INTERVIEW

玉城ティナ

「私が持っているもので表現できれば」今泉力哉監督作品に臨む姿勢


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:22年11月02日

読了時間:約5分

 女優の玉城ティナが、11月4日より全国で公開される稲垣吾郎主演映画『窓辺にて』に出演。玉城は高校生作家・久保留亜を演じる。『窓辺にて』は、今泉力哉監督の17作目となる完全オリジナル作品。今泉組に初参加となる、稲垣吾郎を迎えた。今泉ワールドの特徴でもある等身大の恋愛模様に加え、これまで以上に好きという感情について深く掘り下げた大人のラブ ストーリー。インタビューでは、今泉作品をどのように捉え、天才高校生作家・久保留亜にアプローチしたのか、稲垣との共演で感じたことや、観たあと喫茶店での話が盛り上がる映画だと語る玉城ティナに話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

クスッとしてしまうようなやり取りも現場ではあった

村上順一

玉城ティナ

――今泉監督にはどのようなイメージを抱いていましたか。

 初期の作品を観させていただいて会話がすごく多いという印象があります。主演されている役者さんが割と限られているように思ったので、その中に私が入れるのかなという感じでした。

――監督は玉城さんと留亜が似ているというお話をされていましたが、ご自身から見ても重なる部分もありましたか。

 監督からはどの部分が似ているのか明言はなかったのですが、なんとなくこういうところなのかなというのは感じました。それもあって演じるにあたってイメージしやすかったです。留亜は高校生なので、私の年齢より若い役ではありましたが、理解できないというところはなかったです。

――どんなところを意識して演じましたか。

 幼くしようとか、無邪気にしようというのは難しくて、それを「やってるぞ」という感じで演じてしまうと浮いてしまう、計算高い人に見えてしまうので、シンプルに純粋さだったり、年齢からでる幼さとして演じたいと思いました。最初の登場シーンは、生意気で世の中を斜めに見ているようなキャラに見えるのですが、稲垣さん演じる市川茂巳と交流が深まることによって、可愛らしさが見えてくるんです。その部分に関しては、公園に行ったりパフェを食べたり、シチュエーションが助けてくれていたところもありました。私はできるだけスンとしないように、この子は人を見透かしているのか、見透かしていないのか、そんな曖昧さみたいなものを、私が持っているもので表現できればいいなと思っていました。

――稲垣さんと対峙するシーンが多いですが、稲垣さんはどんな方だと思いましたか。

 稲垣さんとお会いする前のイメージはピシッとされていて言葉数もそんなに多くはない人のかなと思っていました。撮影現場なのでお互いピシッとしていたんですけど、実際にお会いしてみてすごく柔らかい印象がありました。クスッとしてしまうようなやり取りも現場でありましたし、何より一緒に良い作品を作っていこうね、という雰囲気が感じられました。

 演技プランを話すようなことは今回なかったのですが、作品の中でお互いがちょっとずつ繋がっていくという作品ということもあり、あまり知りすぎても良くないかも、という感覚が私の中にあったので、そんなに会話はしなかったのですが、きちんとそれぞれが役として進めていければ大丈夫という信頼関係があったと思います。

――玉城さんは稲垣さんによって引き出されたものもありましたか。

 引き出されたものとは少し違うのですが、稲垣さんは主演なので、その役割として引っ張っていくところがあったと思います。お互いにどういう役割がしっかりハマるのかというところを探りつつ進んでいったのですが、稲垣さんの中で市川という役は出来上がっていたので、私はその隙間にどうやったら入り込めるか、と考えながら演じていました。それは役として軸がないと出来なかったことなので、稲垣さんにすごく助けられました。

――役にアプローチするにあたって事前準備はどんなことをされていましたか。

 キャラに関して考えたことはありましたが、一番はセリフをしっかり入れることです。その時に生まれた会話というのが、お客さんに見えなければいけない、そこが今泉監督の作品では大事なのかなと思いました。用意されたものを読んでいるだけではよくないなと、台詞を頭に入れた上であえてあまり考えないようにしていました。言葉というのはポンポンと出てくるものではないと思うので、テイクごとに出てくるものも違う感じになっていたと思います。監督からも細かい演出はなかったので、割と自由にやらせていただきました。

 私は稲垣さんのテンポに合わせていけたらなと思いながら演じていましたが、逆に留亜が主導権を握るような場面もあるんです。その時はここは食い気味で言った方がそれっぽく見えるかなと、普段の会話でも自然とやっていることを意識していました。

――長回しで動きも委ねられる部分も大きかったと思うのですが、その中で台詞を言うのは大変ではなかったですか。

 それが監督の演出でもあったのかなと思うのですが、良いのか悪いのかわからないまま撮影が進んでいくんですよ。私は自信があってこの役を演じているというよりは、このアプローチは正しいのだろうか? と演技中も思いながらやっていました。もちろん外側からはそれが見えないようにというのは心掛けていましたけど、長回しじゃないと出ない緊張感もあるので、逆にやりやすかったです。台詞が多いので、色んなところから撮られる方が大変だったと感じています。

――共感した台詞はありました?

 留亜は自分が演じたキャラなのでわかる部分も多くありました。留亜が「信じたほうがいい」と話すシーンがあるのですが、私も根っこで思っていることなので共感した部分です。どこかで人を信じられないと役者という仕事は続けていけないのかなと思うところがあり、彼女が話すからこその重みがあると感じました。

――市川が記者会見で留亜に質問を投げかけますが、他の記者とはまた違った観点からの質問に興味を示していました。玉城さんはあの場面をどのように感じましたか。

村上順一

玉城ティナ

 この人だったらわかってくれるかもしれないというのは、変な期待かもしれないですけど、そういうのがあって進展していく関係性もあるのかなと思いました。

――質問するというのも奥が深いですよね。

 役者というお仕事は話す機会も多いですし、こういった取材でも色々質問をいただくのですが、私は質問に答えることの方が得意なんですけど、逆に質問をするのが苦手であまりしたくないんです(笑)。

――そうなんですね。市川のような質問をする人に惹かれる部分も?

 本当に質問を考えられる人はすごいなと思いますし、的確ではなかったとしても質問が面白い人には興味が湧きます。

――最後に、この作品をどんな風に観たらより楽しめると思いますか。

 それぞれがあまりハッピーではない恋愛といいますか、個人間でしかわからないところを映画にしてしまったという印象があります。この作品を観ていただけた方には「私にもこういう時代があったな」「こういう気持ちの時があったな」と、年代問わず感じていただける作品なのかなと思っています。例えばカップルで観に行って、それぞれの意見を話しあってほしいですね。きっと観たあとの喫茶店での話が盛り上がる映画だと思います。

(おわり)

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