河合優実が、田中圭主演映画『女子高生に殺されたい』(公開中)で、物語の鍵を握る女子高生4人のうちの一人、小杉あおい役を好演している。古屋兎丸氏の同名漫画の映画化。女子高生に殺されたいがために高校教師になった男・東山春人の9年間に及ぶ「“自分”殺害計画」を描く。春人が担任を受け持つことになったクラスの生徒の一人、あおいは対人関係が苦手で、南沙良演じる親友の真帆にだけ心をひらく異端の美少女。河合は原作に寄り添いながら、内側で揺れ動く感情の機微を見事に表現しているが、撮影期間中は「役から抜けたら戻れない気がした」と語るなど難しい役でもあった。どのように向き合ったのか。【取材・撮影=木村武雄】
自分なりに考えて
――出演が決まった当時の心境は?
原作を読んでからオーディションを受けました。城定監督とは2作目でしたが、私が監督だったら、この間出たばかりの俳優は使いたくないなって思うだろうなって(笑)。でも自分が思うあおいちゃんを演じてみて、ダメだったらダメで…という気持ちでお芝居を楽しみに受けに行ったという記憶があります。その後、出演が決まって本読みの時に城定監督に挨拶したら「お芝居を見て決めたので大丈夫ですよ」と励ましの言葉を頂きました(笑)
――『愛なのに』の時は、城定監督からあまり演出について言われることがなかったと話されていましたが、今回も?
現場でどういうふうに動かすのかというのはもちろん言われますが、人物についての話は今回もほとんどありませんでした。『愛なのに』の時はそれが城定監督のスタイルなのか、その作品によるものなのかが分からない状態でした。でも今回もそういう感じだったので、自由に考えたものをやってみてそれが城定監督の世界から外れていたら直していただけると思っていたので、ある程度の枠の中でやってみようという意識でした。
――枠を超えることもあったんですか?
セリフの言い方とかで理解できないところなど、こちらから聞きたいことは城定監督は全部答えてくれますし、やりすぎて「もうちょっと抑えて」というのもあった気がします。城定監督のそうした調整は随時入っていました。
――そのバランスが難しそうですね。
シーンシーンでどこにクライマックスを持ってくるかみたいな、地震を予知したり震えるシーンもいくつかあったので、自己満足かもしれませんが微妙に違いをつけられたと思います。
原作に寄せて
――そのうえで、あおいという役をどう捉えて演じましたか。
これまで漫画原作をあまりやったことがなくて、やる前からビジュアルとして一つ完成されたものがあるという経験が初めてでした。その原作の「キャラクターをなぞって下さい」という指示があったわけではないんですけど、新しい体験ですごく面白かったです。原作では“ぽよ子”と呼ばれてるキャラクターで、語尾に「ぽよ」ってつけるんです。そういうところが実写ではなくなっていたり、そもそも漫画原作から書き換えられている部分がたくさんあったので、自分なりに解釈してやっていいんだなっていうのを作品全体に感じました。ただ私はみんなの中でもわりと原作に寄せているというか、姿勢や表情などは原作を参考にしました。
――原作のビジュアルが大きく反映されている印象を受けました。髪型もそうですが、雰囲気はどのようにつけていかれましたか?
特徴を捉えやすいメガネやおかっぱという髪型ももちろんですが、原作を読んだときに自分がやっているビジョンが浮かんできて「絶対にできる」と思えたんです。内面というよりも見た目から自分が演じている様子が浮かんできて、小道具とか衣装とかももちろんですが、身長の背丈とか猫背な感じとかも再現できそうだなって思いました。
戻れない気がして
――感情面はどうですか。
根本的にあおいは対人関係が苦手というのがあって、予知能力やファンタジー要素がいろいろあるんですけど、それが根拠になっている行動がたくさんあってそこを埋めていくのは自分なりにやっていました。城定監督に相談するよりも、あおいは何でこうしたんだろうという行動の理由は自分なりに考えました。
――実際には難しかったでしょうか。
キャラクターがしっかりありましたので、計画的にどういうふうに見せようかみたいなことを考えるのは難しくなかったんですけど、入ってから予想外というか、思ったより心が追いつかない瞬間がありました。最後に向かってどんどん感情も出ていきますし、あおいにもその理由があるはずなんですけど、そこに追いつくのにすごくエネルギーがいりました。
――普段の撮影では、現場から離れると役から抜けられますか?
抜けるタイプだと思っていたんですけど、あおいは思っていた以上に苦戦したというか、現場から離れたときに抜けてしまうとあおいに戻れない感じがして、予想外でした。
――過去作でも同じような経験はありますか。
ベースは常にあるんですけど、自分がやりづらいなと思うぐらいずっとこのキャラクターでいなきゃというふうになったことはあまりないです。
――ということは自分にとってはすごく特別な役だったんですね。
そうですね、とてもめずらしいタイプだったと思います。
南沙良にちょっかい
――他のキャストさんとは現場でどうでしたか。
(南)沙良ちゃんとは心を通わせるシーンが多いんですけど、シリアスなところも多くて。教室の中で待っている何気ない時に、内容は決めていないけどアドリブでしゃべって下さいみたいなことを城定監督に言われたときに、ちょっかいかけてました(笑)。沙良ちゃんは結構何でも笑ってくれるので沙良ちゃんを笑わせようって(笑)。教室で予知能力とか動物の声が聞こえる設定があったので、草にしゃべりかけたらすごく笑ってくれました(笑)。優しかったです。
――どんなふうにしゃべりかけたんですか?(笑)
「日当たり大丈夫?」「もうちょっと水いる?」みたいな。遺跡研究部の実習で山を登ったときも、立ち位置はシビアに指定されて、そこで何かやっていて下さいって言われたんです。そこで虫と話してみたり。音声さんに「今ちっちゃい声でしゃべってたよね」って(笑)。セリフが少ない役だったので、そういうちっちゃいところで遊んでいました(笑)
――その内容もアドリブなんですか?
音声に入っていない使われていないレベルですけど(笑)。アリに自己紹介みたいなことをしていました(笑)。
(おわり)