噛み締める様に言葉を紡ぐ

[写真]中森明菜の魅力<3>

1月28日に発売されるカバー曲に特化した中森明菜の歌姫シリーズ「歌姫4-My Eggs Benedict-」

 ゆっくり噛み締める様に言葉を紡ぐ中森明菜の新曲「Rojo -Tierra-」。サウンドはスピード感溢れるエレクトロミュージック。イントロではエスニックなビート、撫でる様に語りかけるアコースティックギター。瞬く様なシンセサイザーの和音とシンクロして歌う導入。生命力溢れる情景を浮かばせるフレーズ。妖艶な低音声域を魅せる。歌の間に混ざり合うベースとシンセサイザー、ビートは、互いに過干渉する事なく絶妙に中森明菜と絡み合い、見事に融合している。

 佳境では、テクノミュージックの進化系EDMが持ちうる爆発力と合致する中森明菜の絶対的な武器「ダイナミズム」。これを存分に感じる事ができる。この様な今までに無かった新たな楽曲アプローチで自身の個性を発揮出来たのは、中森明菜にとって非常に大きな事ではないだろうか。

 今回の新曲「Rojo -Tierra-」での歌詞は、楽曲とサウンドに驚く程に同期している。情景を浮かばせるフレーズを語る様な譜割りで配置し、彼女の陰のある魅力を反映したかの様な内容の詞。そして最後には明確な希望を呈示している。生命力溢れる歌声、EDMサウンド上で漂う歌姫の新境地には想定外の魅力がある。

 中森明菜は、歌唱力の安定感と、陰のある魅力から醸される不安定感を兼ね備えている貴重な存在だ。そして、その両方を自身の独特な魅力としてはっきりと具現化している。

楽曲に込めた思い

 そもそも同曲にはこのような思いが込められている。

 タイトルの「Rojo」はスペイン語で赤、「Tierra」は大地を意味する。自然界の営み「弱肉強食」の世界で生き抜く「生命」の燃えるような輝き――。

 この楽曲は昨年大みそかのNHK紅白歌合戦で披露された。紅白で同曲を選んだのは中森明菜自身であり、この楽曲に懸ける想いを9日夜放送されたNHK『SONGSスペシャル「中森明菜 歌姫復活」』で以下の通りに語っている。

 「私を支えてくれているファンの人たちを喜ばせたい、という一心な気持ちなので、画面で見てくれている全ての方に少しでも。日々色んなことあるじゃないですか。大変だったり、身体がしんどかったり、仕事がしんどかったり、精神的にしんどかったり、悲しいことがあったり、嬉しいこともあったりするんだけど、日々の出来事がちょっとでも、私のお歌を聞いたり、私の姿を見たりすることで、ほんの少しだけでもいいので支えになれたり、勇気になれたりとか、喜びに代えていただけたらな、ほんのわずかでいいので。手助けと言ったら偉そうですけど、そういうのが良いなと思います」

 妖艶で絶対的な存在である歌姫、その彼女の新たな挑戦ともいえる今回の楽曲。中森明菜であるという確固たる存在、独自の個性はEDMサウンドであっても素敵に映え、中森明菜の新境地に今後も大きな期待感を抱く事ができる。生命力溢れる中森明菜の歌声は、いつの時代であっても希望の光りを照らしてくれる。  【平吉賢治】

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