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 北野武監督が、映画『首』が23日に公開されるのを前に15日、東京・日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見に臨んだ。

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 映画『首』の紹介を求められた北野は「映画のテーマは信長、明智光秀の“本能寺の変”を中心とした物語ですが、NHKで描く大河ドラマはかっこいい役者を使って、歴史的に綺麗ごとを並べたような戦国の物語を描く。そういうところで触れないのが、信長とか、小姓の森蘭丸や前田利家と信長の関係とか、そういう男同士のホモセクシャルの関係というのを絶対に日本の大河ドラマは描かない。もっと戦国時代の男色というのは男同士、その人に命をかけるというような意味での男色であって。当然信長は子供を22歳に授かっている。性的な関係が違うというのは、ほとんど日本のテレビなんかは描かない。もっと戦国時代はドロドロした男同士の関係や裏切とか色んなことが同時に起こってああいう風な事件になったというのを30年前台本に書いた。それはたまには時代劇を撮ろうということで、撮ってみた結果ですが。試写会の段階ではかなり好評で非常に喜んでます」と語った。

 4月の会見では、自身が出演することは考えていなかったものの、周囲から説得・要請されて出演することになったと語っていた北野。ビートたけしと羽柴秀吉はどう重なりあって演技に生かされていたのか。さらに立川談志師匠がエッセイでこう言っている。「たけしの人生その姿どこか豊臣太閤と似る。そして晩年もきっと」。この事について知っていたのかと聞かれ「本当に監督1本でやりたい気持ちはあったが、出演するとなると自分の中ではやりやすいのは秀吉だなと。昔からタレントを戦国武将になぞらえた本がよくあって。信長がぼんちおさむちゃんだとか、紳助が明智光秀だとか、俺が大抵秀吉なんですよ(笑)色々なもの見ると、やっぱり自分がやりやすいのは秀吉だなという感じがあったし、ストーリーの影の部分の悪人をやっているので、監督を同時にやる時にけっこう離れて人の芝居を見られるということがあって。だから自分の時はどうにもならなくなっているが(笑)監督をやるために秀吉を選んだのと、やりやすいので、当然そうなった」と語った。

 また、現在制作中の映画にも話がおよび、「暴力映画におけるお笑い」というテーマで制作に入っていると明かした。

 映画『首』の中での加瀬亮の演技について、本当に狂っているような演技でどのような演技指導をしたか聞かれた北野は「加瀬君は俺の映画に出ている時は、元々純朴というか気の良い青年というイメージだが、アウトレイジで凶悪なインテリヤクザをやらせたり、映画『首』では加瀬君には冒険をしてもらい、信長という狂気だと思うが、演じてもらう上で、言語学者の人に色々聞いて、こんなことを喋ったのではないかという…まず岐阜弁のセリフの言い方と、セリフを頭の中に入れてもらうこと。そして、『100メートルの競争のように突っ走ってくれ』と伝えた。2回は撮らない。ほとんど場合はワンテイクで終わらせるというようなプレッシャーをかけて、失敗しても続けろ。というようにして、とにかくアスリートのような芝居をさせてたが、見事に期待に応えてくれたと思っています」と加瀬の演技指導を振り返りながら、加瀬の演技を称賛した。

 撮影は楽しかったかと聞かれた北野は「制作現場は北野組といって、照明さんなんかは全部俺の映画しかやっていない人もいるし、そういう意味では役者も前から俺に協力してくれていた人も多かったので、こちらから何も言わなくても、こっちの思うことを、忖度ではないが、ちゃんと準備してきてくれて。実際映像では大変そうに見えたけど、撮影現場ではそんなに大変なことではなかった」と回顧した。

 会見の最後に「一言だけお詫びをしておかないといけないことがあって」と切り出した北野。この会見はFCCJが北野武へ約20年もの間ラブコールを送り続け、ついに実現したもの。これに触れ「30年前か20年前かに招待を受けたというのを最近知った。僕の耳に入っていれば30年前か20年前に喜んでここに現れた。僕が嫌でこなかった訳ではなく、全然知らなくて。断った訳ではなく自分の耳に入っていなかっただけ」と会場に呼びかけ、最後は大きな拍手が沸き起こっていた。

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