『FLOWER DRUM SONG』(c)エイベックス・エンタテインメント株式会社/撮影:岩田えり

 Lead古屋敬多と桜井玲香が主演を務める、ミュージカル『FLOWER DRUM SONG』が24日に東京・日本青年館ホールで開幕した。

 アジア人のみでの上演という制約もありブロードウェイでもなかなか上演が叶わない、ロジャース&ハマースタインの隠れた名作。トニー賞作家のデビット・ヘンリー・ファンが大胆に改定した本作品のリバイバル版が、2022年に日本初上陸。日本版の演出・振付は上島雪夫氏。

 1960年代のサンフランシスコ・チャイナタウンが舞台の本作では、不法移民や人種問題に加え、そこに住む人々の恋模様が描かれ、西洋と東洋の文化が融合したような華やかで賑やかなショーナンバーとともに繰り広げられる。

『FLOWER DRUM SONG』(c)エイベックス・エンタテインメント株式会社/撮影:岩田えり

 主演を務めるのは、ワン・夕一役の古屋とメイ・リー役の桜井。瑞々しいカップルを演じる二人は、ともに伸びやかで高音の映える歌声も見どころの一つとなっている。実力派のミュージカル・スターである石井一孝が演じる伝統主義者の父親ワン・チー・ヤンと、彩吹真央が演じるシアターエージェント、マダム・リタ・リャンは、その安心感が見事である。

 劇団のスターであるリンダ・ロウ役を演じるフランク莉奈のキュートで華やかな佇まい、ターの恋敵となる”チャオ役を演じる砂川脩弥の実直さ、さらにハーバード役・泰江和明の軽やかな雰囲気、そしてチン役の八十田勇一が場を締めるキーパーソンとなり、適材適所のキャスティングに唸る。

 「新しいものを作るには、まず古いものを知らなくっちゃ」という本作の台詞にあるように、新たなものを取り入れて成功する頑固な父親と、伝統に敬意を払い創作していくことに目覚めた子との対比が鮮やかに描かれている。赤を基調とした舞台セットには、随所に中国らしいモチーフがあしらわれ、本格的なチャイニーズ・オペラの衣裳と華やかなショーの衣裳も相まって、唯一無二の舞台空間を創り出していた。

 そして、ミュージカル黄金時代を気づいたヒットメーカーであるロジャース&ハマースタインの作品らしく、キャッチーなフレーズもあり耳馴染みの良い楽曲の数々が見どころ。怒涛の音楽に身を任せているだけで、しばし日常を忘れ、サンフランシスコ・チャイナタウンへの小旅行へ行った気分になれるだろう。オーケストラで奏でられる演奏を、ぜひとも劇場で体感してほしい。

 劇場全体で”ミュージカルらしさ”を存分に感じさせる本作。この隠れた名作の上演が、今後も続くことを期待している。

 ミュージカル「FLOWER DRUM SONG」は29日・30日には大阪・森ノ宮ピロティホールで上演となる。公演チケットの情報は、公式HP (flowerdrumsong.jp) 、公式Twitter(https://twitter.com/flowerdrumsong)で配信している。

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