16日

読了時間:約14分

歌詞は自身への応援歌

NakamuraEmi

NakamuraEmi

――メロディのはめ方が独特だなと思いました。これは計算して?

 歌を楽譜に起こせなくてそうなっているという事自体が良く分かっていないんです。なので感覚で歌っていますね。Popsでずっと歌ってきたものと、HipHopで聴いてカッコいいなと思っているものが勝手に混じり合って、今のスタイルが出来上がっていると思うんです。考えるとダメなタイプですね。

――楽曲はどういう時に出来ることが多いですか

 考えていることをとにかくノートに起こして、それが書き溜まった時にバーっと曲にするんです。いつも何かしら出来事があって自分が悩んだこととか、何でこう出来なかったんだろう、という根暗な作業が多いです(笑)

――ひとり反省会みたいな?

 そうですね(笑)。普通だったら女子会みたいな感じで誰かに喋れれば良いんですけど、家に帰ってひとりで考えちゃうタイプなんですよね。でも素敵な仲間はたくさんいて、私はこうだけど、こういう人みたいになれたらいいなとか、プラスの方向に考えさせてくれる人たちがいたので、悩んだことを書いた時に結局は周りの人たちのおかげで最終的にはプラスの曲が出来上がって、それを歌って自分もプラスに持っていけるみたいな感じですね。

――出来た曲は自分への応援歌でもある?

 完全にそうですね。誰かの為に作った曲はないと言っても過言ではないくらい。最初の弾き語りをやっていた時は「感動させたい」と思っていたので、誰かを意識して書いていたとは思うんです。途中からいろんな出来事があって音楽への感覚が変わった時に、人の為じゃなくて自分の為に歌おうと。だから自分への応援歌なんですよね。

――音楽への感覚が変わったのはHipHopやレゲエを聴いてから?

 それよりもちょっと前ですね。その頃、HipHopとレゲエのミュージシャンが私の回りにいました。その人たちから言われたのは「歌はうまいし、綺麗に歌えているけど、なんか気持ち悪いんだよね。お前の音楽は」。だけどそれがどういうことなのか当時はわからなくて、ずっとなんだろうと考えていたんですよ。「女子達」という曲があるんですけど、女の子は仲間外れを経験すると、仲間外れにされるのが嫌だから人に合わせるようになってしまうことがある。私もそうで、その性格が大人になってからも残っていて。人に合わせてハイハイと言って何となく済ませていたことばっかりだった。それが曲にも表れているし、なんか仕事でも上手くいかなかったりというのがいっぱい重なって、これはもう音楽どうこうではなくて、まずは自分を変えたいというのが出て来て。仕事とか一人暮らしを始めたりとか、いろんなことをやりだしたことで音楽も変わっていったというのがあると思います。

――人と喋るのが得意ではなかった?

 そうですね。喋れるは喋れるんですけど、静かに聴いている方が楽です。

NakamuraEmi

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――口で言葉にするよりも字で書いた方がスラスラと思いは表せる?

 文章も下手だし、スラスラは書けないんですけど、時間をかけてまとめないと伝わらないことが凄く多くて。スタッフと打ち合わせする時に、ポンポンと聞かれて「こうです」と即答できれば良いんですけど、私は家に持って帰って考えて、「私はやっぱりこうだな」と考えがまとまるまでに時間がかかっちゃうタイプなんです。なので、うまく喋って伝えられない時はまずメールで文章に起こして、皆に提示して初めて分かってもらったりすることも多くて。思ったことを、聴いたことを言葉に出せるのは本当に素晴らしいことだと思います。それが出来たらもっと可能性が広がるだろうなと思うことはいっぱいありますね。

――自身の考えをまとめてから字にされるということはある種の確信にも近いと思います。迷いがないから曲からも力強さが伝わってきます

 確かに迷いはないですね。

――感覚が変わる前の楽曲は自分ではしっくりきていた?

 その時はこのまま頑張っていれば、何とかなるかなとは思ってました。

――今の楽曲とは異なる?

 違いますね。スタッフと昔の曲の試聴会をしたんですけど、私は聴いていられなくて。それくらい違うと思います。

――具体的には?

 歌詞ですね。そこに自分がいるようでいないものが多かったかな。自分で言うのもおこがましいですが、歌詞自体はすごくキレイな言葉が並んでいます。けど、キレイにみせたいという意図がみえてしまうから、今は絶対使わないだろうなという言葉がいっぱい詰まっていて。

――当時も書き溜めていた言葉を組み合わせて歌詞にしていた?

 当時は思い詰めて書くというのがあまりなかったですね。自分が感じたことよりも周りの人の何かを観た、何かを聴いて書くことが多かったので、全然違うと思います。変な曲では決してないのですけど、今は歌えないです(笑)。

――ファンの方の反応は?

 今でも聴きたいと言ってくれますね。長く聴いてくれている女の子のファンは「この曲も好きだよ」と言ってくれるんですけど、ちょっと歌詞は変えないと歌えないですね(笑)。

――先ほど自分への応援歌と言っていましたが、ご自身がこうなりたい、という理想も込められている?

 そうですね。『NIPPONNO ONNAWO UTAU』という題名も「日本の女性を代表して歌います」ではなくて、私はこういう日本人女性になりたいですという言葉でした。なので、「日本人女性代表です」と捉えられてしまうと「あ~」と思ってしまうのですが、本当はそうではなくて「こういう人になりたい」という目標があって、そうして出来上がった曲が集まった感じなんです。

アナログレコードには空気が入っている

NakamuraEmi

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――女性のファンが増えてきていることについてはどう思いますか

 男性のお客さんは、強い言葉を言い始めた曲だったのでどんどん離れていったんですけど、その代わりに女性のお客さんがたくさんついてきてくれたんです。自分よがりの曲で自分の応援歌だし、もちろんライブハウスで歌うからお金を頂くんですけど、本当に自分だけの曲だから赤字でずっとやってきたし、ライブの宣伝もブログくらいで。その中で段々と、私の歌を聴いて「月曜日は必ずこの曲を聴くよ」とか「今日フラれたけど、この曲を聴いて元気づけられた」とか、その人達の生活に自分の曲が入り込んでいるというのを2年前くらいから感じ始めて、自分の経験が誰かの為になっている状況があるということに本当にびっくりしました。それが私にもパワーになって、今まではこれをメジャーでやっていこうとかプロでやっていこうとかは一切、考えていなかったんです。

――プロを意識していなかったというのは意外でしたね

 結婚をメインで考えていたので。その時、付き合っていた方と結婚したいと思っていましたし、その為に仕事をやろうと思って一般企業に就職もしていたので。音楽は、おばあちゃんになるまでずっと歌い続けられるようにやっていこうと思っていたんです。音楽をメインでやろうと思わせてくれたのは今いるお客さんがいたからですね。

――今後も自分の思いを歌っていく?

 それしか多分出来ないと思います。でも、これから変わっていくのは今まで作ってきた世界で感じた物を書いてきて、独りよがりではあったけれど、今はスタッフさんが、事務所やレコード会社という位置ではなくて、自分が作る物に対してめちゃくちゃ一生懸命に考えてくれて。1人じゃないという状況の中で今度は出会う人がまた幅広くなると思うんですよね。メジャーデビューをするということは各地で私に興味がない人にも会うと思うので、その無関心な方達と会った時とか、その方達が私の曲に入り込んだ時とか、もしかして誰かがこの曲で救われたよという言葉とかで今度は自分が感じたことを書いていくと思うので、自分のことはきっと書き続けていくと思います。その幅が、今までとは違う物を書けるんだろうなと思っています。

――どんな曲がこれから出来るのかワクワクしますね

 ワクワクしていますね。きっと本当は何十曲も書いてどれが良いか、という狙いを定めることが出来たらこの世界では一番良いのかもしれないですけど、一個一個の出会いから出来た曲を凄い大事に扱ってくれているので、不安もありますが、この環境でみんなで作っていきたいと思います。

――1月20日にCDと同時にアナログレコードもリリースされますが、レコードで聴いた印象は?

 レコードをカッティングする所に立ち会わせてもらい、そこで聴きました。最初はそんなに変わる物なのかな?と良く分からなかったんですけど、やっぱり違いましたね。私はあまり音の違いとか聞き分けができる方ではないんですけど、それでも分かるくらい。音に空気が入っている感じがしましたね。やりたかったものがそのまんま音に流れてきている感じがしました。プロデューサーとエンジニアの2人は尚更それを感じたみたいで、「本当にヤバい」と言ってレコードを聴いていました。

――アナログレコードはどなたの案だったのですか

 「いやー、出したいね。出せますかね」みたいなスタッフとのやりとりからですね。今まで私が出してきたCDが全部手作りで。私もすごいレコードが好きなので、2枚目のCDはサイズがレコードと同じくらいの長さの物を作ってみたりしていたんです。私はアナログの物が好きで今度のCDは大量生産になってしまうので手作りの物が出せないから、「Emiちゃんらしさを出すにはやっぱりレコードだと思うから」と言って下さってこのレコードを出せることになったので本当に感謝しています。

――収録曲がちょうど10曲というのもアナログ盤を意識してのことですか

 そうですね。アナログ盤は45分くらいが一番キレイに切れるギリギリのところだというのを聞いていたので。元々そんなに長い曲がないんですけど、長さで決めるわけではないけど結局ちょうどいい長さになりました。A面もB面もそういうのを考えてみんなで作りました。

思い入れのある楽曲「七夕」

NakamuraEmi

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――初収録されている曲がありますが、曲が生まれた時系列は?

 「I」は『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vvol.1』よりも前に作っていた曲で、ファンの方からも音源にして欲しいという声があったので。「オネガイ」は古い曲なんですけど未発表曲ですね。「使命」と「七夕」は最近出来た曲です。

――特に思い入れのある楽曲は?

 どれもありますが、強いて言うなら「七夕」かな。他の曲は全部ライブで構築してレコーディングするんですけど、この曲だけ違うんです。『NIPPONNO ONNAWO UTAU vol.3』のレコ発ワンマンを憧れのMOTION BLUE YOKOHAMAで7月7日に行ったです。それを決めた後にメジャーデビューの契約も決まって、せっかくだからその日にメジャーデビューの発表をしようと。今まで応援してくれていた人がみんな来てくれてメジャーデビューすることを発表をしたら喜んでくれたんです。その時のことを忘れたくはないなと思って。歌詞は完全にMOTION BLUE YOKOHAMAで起こったことを書いているんです。メジャーデビューのアルバムだからこそ、あの日の感謝の気持ちとこれから出会う人への初めましてという気持ちが混った思い入れのある曲を最後に入れさせてもらいました。

――初お披露目はいつ頃になりそうですか

 またMOTION BLUE YOKOHAMAでライブをやりたいなと思っているので、そこでしか歌わない曲でも良いのかなと思っています。

――最後にファンの方や読者の方へのメッセージをお願いします

 メジャーデビューしたらこっちには来てくれないんじゃないかという言葉を各地でもらうんですけど、メジャーだからこそ沢山の地を回って、直接みんなに会って色んなものを吸収してライブで表現出来るアーティストとしてやって行きたいなと思っています。応援を宜しくお願いします。

(おわり)

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