INTERVIEW

本郷奏多

「自然と心から笑う瞬間があった」ドラマ 『姪のメイ』撮影の舞台裏


記者:村上順一

写真:木村武雄

掲載:23年09月14日

読了時間:約9分

 俳優の本郷奏多が、テレビ東京系木ドラ24 『姪のメイ』(毎週木曜深夜24時30分~放送中)に出演。本郷は東京在住の中小企業会社員・小津高一郎を演じる。本作は両親を亡くした姪っ子・メイ(演:大沢一菜)を一時的に引き取り、夏休みの間だけ福島県楢葉町で期間限定の仮移住をすることに。そこでリモートワークをしながらメイとの絆を深めていく。そこで出会った人々との温かい人間模様と移住先で繰り広げられるヒューマンコメディードラマ。インタビューでは、撮影の舞台裏から役者としての姿勢、子どもが好きだと語るその理由を聞いた。【取材:村上順一/撮影:木村武雄】

大沢一菜から引き出された笑顔

木村武雄

本郷奏多

――どのようなことを意識して撮影に臨みましたか。

 改めて何かをすることはなかったのですが、小津の年齢は自分に近くて等身大ですし、いい意味でも気負わず作らずに撮影に臨みました。一番大事なのは姪っ子役の(大沢)一菜ちゃんといかに仲良くなれるかでしたが、撮影に入ってすぐに仲良くなれました。

――大沢さんはメイと似ているところも?

 似ていると思います。天真爛漫な子で人懐っこくて癒されました。お芝居をすると引き込まれる瞬間があって、すごく堂々としています。重たい空気を一瞬で作ったり、一菜ちゃんの年齢ではなかなか出せないようなお芝居をするときがあって。

――移住に関してはどのように思いましたか。

 僕の仕事は東京にいないと難しいので、移住に関して興味はそれほどなかったです。作中にも出てくるのですが、「これは東京じゃなくてもできるよね」とか、移住を決めた人の話を聞いて興味が出てきました。福島は東京と比べるといろいろコストも安いし、自然も豊かなので、東京じゃなくてもできる仕事があれば、移住もありかなと思いました。

――移住者同士のコミュニティや婚活パーティーもあったりしますが、撮影をやりながら感じたことはありますか。

©「姪のメイ」製作委員会

 実際に移住したわけではないので、どうなのかわからないけど、知らないことが知れた撮影でした。移住者に対してもともと住んでいる人が気を遣って過ごしやすいようにしてくれていたり、そういうのもあるんだと発見がありました。

――福島で撮影されてどのような良さがあると思いましたか。

 避難指示だった場所がメインのロケ地で、少し前まで立ち入ってはいけない場所だったこともあり自然が豊かなんです。福島ではないと撮れないロケーションとメッセージ性、リアリティがある作品になっていると思います。

――避難区域で野生動物が大量に発生したというのが当時ニュースになっていました。解除されて原生林ぽい感じになってきているという話も何年か前にあったのですが、実際いかがでしたか。

 動物は見なかったです。でも、すごい自然は豊かでした。ただ、建物は綺麗なのに人がいない、店の看板も出ていて中に物もあるんだけど、何年も人が入っていないというのは不思議な感覚でした。それは津波や地震のダメージじゃなく、震災の影響を受けた地域だったからこそ残った建物であって、それを見たときは衝撃でした。

――後々、今回感じたものを表現する機会が出てくるかもしれないですね。

 すでにこの作品にはそういうところも多分に含まれているかもしれないです。福島のリアルから受け取った感情みたいなものは、作品の中でアウトプットされていると思います。

――休みの時間はどのようなことをされていましたか?

 集中して撮っていたので、基本的に休みはなかったのですが、撮影が早く終わって半日だけ休みがあったので、車で福島県浪江町の「ラッキー公園 in なみえまち」(ポケモンをモチーフにした公園)に行きました。すごく楽しかったのですが、頭のどこかでYouTubeを撮らなければと思っていました(笑)。

――半分仕事で(笑)。被災地の方と触れあって考え方の変化はありましたか。

 福島の現地の方と触れ合う機会はなかったので実体験を聞いて変わったというのはないのですが、津波で被災した小学校があって、震災のことを忘れないように当時のままであえて残してありました。当時のことが記してあって何時何分に津波がきて、校内放送が流れて山に逃げましたとか、津波が来た時間に時計の針が止まっていたり、一菜ちゃんと一緒にそれらを見て感慨深かったです。

――本郷さん演じる小津は合理主義者ですが、ご自身と重なるところはありましたか。

 僕も合理主義で無駄なところは嫌いな方です。小津もそういうところはあるので似ているんじゃないかなと思います。小津は他人に興味がないのですが、メイちゃんの奔放さに触れて徐々に変わっていきます。僕自身はこう見えて人にも興味がありますし、小津よりもまともな人間だと思っています(笑)。

――本郷さんが人間関係で距離を縮める秘訣や大事だなと思っていることは?

 相手に対してちゃんとリスペクトを持つことです。たとえ自分よりも年下でも、相手の良い所をリスペクトして人と接するようにしています。

――小津に対してここはどうなのと思うところはありますか。

 そういうことは言わなくてもいいんじゃないか? という空気を読まない一言を発してしまい、それでよくメイちゃんに怒られています。空気が読めないとも違うけど、物事を物事としてとらえているから出てしまう、ふとした冷たい一言が多い印象があり、現代的な若者といった感じはあると思います。

――本郷さんはそういった面はない?

 僕は発言する前に、トータルで考えてから発言するので大丈夫です(笑)。

――さて、大沢さんと共演を通して、どのような俳優さんだと思いましたか。

©「姪のメイ」製作委員会

 一菜ちゃんは12歳でめちゃくちゃ子どもというわけでもなくて。スタッフさんにも同じように接していて、そういうところがすごく素敵だなって。逆にハッとさせられる部分もあったり、お芝居を通して惹き込まれる瞬間もありました。堂々としていて目の力強さと言いますか、どっしりした感じがあって、あの年齢でなかなか出せない重さみたいなものを出してくる時があってすごいなと思いました。

――大沢さんから引き出された部分はありましたか。

 小津はもともと人に興味がなくて斜めに構えているところがあります。メイちゃんと触れ合っているうちに楽しくなり自然と心から笑う瞬間があって、それは引き出してもらったところだと思います。

いろいろな大人を見てきたことが自分を賢くさせた

木村武雄

本郷奏多

――近年はシリアスな作品に参加されるイメージが強いのですが、今回のような作品に出演されるときの姿勢はどのような感じですか。

 今回はメイちゃんが奔放でいられることが正義だと感じたので、特別な準備はしなかったです。原作があるものはしっかり理解を深めてから入るようにしているのですが、今回のような明確な正解というのは誰もわからないから、やや気が楽な部分はあります。原作がある作品は明確な正解を持っている人が多く、それにコミットしていく必要性がありますから。

――本郷さんは監督のリクエストを汲み取りながら進めていくタイプだとお聞きしています。今回はどのようなリクエストがありましたか。

 監督は自由に演じさせてくれました。もちろん監督にこうしてほしいと言われたら、僕は必ずそうするけど今回はのびのびとやらせていただきました。

――撮影を通して新たな発見はありましたか。

 役者を20年以上やっているので、新たな発見はそうそうないのが本音です。ここにきての大きな成長はなくて、いまは続けていくことが大事だと思っていて。そういうフェーズにかなり前から入っています。またどこかで大きな成長が感じられる時がきたら嬉しいのですが、今は一つひとつ続けていくことが大事だなと感じています。

――本郷さんは、お仕事に対してどんな現場でも「最大限のパフォーマンス」という姿勢を掲げていますが、それを実行するのはすごく大変なことですよね。

 仕事に対するその姿勢は変わらずにもっています。一つひとつに真剣に向き合うということが大事だと思いながらやっています。

――その気持ちを持続していくのも並大抵のことではないと思います。

 真剣にやっていると、知らず知らずのうちに数%ずつ下がってきているかもしれないです。スマホのバッテリーで例えると、熱量が最大限にあったときを100%とするなら、マックスが90%くらいみたいな。でも、前提として今もてるすべての力を注いでやっているので、そこは誤解しないでほしいのですが(笑)。

――今回の作品を通して、子どもへの興味もより強くなりました?

 一菜ちゃんとは撮影で毎日一緒にいて、もともと子どもが好きなので、一緒にいると楽しいなと今まで以上に思いました。

――子どものどのようなところに惹かれますか。

 無邪気さ、物事を素直に受け止める力は大人よりも子どもの方が優れていると思います。大人になると面倒くさいとか、これは汚いから触らない方がいいという常識みたいなものがノイズとして入ってくる。子どもは純粋に物事を見ているから、メイちゃんがハッとするような一言をズバッと言ってきたりするのもそういうところからだと思います。そういった指摘は子どもにしかない部分だと思うので好きなんです。

――もちろん本郷さんも幼い頃はメイちゃんのような部分は持ち合わせていて。

 小さい頃から大人の社会に混ざっていたので、よくも悪くもいろいろな大人を早くから見て育ったところがあります。それ自体は自分を賢くさせたいい経験になったと思いますが、相対的にピュアさみたいなものは失っていきました。それこそ一菜ちゃんはストレートに言ってくれます。僕は彼女からすると先輩ですけど、変な絡み方をすると「やめて!」とか「うるさい!」とストレートに言ってくれますから(笑)。でも、そのくらい仲良くしていたということです。

――その経験もあって純真さを求めてしまう?

 あ、そういうことかもしれないですね。とはいえ、もっとピュアさを持っていたかったというのはないのですが、その感覚は素敵なので、自分に子どもができたら伸び伸び育てたいです。

(おわり)

木村武雄

本郷奏多

【ヘアメイク】髙橋幸一(Nestation)
【スタイリスト】川地大介

<衣装クレジット>

・オープンカラーシャツ 50270円 センティフレント
・ニットカーディガン  46200円 ルフォン
以上 シアン PR

・パンツ 35200円 KIMMY
・チェルシーブーツ 104500円 ATTACHMENT
以上 Sakas PR

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木村武雄
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