映画『首』ティザービジュアルⓒ2023KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

 北野武監督が15日、都内で開かれた映画『首』(今秋公開)の完成報告会見に出席した。約6年ぶりとなる北野作品は構想30年を費やし、制作費15億円を投じる戦国時代劇。信長の跡目を巡り渦巻く欲望と策略を描く。

 【動画】『首』完成報告会見の模様。本作の構想を語る北野武と、撮影の裏側を明かす西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋(約27分)

 英雄視される信長だが残虐非道であったことは知られている。戦国時代を描こうとした理由を北野武監督は「戦国大名なんてものは悪い奴らですから。一般人が死んでも関係ない。その残酷さと生と死をバックボーンにした生き方が上手く描ければと思った」と明かした。

 その生と死。北野監督は、死を隣にする戦国武将と大名の関係性も包み隠さず描きたいと思ったそうだ。「男同士が絡み合う。殿様に対して命を懸けるのはそういう関係であることは自分の考え。それを描かないのは戦国時代的にもおかしい。男同士の愛ではないけど死を前にした男同士の関係を描ければ」と語った。

 物語では、本能寺の変に向けた各々の思惑と策略が描かれる。この事変は明智光秀の謀反によるものだが、その背景には諸説様々ある。北野監督が今回構想としたのは秀吉黒幕説。備中高松城の戦いにあった秀吉が信長の死を知り戦闘中だった毛利家と講和をまとめ本能寺へと大軍を率いて大返しする。北野監督は「大返しは秀吉の出来レースであって、秀吉が裏でかなり動いたのではないか」と明かした。

 今の時代劇では表現できないものを描きたい。バイオレンス描写もその一つだ。そして人間模様にも深く入り込む。「日本の戦国時代の人間関係、恨み妬み、成り上がりや天下を取る裏でどれだけ悲惨な事が行われていたか。庶民の生活や戦国大名の真実的なことがあまり描かれていない。正しくないかもしれないけどこういう見方もあることを描きたかった」

 北野監督自ら、本能寺の変を策略する羽柴秀吉を演じる。そして、信長に複雑な感情を抱く明智光秀を西島秀俊。加瀬亮は狂乱の天下人・信長を怪演。浅野忠信と大森南朋も秀吉を支える軍師・黒田官兵衛と弟の羽柴秀長を好演する。

 さらに秀吉に憧れる百姓・難波茂助を北野組初参加となる中村獅童が。他にも木村祐一、遠藤憲一、桐谷健太、小林薫、岸部一徳らが歴史上の重要人物に独自のキャラでなり切る。

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