INTERVIEW

吉本実憂

「罪悪感をなくすこと」悪女を演じる心構え:『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:24年03月07日

読了時間:約8分

 女優の吉本実憂が、放送中の金曜ドラマDEEP『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』(日本テレビほか、毎週金曜24:30〜)に出演。主人公・灰原硝子(演・志田彩良)をいじめる海崎藍里を演じる。本作は黒田しのぶによるマンガ「消せない『私』~炎上しつづけるデジタルタトゥー~」を原作としたドラマ。家族も友達も奪われ人生を台無しにされた灰原硝子が数年の時を経て濃密な復讐を遂げるリベンジ・エンターテインメント。灰原の復讐も進んでいくなか、ドラマも佳境を迎える。インタビューでは、吉本は海崎藍里をどのような意識で演じていたのか、“リベンジ”したいことについて話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

もっとセリフが悪くできる箇所がないか考えていた

吉本実憂

――ドラマ『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』で、吉本さん演じる海崎藍里の反響もすごかったですね。

 「憎たらしい 」と「かわいい」という反響があってすごく嬉しかったです。「憎たらしい」は役者冥利に尽きますし、「かわいい」はこの役を演じるにあたってビジュアルをよくしたいと思っていたので、そう言ってもらえてよかったです。

――ダイエット、ボディメイクもされていたみたいですね。

 体調を崩してしまうのが一番良くないなと思っていたので、無理のない程度に食事制限をしながらの撮影でした。2カ月ぐらいは夕食はお鍋かおでん、お刺身がメインの食生活でした。私はお米が大好きで、どうしても食べたい時は白米はお昼だけとか、夜に食べたいと思った時はいつもの半分くらいの量に制限していました。また、私は体重の変化が顔に出やすいので、そこも気をつけながらのダイエットでした。

――吉本さん演じる海崎藍里のセリフは強めな言い回しもありますが、どのようにアプローチされましたか。

 藍里は言葉遣いが悪いのですが、台本に書かれているセリフより、もっと悪くできる箇所がないか考えていました。

――それが「クソババア」というセリフだったり?

『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』場面写真©日本テレビ

 そうです。「クソババア」はもともと台本には「ババア」と書いてあったと思います。他に「◯◯じゃないし」みたいなセリフは、◯◯じゃねえよ」とか語尾を変えて、どれだけ悪くできるか意識してやっていました。

――吉本さんの演技がとても素晴らしかったのですが、悪女を演じる秘訣はありますか。

 悪女を演じる秘訣ですか(笑)。あるとしたら罪悪感をなくすことかなと思います。おそらく藍里のような意地悪な子というのは罪悪感がなくて、ゴミのポイ捨てをしてしまう人も罪悪感がないからできると思ったので、罪悪感をなくして臨めばいいんだと思いました。やっている時は罪悪感はなくても、後々反省する人もいますが、藍里は一向に反省しないのでタチが悪いなと思いました(笑)。

――あはは(笑)。ところで、藍里のいじめの矛先だった灰原硝子を演じられている志田彩良さん、どんなやりとりをされてましたか。

 お芝居についてのお話は特にしなかったのですが、和気あいあいといろいろなお話しをしました。彩良ちゃんが現場でちょっとした可愛い嘘をつくんです。バーのようなところでロケをした時に、色のついた粉が瓶に詰められていたのですが、彩良ちゃんが「あの粉、食べられるらしいよ」って。「あの色はあの味かな?」といった話をしていると、急に「嘘だけどね」みたいな(笑)。それに私はまんまと騙されてというのがありました。

――吉本さんのピュアさが伝わってきますね。

 私、全部信じてしまうんです。でも、彩良ちゃんの嘘がうまいんだと思います(笑)。

北九州を映画の町としての印象をつけていけたら

吉本実憂

――北九州の特命大使に就任されていますが、現在どのような活動を大使としてやられているんですか。

 文化大使の私は主に映画なんですけど、映画文化を通して北九州をいろいろな方に知っていただいたり、どんどん盛り上げていきたいと考えています。活動内容はSNSで発信したり、イベントに呼んでいただいて北九州の魅力を伝えたりしています。

――改めて地元のことも調べたりされるんですか。

 帰省した時にいろいろなところに寄るようにしています。地元では有名だけど、食べたことがなかったものもあったり、新たな発見もあって楽しいです。

――そんな吉本さんのおすすめは?

 北九州に行ったらまず「資さんうどん」は食べていただきたいです。優しいお出汁とモチモチの麺がとても美味しいです。私はいつも「ワカメうどん」なのですが、最初は「ごぼ天うどん」がおすすめです。

――一般的に北九州はとんこつラーメンのイメージが強いですが、うどんが名物というのは聞いたことがありました。

 「資さんうどん」もそうなのですが、小倉が「焼きうどん」発祥の地なんです。そういう背景もあってうどんを推しています。

――先ほど映画やお芝居など文化を伝えていくとお話しされていましたが、具体的に北九州をどのような場所にしていきたいと思っていますか。

 市長さんやフィルムコミッションナーの方が仰っていたのですが、映画の町にしていきたいという思いがあります。実は昔から『図書館戦争』とか『MOZU』、『HiGH&LOW』シリーズ、最近も『今際の国のアリス』や、私が光石研さんと出演させていただいた『逃げきれた夢』など北九州がロケ地になっている作品も多いんです。たくさんの映画が撮られているんですけど、まだそれが伝わりきれていない印象です。

 たとえば小倉駅の周辺では都会の画が撮れますし、ちょっと足を伸ばせば自然の景色も撮れたりするので、すごくロケ地に向いているなと思っています。それに加えて北九州は大規模な爆破ができるところがあり、映画に協力的な町なので撮影に来る方も多いです。私も映画の町としての印象を皆さんにつけていけたらいいなと思っています。

お芝居の表現を解放していきたい

吉本実憂

――ドラマ『消せない「私」ー復讐の連鎖ー』を拝見していろいろ考えさせられました。表面だけでその人の良し悪しを考えてしまいがちですが、実はもっと根が深いんですよね。改めて家庭環境もとても大事だと思いました。吉本さんは環境をうまく好転させる方法など考えられたことはありますか。

 大人になったら自分でお金を自由に使えるようになりますし、自分で決めて行動できるようになるので、全て自分次第だなと思っています。どんな環境でも大人になったら自分次第でいい方にも行くし、悪い方にも行ってしまうと思っていて、子どもの頃のように自分では環境が変えられないとしたら、精神を変えるしかないと思っています。

 人にすごく嫉妬してもしょうがないので自分の嫌いなところがあったら、矛先が相手に向きすぎている証拠だと思います。その矛先を自分自身に向けて、ちょっとでもいいから自分を褒めるといった気持ちを作っていくしかないと思います。誰に何と言われても自分で決めたことが一番物事を運びやすいですし、長く続くと思っています。私はそうやってきました。

――ちなみに吉本さんは昔、どんなことで嫉妬とかされてました?

 昔は同世代の役者さんのお芝居が上手なことに対して、嫉妬といいますか悔しい気持ちがありました。でも、そんなことをずっと思っていたらきりがないんですよね。私の考え方としては、たまたま近い年代に生まれただけ、生まれた場所も環境も全てが違うから比べる必要はない、と思うようにしました。そう思えるようになってから気持ちが楽になりました。

――考え方を変えられたんですね。

 どうしても誰かと比べられてしまうお仕事なので、それはしょうがないと割り切っています。でも、せめて自分だけは比べないであげようという考え方に変わりました。

――SNSには「自分なんて…」と思ってしまうようなものがたくさん上がっていますけど、そういうのもあまり気にしない方がいいですよね。

 そういうことも経験してきたのでわかるんですけど、自分の幸せや人生の目標に焦点を当てるとかなり前向きになれると思います。たとえば私もオーディションで落ちた時はすごく悔しいです。落ちたという結果のみが伝えられ、どこがダメだったのかはわからないので、もどかしい気持ちになったりします。オーディションに関しては悔しいけれど、タイミングが合わなかったとか別の考え方をするようにしています。

――さて、ドラマは復讐がテーマになっていますが、吉本さんが広い意味でリベンジしたいことってありますか。

 中学生の頃に戻ってリベンジしたいことがあります。私は試験勉強というものを一生懸命やってこなかったんです。体育と音楽が好きな学生時代だったので、当時勉強に対しての向上心があまりなかったんです。今は役作りをする上で情報を得たり、新しいことを知識として取り入れることがすごく楽しいんです。

――そういえば、最近はカフェで勉強されているみたいですね。

 はい。役作りや英語の勉強、最近の映画や賞を獲った海外作品の勉強をしたり、他にも人生設計を考えたりといろいろやっています。家だと家事だったり「あっ!これもやらなきゃ」と用事を思い出して、勉強が手につかなくなるんです。なので外に出てカフェに行くことが多いんですけど、お店ならば他のことはできないのですごく集中できます。

――勉強熱心な2024年の吉本さんの活躍が楽しみです。

 今年はお芝居の表現を解放していきたいです。いろいろな役に挑戦していきたいと思っていますので、注目していただけると嬉しいです。

(おわり)

【吉本実憂プロフィール】

 福岡県北九州市出身。第13回全日本国民的美少女コンテストグランプリ受賞。ドラマ「軍師官兵衛」栄役、映画「罪の余罪」木場咲役、2023年には映画「逃げきれた夢」平賀南役、2024年にドラマ「消せない「私」ー復讐の連鎖ー」海崎藍里役など映画やドラマで活躍。2025年1月に公開予定の映画『室町無頼』の出演も発表された。

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