僕らの音楽は聴いて完成する フレデリックが最終章で示す本心
INTERVIEW

僕らの音楽は聴いて完成する フレデリックが最終章で示す本心


記者:木村武雄

撮影:フレデリック「トウメイニンゲン」に秘めた思い

掲載:15年11月25日

読了時間:約19分

不変の変化

未来を歌ったのが「FUTURE ICECREAM」と語った健司

未来を歌ったのが「FUTURE ICECREAM」と語った健司

――それを聞けて安心しました。さて、今回のアルバム『OTOTUNE』は、『oddloop』と『OWARASE NIGHT』に次ぐ三部作の最終章です。シリーズとして一括りとなっていますが、音源を聴いて感じたのは、これまでの作品とは全く異なるという印象でした。それは狙ったものなのか、それとも新体制で新たなスタートを切って生じた変化なのでしょうか

康司 それはもう「変化」ですね。自分達が今、感じている前向きなものとか、今回の脱退で色々と思う事とか、今まで培ってきた事や情景をイメージして形にしていった感じですね。

――新しいフレデリックの作品であると感じたので、シリーズの中に組み込んでしまうのもまた違うのかなと思いましたが

康司 僕らからしたらそんな事はなくて、「O」で繋がった三部作なんですよ。「O」というのは、自分達が今までやってきた事を引き継いで、今の僕らが居るんだという決意の表れでもあるんです。メンバーが1人抜けて変わってしまった自分達がいるんですけど、自分達が大事にしている事は変わらないままと思っているので、それをそのまま受け継ぎたくて。そうした意味もあって「O」をつけて「OTOTUNE」というタイトルにしたんです。

健司 変わらないものを持ち続けた上で、変化していくのがフレデリックなんやなあ、というのは『oddloop』の頃からずっと感じていて。自分達は、『うちゅうにむちゅう』(注釈=2014年3月12日発売)というインディーズの頃の音源から凄い変化したなと感じるんです。メジャーに上がって、心境も音楽も変わっていったフレデリックがあって『OWARASE NIGHT』を出した時も『oddloop』で感じたものをしっかりと咀嚼(そしゃく=理解する)して、自分達の音楽性とその気持ちと歌詞を重ねて『OWARASE NIGHT』になったので、そういう意味では変化し続けることがフレデリックなんやなあと思っていて。『oddloop』『OWARASE NIGHT』があっての「O」の三部作になったのかなと。

――『oddloop』も『OWARASE NIGHT』も1曲目にリード曲(oddloop=オドループ、OWARASE NIGHT=オワラセナイト)がありました。一方の今作『OTOTUNE』では「トウメイニンゲン」ではなく「FUTURE ICE CREAM」でした。しかも、この曲はこれまでのフレデリック作品のなかでもロック色が強いものでした。正直、意表を突かれた感じですが、そこには何か狙いが?

康司 「狙い」というのは全くなくて。皆から「結構変わったね」と言われるんですけど、自分達はずっと良いと思い続けたものとか、大事にしたいなと思う事とかを、面白く楽しく形にしているバンドなんですよ。だから自分達が今、伝えないとダメだなとか、「いいな」と思った事がそのまま素直に出てくる、それがフレデリックだと思っているので、僕達からすると全然「変わった」という印象はないんですよね。

伝えたいことが増えた

――どうしてもジャンルで括りたくなりますが、フレデリック作品は、ロックを主軸に、ファンク要素もあれば、オルタナ要素も。レトロさもあればポップさもあって、ジャンルレスと言いますか

隆児 考え方はジャンルレスですね。

健司 今回は伝えたい事が増えたというのがありました。昔の歌詞より、伝えたい事がよりストレートになったと言いますか。「FUTURE ICE CREAM」も「トウメイニンゲン」もそうですし、その歌詞を伝えたい時に一番はっきり前に出せる音楽性が「FUTURE ICE CREAM」の感じだったのかなというのがあって。そこは自分達としては自然と出てきたものなので、音楽性が変わったなというのは自分達ではあまり感じてなくて、周りに言われて初めて気が付きますね、変わったと。あとメロディが長くなったというのはあります。歌詞を大事にする為に出てきた音楽がそれだったと。

――韻を踏んでいるなど、歌詞にユニークさがあって他媒体でもそこにスポットを当てられているところが多いのですが、フレデリックにとって歌詞とは?

康司 自分達の好きな音楽は、どんな時でも情景、風景を見せてくれるんです。そこには何も無いのに目を瞑ったら世界が広がっていて。それは心地良い世界で。日本人ながらに想い描く世界、自分の居場所を作ってくれるというか、居たい風景を作ってくれるというのが歌詞だと思っています。そこから行動に移そうという気持ちになるじゃないですか。共感があった時に前に一歩進めるのが言葉の力だと思います。

――以前、作品を生み出す方法として、歌詞とメロディが一緒に出てくるという話をされていました。歌詞が情景を浮かばせる役割があるとしたらメロディは?

康司 メロディ自体も一緒ですね。それが全部交わった時に完成という感じなので。歌詞と音楽が全て合わさってその情景が見えると言いますか。ひとつのイメージだけでなく、例えばそういう風景が見える部分で、歌が無くなる間奏の部分とかで全く情景が変わってくるので、それは自分たちで凄く意識しています。全く見え方が変わってくるという点で。「OTOTUNE」では特にそういった部分が多くありまして。「FUTURE ICE CREAM」もそうなんですけど。他の曲でもイントロとか。今までもそうだったのですが、そこに凄くイメージを深めながら作っていきました。

未来を伝える「FUTURE ICECREAM」

――フレデリック作品の特長は、もちろん健司さんのボーカルもありますが、グルーヴやリズムがキーだと思います。ベースも印象的で、ギターもカッティングのプレイが跳ねていて心が思わず跳ねると言いますか。そのような中で今作での変化はありましたか

隆児 僕へのイメージはそれぞれあると思うのですが、基本的には今回は変えようとかはあまり考えませんでした。康司くんがデモを持ってきてくれて、健司くんが歌っているのを聴いて「じゃあ、こうしよう」というので、たまたま今までの作品でカッティングに注目してもらえたんですけど、今回は減らしたとか、今回は多めにしたという意識はあまり無いですね。康司くんのイメージ通りにやって、僕なりにも解釈してやってみたりして、「やっぱり逆の事もやってみよう」とかして。「やめて」とかも言われたりもするのですけどね(笑)。そうやって色々遊んでますね。

康司 そこの会話が多かったですね。この情景だったらこのカッティングはどうなんだろう? という疑問とか。「こう見えるんじゃない?」とか。それだったら、このリズムで埋めていったほうがいいんじゃないか、とか。

隆児 「でもさ……」とか言いつつね(笑)。レコーディングをしながら変えたり、作っていったりという事が今回は多かったですね。それも含めて今回は楽しいレコーディングでした。

――まさに“生の音”ですね。その時、その時の音が反映されている

隆児 やっていくうちにデモから変わったところが凄く多かったですね。「やっぱりこうしよう」というのが色々生まれまして。健司くんの歌い方も変化しましたね。

――その時の心境が反映されているとなると旬という味わいがあって面白いですね。今回はどのような心境で歌いましたか

健司 かなりストレートに歌っている事が多くて。やっぱりストレートなものが生まれたというのは、バンドの心境としてです。5月にそういう話が出て、夏フェスに出て、レコーディングをしたのは8月なんですけど、『OWARASE NIGHT』を発売してから自分達がどう進んできたか、どう感じてきたかというのが歌になっていると思うので、そこを意識した時に、自分としてストレートに「FUTURE ICECREAM」という、未来を伝えたいという事、未来を叫びたいという曲でもあったので。自分なりにはフレデリックとして先に進んで、簡単ではない事もたくさんあるし、自分達が思っている方向に行かない事もあるかもしれないという不安もありながらも、それでも自分達を信じて前に進んで行くという気持ちを持って、一人一人のメンバーを頭に浮かべながら歌いましたね。

――自分たちが思っている方向に行かない事もありますか

健司 自分達の思い通りに行くという事自体が、自分達の幅を狭めていると思うので、自分達が予想しなかった事が起きた時に楽しめる様な頭を持ちたいという気持ちもあります。そういう未来が一番いいのかなと思ったりします。

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