ガールズバンドで最も“特異でポップ”

赤い公園の魅力を探る(2)

赤い公園のシングル「KOIKI」初回盤ジャケット

 「ガールズバンド」という括りすら、少々違和感を覚える赤い公園だが、ここでガールズバンドには他にどういったグループが存在するのかをほんの少しだけ挙げてみよう。「ガールズバンドの定義」は、案外フワッとしている感もあるため、ここでは「女性のみのメンバーで、全員楽器演奏をする」バンドを挙げたい。

 ポップでガーリーなサウンドで人気を博し、先日10周年武道館公演を行った「チャットモンチー」、近年のロックバンドサウンドでティーンズからの絶大な支持を得る「ねごと」、高校卒業後に即デビューした3ピースバンド「SHISHAMO」、アリーナや武道館、ワールドツアーも敢行した「SCANDAL」。過激でポップな音楽性の「キノコホテル」。そして、アンダーグラウンドシーンだと「Nisennenmondai」の存在感は濃く、その異才は海外にまで轟いた。

 少し前の時期だと「GO!GO!7188」や「White Berry」、「ZONE」「中ノ森BAND」。更に時代を遡ると、米国進出で成功を収めニルヴァーナもフェイバリットに挙げた「少年ナイフ」、どこまでもパンクスピリットを貫く「ロリータ18号」、80年代の一大バンドブームの中心に存在した「プリンセスプリンセス」、ガチのハードロックやメタルを用いた“ガールズバンドの先駆者”的存在「SHOW-YA」、そしてパンク、ニューウェイブサウンドで新宿ロフトなどのライブハウスの時代を築いた「ZELDA」などなど。

 国内のガールズバンドは1980年代〜1990年代初期にかけて一大ブームを巻き起こした。そして2010年代である現在は「ガールズバンドブームの再来」とも言われている様だ。実際に、「ねごと」「SISHAMO」「SCANDAL」「Silent Siren」そして「赤い公園」らのガールズバンドはフェスやチャートにツアーと、近年の音楽シーンを大い湧かせている。

 上記はとにかくほんの一部に過ぎなく、もちろん日本には他にも魅力的なガールズバンドはたくさん存在する、あるいは存在したが、ざっと並べたガールズバンドの面々の中でも、赤い公園は際立って突出した特異性がある。

モチーフの見えない世界観

 というのも、ガールズバンドには色濃い「モチーフ」がある事が多い。際立った個性に繋がるオリジナリティとも言い換えられるそれは、それこそ「パンクバンド」や「ハードロックバンド」など、音楽傾向であったり、「アイドル路線」や「女子高生バンド」などその存在自体を推す着想や、「イカ天出身」「オーディション厳選」という、過程自体に高い価値のあるものなど。それらバンドにとって武器でもある「モチーフ」が真っ先に思い浮かぶ事が極めて多い。

 しかし、「赤い公園」のモチーフはほとんど見えない。「赤い公園はどういうバンド?」と問われて一言二言で答えるのは至難の技だ。赤い公園は、聴き手に音楽の着想を全く見せない。誰もが持っている“共通意識”を、赤い公園独自のサウンドとして表現している印象がある。それを意図的にやっているのかは不明、というミステリアスな女性的魅力がうかがえる。そのあまりにも形にし難いものを音楽として、自由にアウトプットしている様こそ、赤い公園の最大の魅力なのかもしれない。

赤い公園「のぞき穴」ミュージックビデオ

 カウンターカルチャー、アンチヒーロー感が滲みながらも威風堂々とポップな感性。グイッと耳に突っ込まれる音のアプローチ。複雑な構成の楽曲。底抜けに明るく絶望的に暗く、その両方の感情を併せ持つサウンド。ナナメからの視点を堂々と、ごく自然体で真っ正面に放つ、サバサバとしてクールな物腰。そして、非日常とリアリズムを轟音で展開するライブ。

 みんなで楽しめ「通」も唸らす新しい時代のサウンドを限りなく楽しく自由にプレイする4人の女子・赤い公園は、ポップでアバンギャルドな新種のガールズバンドだ。これからシーン第一線での活躍を見せるだろう。(文・平吉賢治)

 ▽赤い公園のこれまでの軌跡
  赤い公園は、佐藤千明(Vo)/津野米咲(Gt)/藤本ひかり(Ba)/歌川菜穂(Dr)ら4人組バンド。2010年1月結成。地元・東京都立川市のライブハウス「立川BABEL」を拠点に活動を開始。デモ音源「はじめまして」、ミニ・アルバム「ブレーメンとあるく」の2枚の自主制作盤をリリース。2011年10月にはカナダツアー「Next Music from TOKYO vol.3」に参加。2012年2月ミニ・アルバム「透明なのか黒なのか」発売。2012年5月ミニ・アルバム「ランドリーで漂白を」発売。約半年の活動休止を経て、2013年3月1日活動再開を発表。2013年8月14日1st FULL ALBUM「公園デビュー」発売。2014年9月24日2nd FULL ALBUM「猛烈リトミック」発売。2014年 第56回 輝く!日本レコード大賞「優秀アルバム賞」受賞。2015年11月25日シングル「KOIKI」リリース。リーダーであり、メインコンポーザーの津野米咲が中心人物。彼女はSMAP「Joy!!」の作詞・作曲等の楽曲提供をするなど、音楽一家に育ったという彼女の才気、ソングライターとしての評価は極めて高く、多方面で知られている。

 ▽「KOIKI」の楽曲配信サイト
 iTunes http://po.st/koikiitms ※外部リンク
 レコチョク http://po.st/koikireco ※外部リンク

 ▽ニューシングル「KOIKI」作品情報
 発売日:2015年11月25日(水)
 <初回盤(CD+DVD)>
 UPCH-7079
 1,800円(税抜)1,944円(税込)
 CD
 M-1 KOIKI
 M-2出鱈目
 M-3 LA・LA・LA LOVE SONG 
 DVD
 「KOIKI」MUSIC VIDEO
 赤い公園ドキュメンタリー映像「情熱公園」
 <通常盤(CD)>
 UPCH-5861
 1,200円(税抜)1,296円(税込)
 CD
 M-1 KOIKI
 M-2出鱈目
 M-3 LA・LA・LA LOVE SONG

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