INTERVIEW

高梨臨

「自分の中にはない感情でした」容疑者役で見せる新たな一面:『MALICE』


記者:村上順一

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掲載:23年09月14日

読了時間:約6分

 女優の高梨臨が、9月14日より動画配信サービス「U-NEXT」でスタートする林遣都&高梨臨&佐藤隆太トリプル主演ドラマ『MALICE』に出演。高梨は殺害の容疑者で潔白を証明すべく事件に向き合う谷村夏帆を演じる。本作は「MALICE=悪意、敵意、恨み」に迫り、真相を暴いていくストーリー。3人それぞれに焦点を当てる多角的な描写により、物語の深度がより増していく作品に仕上がっている。インタビューでは、「チャレンジングな役柄だった」という高梨に、谷村夏帆を通して何を感じたのか、本作のみどころについて話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

人から影響を受けないようにしていた

高梨臨

――今回、高梨さんが演じられる夏帆は、世間から“毒婦”呼ばれる人物なのですが、役柄を聞いて感じたことは?

 今回のような役は今までにやったことはなくて、自分の中でチャレンジングな役柄でした。自分のことしか考えていなくて冷たい、誰も信じず男は利用していくタイプの女性なので、そういった役もやりがいがあって面白そうだなと思う反面、難しいなとも思っていました。でも、台本を読み進めていくとそういった面だけではなくて、彼女の弱い部分も見えてきました。毒婦と呼ばれていることに関しても、世間はよく知りもしないくせに好き勝手に言うよねみたいな感じなのですが、傍から見たらけっこう嫌な感じの人ではあります(笑)。

――あはは。どのような意識で役にアプローチされましたか。

 今回は理解するのが難しい役と言いますか、感情が理解できないというよりは、父親に対してずっとコンプレックスがあったり、人から裏切られてきた人物というのも自分の中にはない感情でした。一つひとつ気持ちを整理しながら、考える時間はかなり長かったです。ドラマ『バツイチがモテるなんて聞いてません』で演じた小野和葉は、割とそのままの自分でいけたので、何も考えず現場に行って、その時に出てきた感情を大事にしていました。今回演じた夏帆は相手の感情を受けとることはせず、基本的に自分のことだけを考えて相手のことは信じない、どこか断絶するようなところがあったので、自分の中でいろいろ考えながらやりました。それは人から影響を受けないようにするといった感じです。

――自分のことしか考えないというのは 1 つのキーワードですよね。

©U-NEXT・共同テレビ

 夏帆は(劇中の台詞で)みんな自分のことしか考えていないみたいなこと言っていますけど、私からみると「夏帆自身だってそうじゃん」と台本にツッコミをいれながら読んでいました。夏帆が人間的に足りない部分だなと私は感じました。でも、人は誰しもそうじゃないですかね。結局自分の身は自分で守らなければいけない。ただ、行動は誰の視点から見るかによって変わっていきます。自分のことしか考えていないようにも見えるけど、実はそうじゃなかったりするということも本作では描かれていると思います。

 私が演じる夏帆に関しては、結局誰も信じられていないから、自分ひとりの力だけでここまでのし上がってきたと思っている。男性を利用してきたのも、恨みやネガティブな部分を原動力にしてきたからこそ、人のことを素直に見られない。仮に誰かが手を差し伸べてくれようとしていたとしても、素直に受け取れなくなってしまっていると思います。私のためにと思ってやってくれたことに対しても夏帆は、「結局そうじゃないんでしょ?」と捻くれて受け取ってしまうのは、育った境遇や今までのことが影響していると感じました。

――本作で興味深いことの一つに“トリプル主演”があります。これは珍しいですよね。

 そうですね。トリプル主演自体も新しいのですが、作品としても新しくて、一人ひとりに主軸があって面白いなと思いました。3人が全く違う軸にいるというか、カップルでもなければ、お互い育った環境も違います。それぞれが違うバッグボーンを持っているから、それぞれの話として読み進めていくと、物語が違って見えると思います。

―― 一方からの情報だけで全てを判断するのは危険、といったメッセージもこの作品には入っているのかなと思いました。たとえばSNSなどで散見する悪意のあるコメントなど、この作品を観て何か感じ取ってもらえるのではと思いました。

 本当にこの作品から何かを感じ取ってもらいたいです。なんでもそうですが、1 つの方面からしか見ていないことも多いです。そういうことは私もあると思いますし、社会的なニュースだけではなくて、友達関係や家族に関してもそうです。一人ひとりの見え方というのは、違う人を主軸にしたら変わっていくという面白さ、そして注意点みたいなものがこの作品にはあると思います。

これまでの私とは違った側面を見てもらえたら

高梨臨

――ご自身のどのような姿を、視聴者の皆さんに見てもらいたいですか。

 夏帆に関してはかなり感情の起伏も激しいので、今まで見たことがない私が盛りだくさんだと思うので、私をよく知っている人がこの作品を観ていただけたら驚いてもらえると思います。ですので、これまでの私とは違った側面を見てもらえたらと思います。

 そして、作品としての面白さも私は楽しみにしています。主軸になるキャラクターによって照明とか音楽も変えているとのことなので、そこも個人的に見るのが楽しみなところです。私も完全に夏帆になりきって演じているので、遣都くんと隆太さんお2人が一体どんな世界観で演じているのか楽しみにしています。

――林さん、佐藤さんとご一緒されてみていかがでした。

©U-NEXT・共同テレビ

 3人とも結構タイプが違う人間といいますか、役へのアプローチも違いました。遣都くんが演じる星野は私の中ですごく謎めいているので、一緒にお芝居をやっていても全然感情も読めないし、こっちはこっちで騙してやろうと思って接しているので、お互いよくわかっていない状況なんです。駆け引きをしているような感じだったので、それが楽しくもあり、自分が見たことがない星野を見るのも楽しかったです。

――佐藤さんはどのような印象を?

 隆太さんは、なんでもない普通のところから自然とお芝居に入っていくような感じあって、それがすごくナチュラルで驚きました。

――オンとオフの境界線がないみたいな?

 私は境界線みたいなものは感じなかったです。自然なテンションでお芝居に入られる方だなと思いました。隆太さんが演じる週刊誌記者の丸山という役はちょっと適当であり、あまりいい印象を与えない感じの役柄なのですが、丸山には丸山なりの家庭の事情、葛藤があったりと複雑なところもあります。ナチュラルに役に入っていくのですが普段の隆太さんとは違う、丸山そのままを感じました。

――最後に、高梨さんは普段駆け引きはされます?

 駆け引きは好きじゃないので私はしないですね。駆け引きをするとしたらトランプのようなゲームぐらいで、相手が何かを出してきたらそこで考えるみたいな感じです。駆け引きに疎い私が、駆け引きをたくさんする夏帆という役を演じるのは面白いと思います。すごく悩みましたが、演じるにあたり試行錯誤を重ねた夏帆を皆さんに楽しんでいただければと思います。

(おわり)

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