すべてを変えた「oddloop」
――予想外の事を楽しめる様にというのは、以前からそう思っていましたか
健司 完全に「oddloop」を出してからですね。この曲をリリースするまで、メジャーでしっかりと皆で踊れる曲というのはフレデリックとしてやった事がなかったので不安もありつつ。でもYouTubeとかで再生回数が凄く伸びたりとか、圧倒的に自分達が今まで見た事のない景色が目の前にあった時に、自分達があまり気にしていなかった事がこんなに楽しい事なんだという事に初めて気が付いて、じゃあ変化を恐れないバンドになるのがフレデリックなのかなと思ったりとか。「こういう生き方もあるのか」と。自分の人生として学んだ瞬間があったので、そこからですね。インディーズからメジャーに移る瞬間から。
康司 奇想天外な事がもとからめっちゃ好きで。バンド自体が、天井が無い様に考えを持つ事も大事なと思っていますね。
――その時の心境が反映されているとなれば、おのずと曲調も変わっていきますね
康司 変わっていってるのは絶対にありますね。
――「オドループ」の再生数は現在600万回を超えて「オワラセナイト」では200万回に迫ろうとしています。この2曲である種のヒットの方程式が出来上がったと思います。その流れを「トウメイニンゲン」でも踏襲しても良かったのではないかと思うところもありますが
康司 楽しいと思う事に関しては計算というのはあまり出したくないんです。なんか固いじゃないですか(笑)。やっていく中で皆が楽しいと思う事、音楽の「楽」は楽しいと書くように、素直にそう思えるものが良いものだと思っているので。そこは素直に出てきたものですね。
――では「オワラセナイト」の時はどうでしたか
康司 「オワラセナイト」もその感覚でやっていましたね。
隆児 僕らの音楽性自体が“答えが無い様なものを創りたい”というのが、まず一番にあるので、その人の感じているものがフレデリックだと思っています。「方程式」と言って頂けるのは僕らからしたら凄く嬉しいです。それはそれで正解もあるんです。
――MV撮影現場を取材させて頂きました。健司さんと隆児さんが仲良くはしゃいでいたのが印象的でした
隆児 やってましたね(笑)。
康司 この2人いつもそうです。
――一方で康司さんはちょっとストイックに自分の世界に入っていたという印象がありました
康司 いやそんな事なかったですよ(笑)。ここ2人が盛り上がっていたら俺も入っていきますよ!
隆児 真面目にストイックというのは人前ではあまり無いです彼は(笑)。
――そうでしたか。その時は康司さんの姿を見て、以前、健司さんが「今、目の前に映っているもの全てを音楽に取り入れようとしている」と話していたのを思い出しまして
康司 ああ、でもそれはそうですね。MVに出演されたモデルさんの表情とか、その場の風景や裏側を見て考えていたら、確かにイメージはめっちゃ湧きますね。「次はこういう曲を作ろうかな」とかも考えていましたし。
――「オワラセナイト」MV撮影現場も取材させて頂きましたが、その撮影シーンをヒントに生まれた作品もありますか
康司 多分、あるんじゃないですかね。忘れちゃうんですけど。あると思います。ずっと言葉を集めていてメモ帳にはびっしり言葉で埋まっているので。
健司 康司は頭で考えて曲やメロディを作るのではなくて、その時に思った感情がメロディや歌詞になって出てくるタイプだと思うので、その時に感じた事が勝手に体や脳に染み込んでいると思います。
康司 うん。勝手に染み込んでる感はあるな。
健司 だから、例えば今日家から歩いてきた間に感じた事も、どこかの曲に入っていたりするんやろなと思ったりするんですよね。彼の曲を聴いた時に。
――すごい面白いですね
康司 ちっちゃい頃からそういう感じだったので。
――すべてのものを吸収しようとしている印象が強いですよね。言葉数は少ないけど、頭の中で張り巡らせているというか。私にも弟はいますが、弟は要領がいいんですよね。いつも何か企んでる(笑)
健司 そうなんです。何かあると僕の後ろに隠れて。親に怒られているのはいつも僕で(笑)。
「トウメイニンゲン」の真意
――同じですね(笑)。さて「トウメイニンゲン」はネット上における匿名の書き込みに対して作った曲と聞きましたが
康司 実はそれだけではないんです。大事な事は本当に本人の前で言わないとダメだなと思っていて。僕らはライブハウスで活動していて、そこには目の前で僕らの音楽を受け止めてくれる皆がいるわけで。そういう人達の前で思っている気持ちとか、歌いたい気持ちを、ちゃんと伝えないといけないと思うんです。ライブする度に感じることなんです。そうした時に、そこに名札がある訳じゃなくて、やっぱり「トウメイニンゲン」でいる人には伝えられないというか…。僕は、名前のない言葉に対して力を感じなくて、本当に目の前で皆が上げてくれる声は本当に伝わるんですよ。そういう事を歌った曲です。自分が思った事とか、大切な人の前で伝えないといけない事は、相手の目を見てちゃんと伝えないといけないと。
――ある意味、ファンへの「決意」を歌った曲でもあるのでしょうか
康司 そうですね。ライブでやっている時に凄くそう感じますね。目の前にいる人達と一緒に声を挙げて言っているからこそ、この人達と一緒に進んでいきたいなという事を凄く感じますね。
――ファンも幸せですね
康司 へへへ(笑)。そう思って頂けたら、本当に嬉しいですね。
――この間、渋谷クアトロでの3マンライブを観させて頂いたときに、「オドループ」のワンフレーズ「あなた、あなた」の時に隆児さんがやっていた観客に指をさす仕草や笑顔が素敵でしたね。あれは毎回、やっているのですか
隆児 本当ですか! ありがとうございます。届いてたんですね! あれは、やったりやらなかったり、バラバラですね。日によって違います。
――あの仕草に心を打たれているファンもいると思いますよ(笑)。さて、3人にとってライブとは何でしょうか
健司 気持ちを一緒に確かめるものなのかなと感じますね。特に「オワラセナイト」は、知らないから一緒に楽しもうよという解釈もできるし、終わらせないといけないから一緒にやろうよという事も言える。内側に籠っている歌詞ではないなと凄く感じていて、それをライブハウスにいる一人ひとりにどう感じてもらえるかという気持ちの確かめ合いをする場なのかなと。もちろん、ライブの中では凄い楽しんで欲しいという気持ちはあるんですけど、ライブが終わってから“歌詞の意味が頭から離れないな”、“歌詞が気に入ったな”となって改めて「ああ、こういう事を歌ってるんだ。じゃあ私はどうしよう」という答えが出せたらベストだなと思っていますね。当然バンドとして。