赤い公園、東名阪ツアーラスト・ファイナルアクト

赤い公園の“対バンツアー”に潜入[2]

 お決まりの「白一色の衣装」。映画「スターウォーズ」のテーマをSEに赤い公園はにこやかに登場。津野(Gt)がつま弾くピアノのシンプルなシーケンス・フレーズから、対バンツアー2015『http://KOIKI/NAMAIKI/EKOHI-KI.com/』ラストステージがスタートした。

 広い音域を踊る様に歌うボーカル。隙と無駄のないアレンジ、分離して要点のみを捉えたアンサンブル。数ある赤い公園の独特なチャームポイントがまずひとつ、1曲目「交信」からクッキリと音として放たれた。オルタナ・ロック、シューゲイザー、ポスト・ロックーー、様々な音楽性で評される彼女らのサウンドは、それら要素は確かにあるものの、なかなか一括りには出来ない“独自性”がある。

 「ツアーで一番熱い夜にしたい!」という元気いっぱいの佐藤(Vo.Key)のMCから2曲目「もんだな〜NINJA MIX〜」に突入。ここで津野(Gt)は「白田トミ子」という名の愛器・ストラトギターに持ち替える。リズミックなギタープレイに絡み付く妖艶な歌。そして津野のギターノイズ。ノイズの轟音と幽玄なメロディ。これぞ赤い公園の危険なチャームポイントだ。フィードバック音混じりの倍音とノイズの混沌としたサウンド上をで美しいメロディをハイトーンで揺らす。その恍惚としたサウンドは、オーディエンスの感覚をわずか2曲で支配した。

赤い公園の“対バンツアー”に潜入[1]

 強烈なギターノイズと共に始まり、語る様な印象のギターフレーズのセクション、アンビエント空間が包囲するセクション、バンドフルで音圧をMAXにするセクション、様々なアプローチが短時間で展開される3曲目「急げ」。これらの相対するサウンド色の展開を1曲に(しかも3分しかない)まとめてしまう「凄み」は、赤い公園ならではの希有なバンドカラーだろう。そして、それらの対比上で白一色の姿で赤いライトに照らされながら踊る佐藤(Vo.Key)が鮮やかに映え、ライブの空気感は益々色濃く増していった。

 ここでカウンターパンチの様なカバーを披露。「スピッツの曲をやります」という契機で始まった「ハチミツ・赤い公園Ver.」。「おいおい、ここまでアバンギャルドなスピッツのカバーは聴いた事がないが」という空気がオーディエンスから流れる。とはいえ、内容は、あまりにもポップでカオス。カンタービレなプレイのベース、そしてガンガンに攻め込むギター&ドラムス。楽しそうに歌うボーカル・佐藤。その意外なカバーっぷりに、「面食らったけど、凄いイイじゃないか!」という、ある種の統一感のあるオーディエンスの反応であった。

 ここまで、シューゲイザーサウンドやアバンギャルドなプレイ、UKポストロックやUSオルタナなどを彷彿させる、濃いロックの要素を余す事なく轟音で出力してきた展開であったが、楽曲「NOW ON AIR」では、赤い公園のガーリーな面がステージに華を添えた。あまりにも可愛らしいステージングでベースを弾く藤本(Ba)、「ルンルン♪」という擬音が聞こえてきそうな雰囲気でギターを撫でる津野(Gt)。フレンドリーなコール&レスポンスを交えながら客席内にもパッと華が舞う。赤い公園は短い楽曲が多い中、この「NOW ON AIR」はたっぷりと聴かせてくれた。

赤い公園の“対バンツアー”に潜入[4]

 ここでMCを挟み、次曲では再び金属系轟音サウンドが遠慮無く展開される運びとなった。ビートを構築する様にドラムを叩く歌川(Dr)のプレイは、清潔感と爆発力を併せ持ち、赤い公園の静と動と激情のサウンド、その根底を支えている。「風が知っている」で聴ける6/8拍子の楽曲だと、非常にビート自体が気持ち良く感じる。それがライブで披露されるとなると、ビート自体が持つ快感促進効果がなおさら前面に押し出され、藤本(Ba)の奏でるベースラインと一体化したグルーヴとなり、赤い公園独自のタイム感が醸される。ライブならではの臨場感がビート主体に味わえる一曲だ。

 そして本日の対バン「LEGO BIG MORL」のカバーを挟む。じっくりと歌って聴かせた赤い公園の姿に、 LEGO BIG MORLへのリスペクトを感じ、会場の一体感は更に強まってきた。カバーを終え、「たのしい!」のコール&レスポンスMCを経て、次曲「楽しい」へと繋いだ。

 常人ではまず思いつかない様な音階のギターフレーズを淡々と弾く津野(Gt)。その音とその姿とは真逆のテンションでドラムを叩く歌川(Dr)。それらとも違う牧歌的なプレイでベースを走らせる藤本(Ba)。ゆらゆらと揺れながら正面に向かって歌う佐藤(Vo.Key)。個々は全く違うスタンスでプレイしてる様に見えるのだが、それらが合わさると何とも言えない独特なアンサンブルとなってアウトプットされる。赤い公園の最大のチャームポイントはこの点につきるだろう。

 あまりにもハッキリとキャラクターが違う4人。しかし「赤い公園」という絶対的な個性をしっかりと持っていて、ダイレクトに音楽になっている。楽曲「楽しい」の演奏からは、そんな赤い公園の希有な魅力がハッキリと音として伝わってくる。

赤い公園の“対バンツアー”に潜入[5]

 「まだ今日の主役の曲やってないね!」とオーディエンスを煽る佐藤(Vo.Key)。11月25日発売の新曲・ニューシングル「KOIKI」の事を示唆する煽りと察知した会場からは、一斉に歓声が上がった。ここで、歌川(Dr)は本日最高のプレイを見せた。冒頭のフィル・インから切れ味抜群の冴えたドラミング。瞬発力に長けたプレイで鋭利なアタックをサラウンドに撒き散らし、絶好のビートをキープする。そして藤本(Ba)のプレイが更にブーストさせ、たまらないグルーヴを生成する、本日最もグルーヴィーな展開に。それに応えたオーディエンスが上げた両手は、曲が終わるまで下がる事はなかった。

 LIQUIDROOMは完全に赤い公園のサウンドに支配され、オーディエンスはその存在をサウンドと一体化していた。しかし、最後の曲「ふやける」の演奏。この時、一体化したオーディエンスはある種、突き放されたとも感じられるくらいの「圧倒感」に見舞われた。

 恐ろしいまでに緻密な構成、メロディ、アレンジ、轟音、ブレイク、ノイズ。ラストの曲では、赤い公園の情念がフルパワーでサウンド化、混沌とした音の塊になり、LIQUIDROOMを埋め尽くした。それを全身で浴びたオーディエンスは完全に打ちのめされ、ただ、その場で、恍惚の感覚と共に立ちすくんだ。圧倒的なエネルギーで演奏された12曲目「ふやける」で放たれたビート、歌、ベース、ギターノイズ。それらは、赤い公園、オーディエンスと共に「完全燃焼」し、白く燃え盛るノイズの激流と共にフィナーレを迎えた。

赤い公園の“対バンツアー”に潜入[6]

 轟音が鳴り響く中、出力がキープされた状態で楽器は置かれ、佐藤(Vo.Key)津野(Gt)藤本(Ba)と、ステージを後にする。執拗にフィードバックするギターとベースの咆哮。歌川(Dr)のみがステージ上に残り、強拍を一発づつ、断続的に打つ。最後の一発を鳴らした後、フィードバックノイズを背にステージを去り、赤い公園のライブは終了した。

 我に返った様に終演に気が付いたオーディエンスから、歓声と共に盛大な喝采が起きた。そして、それは鳴り止まず、再び姿を見せた赤い公園のアンコール曲「LA・LA・LA LOVE SONG」新曲「黄色い花」を披露し、赤い公園の対バンツアーは、本公演の恵比寿LIQUIDROOMをもって幕を閉じた。

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