矢野帆夏、岡田奈々、池田裕楽

 AKB48グループの中で最も魅力的な歌い手を決める『第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』の決勝大会が12日、千葉・舞浜アンフィシアターで行われ、第4代目女王にAKB48兼STU48の岡田奈々が輝いた。前回女王の池田裕楽(STU48)は惜しくも2位となり連覇とならなかったが、STU48としては決勝大会に6人、ファイナリストには8人中5人が選ばれた。【取材・撮影=木村武雄】

 STU48から決勝大会に駒を進めたのは、清水紗良(15)、矢野帆夏(22)、小島愛子(24)、キャプテンの今村美月(21)、池田裕楽(17)、そして、AKB48を兼任する岡田奈々。ファイナリストにはグループ最多の5人が選ばれた。清水と小島、池田は昨年10月に研究生から昇格したばかり。(※2期生全員が昇格)。清水、池田、今村はアクターズスクール広島出身者でもある。ダンスだけでなく歌唱力という点でも魅せた。

 最終決戦となったファイナル審査には、前回女王の池田、優勝の呼び声も高い矢野、今回初出場の今村、清水、そして今回優勝した岡田が駒を進めた。そのなかで個性が光った。

重圧のなかで戦った池田裕楽

 前回女王という重圧のなかで挑むことになった池田は、決勝大会第1戦でちあきなおみの「喝采」を歌った。実は歌謡曲を聞いたことがなかったという池田だが、その歌い方は抑揚と哀愁のある昭和歌謡にぴったりだったことは前回大会で証明している。今回は更に磨きがかかっているように見えた。

 審査員の亜美は「ブレスさえも歌にしている」と絶賛した。ただ井上ヨシマサは絶賛しつつも「この歌を歌うにあたっては声がでないような歌い方をするといい」とアドバイスを送った。

 初戦を1位通過し、いよいよ最終決戦。選曲は指田フミヤの「花になれ」。「前回の大会とは違う緊張感がありました」という池田は「大会に出ると決まって出会った曲。好きで届けたいという思いで選びました。今の私ができる歌声を届けたい」と歌った。昭和歌謡でもない現代ポップスのバラード。圧巻の声量と安定感、何より素直にまっすぐ歌っている姿が印象的だった。

 池田は「スッキリしました。こんなにも自分をさらけ出して歌ったのは初めてでした。良い時間でした」と笑顔を見せた。ただ結果は2位。「初めての出場とは違って不安も大きかったです」。悔しさと重圧に開放され涙が溢れた。しかしすぐに気持ちを切り替えた。「後悔はないです」。

池田裕楽

歌声に新たな表情、矢野帆夏

 優勝候補の一角として毎大会期待されている矢野。ケガのため欠場した悔しさをバネに臨んだ前回大会は6位に終わった。それを経ての今回の大会。並々ならぬ思いがあったはずだ。それは歌い始めた時に伝わった。

 初戦で披露したのはチューリップの「青春の影」。歌い出した途端に気付く更に磨きがかかった歌声。メリハリがあり、そして力強くも繊細で澄んでいた。歌声に新たな表情が加わっていた。

 会場はファイナリストライブを行っている場所。「ステージがまるいなと思いながら歌いました。気持ち良かったです」と茶目っ気に笑顔を見せたが、審査員の黒沢薫は「伸ばしているところだけが歌ではなくて、休符も歌。それをちゃんとやっていた」と絶賛した。

 初戦は1位通過。いざ決戦へ。選んだのは「このご時世に会えないもどかしさをこの歌に込めえて歌います」とMISIAの「逢いたくていま」。やや落ち着かせて歌っていた初戦とは異なり感情が溢れていた。審査員の亜美も「ピュアでキュンキュンしました」と称えた。

 結果は3位。「1位を目指していたので悔しいんですけど、3位で呼ばれて良かったです」と気丈に振舞ったが笑顔から悔しさがにじみ出ていた。

矢野帆夏

ワールド全開、今村美月

 前回大会は、応援ゲストとして見守る立場だった今村はステージを謳歌した。ダンス力に定評がある今村が見せたパフォーマンスは60年代のアメリカを彷彿させるような華やかなものだった。

 初戦で歌ったのは、藤本美貴の「ブギートレイン’03」。衣装もそれに似せたような感もあるが、その世界観は今村ならではのものだった。グルーヴィなサウンドのなかで跳ねる歌声。ステージをめいいっぱいに使い、その世界観を広げた。「存分に楽しもうと自分らしく歌えたと思う」と充実の笑顔だった。

 審査した井上ヨシマサは「楽しかった。歌がうまいのにこういう風に見せて、でもそのうまさは審査員に伝わっているよ」と絶賛した。

 初戦は1位通過。そして挑んだ決戦はJUJUの「A Woman Needs Jazz」。「違う魅力を見せられたら」と歌った。ジャズバーのような大人の雰囲気のなかで色気のある艶やかな歌声を見せる。奥行きのある低音で聴く者の心をグッと掴む。この2曲で今村の表現力の高さを見せていた。

 審査したMs.OOJAは「自分のスタイルを確立していて、アイドルらしいルックスだけど、それに裏打ちされた歌唱力だった」と絶賛した。結果は7位だったが、表現力の豊かさは、次回どう臨むのか十分に期待させるものだった。

今村美月

迫力の歌声、清水紗良

 5位と躍進を遂げたのは清水。若干15歳でありながら力強く奥行きのある歌声で惹きつけた。初戦で披露したのは柴咲コウの「かたち あるもの」。「きょうのために練習してきました」と歌い始めた途端に空気が変わった。審査したMs.OOJAは「可愛らしい15歳だけどすごくしっかりした歌声で力強いパフォーマンスをしていて、空気感が変わった」と称えた。

 初戦でその存在感を見せた清水がファイナルで歌ったのは、映画『モアナと伝説の海』の「どこまでも ~How Far I’ll Go~」。高低差が激しく、緩急、そして声量がも求められる楽曲を伸びやかに歌った。「すごく気持ち良かった」と満足する清水に、井上ヨシマサは「瀬戸内の海が見えるようだった。声がすごく歌声が通って気持ち良かった」と絶賛した。

清水紗良

サビで突き抜けた、小島愛子

 惜しくも決勝初戦で敗れた小島。緊張感のなかで伊藤由奈の「Precious」を歌い切った。サビで一気に突き抜ける歌声は圧巻。審査員の亜美は「サビで緊張も解放されて、最初からそれがだせたら良かった」と次回に期待を寄せた。

小島愛子

親心、岡田奈々

 4代目女王になった岡田奈々はトロフィを抱え嬉しさに浸り、そして、STU48、AKB48の活躍を喜んだ。STU48については「これだけ大好きなSTU48のメンバーが入っているというのは親心として本当に嬉しい」と笑顔。大会後の取材で「これだけ成長してファイナリストに残っただけでも嬉しい。4回出た甲斐がありました」と明かし、楽屋での様子を「STU48からはいろんな感情が伝わってきて、『おめでとうございます』という気持ちと悔しさが伝わってきてまだまだ伸びるなって思いました」と期待した。

岡田奈々

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