福山雅治“音楽”はなぜ愛されるのか【1】

「福の音」完全初回生産限定盤三方背ケース

 歌手の福山雅治(46)が23日に、デビュー25周年記念ベストアルバム「福の音」をリリースした。本作品はCD3枚組・46曲全てリマスタリングされて収録、総収録時間は3時間45分を超える大作だ。

 1990年のデビューから今までの25年分の福山雅治の「音」が凝縮されている。福山雅治の音楽の変遷も垣間見える。そして、なぜ彼は音楽家として人気を博し続けられるのかという理由がうっすらと見えてくる。その一つが、心身だけでなく音楽的にも良い歳の取り方をしているということだ。

 爽やかな曲が目立った福山作品は「桜坂」辺りから哀愁が漂う作品が多くなった。それはデビュー当時から多用しているアコースティックギターが深く関わっているのではないか。音楽家としての福山雅治の魅力を25年分の音とともに迫ってみたい。

本質を再確認

 「25周年の節目の年に、自分はどんなふうに音楽と向き合ってきたのか? その本質を再確認できる内容に仕上がっています。福山雅治の歌が、言葉が、感情が『音』となって詰まった作品が出来上がりました」――福山雅治

 シンガーソング・ライター、音楽プロデューサー、俳優、ラジオDJ、写真家と、音楽界のみならず様々なシーンで活躍し、“男性ソロアーティスト”として25年間トップを走り続ける福山雅治。ファンの心を掴んで放さないその包容力のある歌声と存在感は、国民的支持を得て常に愛され続けてきた。先の第57回「日本レコード大賞」では特別賞を受賞、そして「第66回NHK紅白歌合戦」への出場も決定し、音楽へ意欲的に活動を続けている。

 好感度ランキングでは各種で常に上位に鎮座する“稀代のイケメン”福山雅治の音楽の魅力とは何だろうか。改めて考えるような事ではないかもしれないが、福山雅治ほど多くの楽曲で大勢の人々を楽しませ、勇気づけた男性ソロシンガーは数少ない。そこで、デビュー25周年記念ベストアルバム「福の音」から福山雅治の音楽の変遷を考えてみる。

1990年デビュー曲「追憶の雨の中」

 福山雅治の進撃は、1990年のシングル「追憶の雨の中」から始まった。当時の音楽シーンを賑わせたバンドサウンドに匹敵するエネルギー、ポジティブ&フレッシュなパワーに溢れたビートロックチューンで「シンガーソング・ライター福山雅治」はデビューを飾る。

 この頃の男性ソロシンガーといえば、尾崎豊やKAN、久保田利伸など、実力派、個性派のシンガーが数多く活躍した。その中でも福山雅治は、多彩な魅力を秘めたシンガーとしての存在感を放っていた。

 そんな福山雅治の音の魅力が、最初に多く世間的に周知されたのは1992年のシングル「Good night」。この作品のヒットを経てリリースされた5枚目のオリジナルアルバム「Calling」(1993年発表)は、初のオリコンアルバムチャート1位を獲得した。親しみやすく、誰にでも受け入れられる楽曲、「福山雅治と言えば、アコースティックなサウンドと、低音のセクシーな歌声」という音楽的な芯の魅力が、広く世間に周知されたのだ。

 そして翌年、福山雅治の存在感は「IT'S ONLY LOVE」(1994年発表シングル)の自身初となるミリオンセラーによって全国に拡散された。思わず口ずさんでしまうサビのメロディは、リリースから20年以上経った今でも色褪せない輝きを放っている。

 シンプルなメロディを、楽曲として最終形まで仕上げ、皆に親しまれるサウンドで披露するという、簡単なようで実は最も難しいスタイルが、デビューからわずか数年ですでに出来上がっていたように思える。そして、その芯は今も決してぶれる事はない。常に真っすぐに突き進むという男らしさこそ、福山雅治の音に表れている魅力そのものだろう。

混在した90年代中期にポップスの王道を示す

 アコースティックギターの艶やかなサウンドと色気のある歌声。一言、一言、聴き手を包み込む様な歌詞、そして、より大勢の人と共有できる福山楽曲のポピュラリティは、日本の音楽シーンの王道を突き進んだ。そして1995年、明るく、爽やかに、堂々と、王道のど真ん中を歩くような魅力がすべて詰まった代表曲シングル「HELLO」がリリースされ、それは瞬く間もなくミリオンヒットとなり、全世代のリスナーに受け入れられ、福山雅治の人気を決定付けた。

 初期の福山雅治のサウンドといえばやはり、アコースティックギターをガンガンにかき鳴らすロックンロールが気持ち良過ぎる「HELLO」ではないだろうか。真っ先に耳に飛び込む導入、これほど輝いた3コードのポップでロックンロールなイントロはなかなか他にない。

 「これぞ福山雅治!」という、ストレートで、ポップで、楽しくて、心躍る、どこまでも「カッコいい」楽曲。カラオケの定番ソングとしても人気を博し、2015年の現在でも頻繁に耳にできる「国民的に愛されている楽曲」そのものだろう。

 「HELLO」がリリースされた1990年代中期は、ロックやR&B、小室哲哉を代表とするテクノサウンド、日本語ラップが出現したジャパニーズHIP HOP、ビジュアルロック・ムーブメントなど、様々な音楽がチャートシーンに混在し、音楽業界自体が大いに盛り上がっていた「J-POP黄金期」だ。その中で、どこまでも王道を突き進み、真正面から音を放った「HELLO」のヒットは、「待っていました」という、大勢の人々の期待に100%応えた「パーフェクトな福山楽曲」だ。

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