神サイ、アニメ『ワールドトリガー』主題歌のグルーヴの秘密に迫る
INTERVIEW

神はサイコロを振らない

アニメ『ワールドトリガー』主題歌のグルーヴの秘密に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年11月12日

読了時間:約11分

 ロックバンド・神はサイコロを振らない(以下、神サイ)が10月17日、デジタルシングル「タイムファクター」を配信リリースした。神サイは柳田周作(Vo)吉田喜一(Gt)桐木岳貢(Ba)黒川亮介(Dr)の4人編成で、2020年7月にリリースされたデジタルシングル「泡沫花火」でメジャーデビュー。同年11月には1st Digital EP『文化的特異点』をリリース。今年はテレビ朝日系NUMAnimation『ワールドトリガー』2ndシーズンEDテーマ「未来永劫」を収録したメジャー初のシングル『エーテルの正体』をリリース。そして、7月にアユニ・D とn-bunaとコラボした「初恋」、9月にキタニタツヤとコラボした「愛のけだもの」をリリースし大きな話題となった。

 怒涛のリリースラッシュの中、間髪入れずに発表された新曲「タイムファクター」は、「未来永劫」に続いて2作連続でアニメ『ワールドトリガー』に起用され、3rdシーズン主題歌としてアニメ作品の世界を彩っている。柳田周作が同曲のコメントで「バンドで練り上げた神サイ史上最もグルーヴィなサウンド感」と話す「タイムファクター」のサウンド、グルーヴを作り出すまでの秘密に迫った。【取材=村上順一】

■昔の神サイっぽさもありながらも新しさもある

――キタニさんとのコラボ曲「愛のけだもの」の反響はいかがでした?

柳田周作 SpotifyのTokyo Super Hits!に入っていたのがめちゃくちゃ嬉しくて。ちょうどその時に清水翔太さんの「Curtain Call feat.Taka」などコラボ曲が3曲くらい並んでいて、そこに「愛のけだもの」が入っていたことも、受け入れられた要因の一つなんだなと思って。

吉田喜一 そういった反響も嬉しかったですし、個人的には「弾いてみた」動画を上げてくれている人がいたことが嬉しかったです。YouTubeもそうなんですけど、ギターソロをTwitterにも上げてくれていたりして。しかもみんな上手くて、細部までコピーしてくれているのが伝わってきました。

黒川亮介 僕もInstagramとかでドラムをコピーしてくれている女の子がいて嬉しかったです。その子もすごく上手くて。

桐木岳貢 ベースに関するコメントもすごく多くて嬉しかったです。「愛のけだもの」はベースがすごく目立っている楽曲ということもあり、反響があってすごく良かった。もっとコピーしてもらえたら嬉しいです(笑)。

――この曲のベースは難しいですから。12月にはキタニさんとのツーマンライブもありますけど、どんなライブにしたいですか。

柳田周作 「愛のけだもの」をやりたいと思ってるんですけど、難しい曲なのでライブでどこまで再現できるかが課題でもあります。

黒川亮介 お客さんが来て良かったと思えることが一番重要です。そして、「愛のけだもの」でクラップのパートがあるんですけど、ライブでみんなのクラップを聞きたいです。

吉田喜一 良い意味でキタニを意識せずにやりたいと思っている反面、ちょっとピリついた部分も感じたいなと思っていて。勝負ではないんですけど、お客さんの意識が両方に向いていて、エンターテインメントの先にある何かで勝負したいなと。キタニは魅力的な男なので、それに取り込まれ過ぎず、自分たちのカラーを出せたらと思っています。

桐木岳貢 このライブを通してお客さん同士で仲良くなってくれたらなと思っています。この前キタニくんと生配信した時にすごく良い空気感だったので、もしかしたらお客さん同士でもそうなれるのかなと思って。

――対バンならではの広がりを見せそうですね。さて、「タイムファクター」は2期連続でアニメ『ワールドトリガー』に起用されました。今回は主題歌ですが、制作はいかがでした?

柳田周作 春頃にデモが出来て、夏にかけて制作していたんですけど、「初恋」、「愛のけだもの」、「タイムファクター」、Sexy Zoneさんに提供した「桃色の絶対領域」と4曲が同じ時期に進行していて。

――そういえば「初恋」のインタビューの時にちょっとオフが欲しいと話していたのは、めちゃくちゃ忙しかったことからの発言だったんですね。

柳田周作 そうです(笑)。ちょうどその頃に九頭龍の滝に「初恋」のヒット祈願にレンタカーで一人行ったんですけど、その帰りに「タイムファクター」のアレンジの第一稿が上がってきて。車でアレンジをチェックしていたのを覚えています。

――滝に打たれて?

柳田周作 滝は見ただけです(笑)。そのあと九頭龍神社に行って祈願しました。

――皆さんもお参りに行ったりします?

黒川亮介 僕は毎月行ってるかもしれないです。この日のこの方角の神社が良いとか調べて、そういうの好きなんですよ。

吉田喜一 でも、地元の神社じゃないとダメって聞いたことあるよ。

黒川亮介 えっそうなの!? でもウチの地元の神社、落武者が出るみたいなんだけど...。

――不吉な感じですね(笑)。そんな吉田さんは?

吉田喜一 僕は自分の小ささを知るために海に行くタイプです。

柳田周作 それを言ったら僕はよく空を見ますね。

――さて、アレンジャーは小山寿さんですね。

柳田周作 以前から僕らの曲をずっとアレンジしてくださっているので、やりたい事をすごく理解してくれていて。一発目のアレンジで行きたいと思いました。1番と2番のAメロは共通したアレンジだったんですけど、2番でポストロック的な感じになっていて、そこもすごく嬉しかったです。昔の神サイっぽさもありながらも新しさもあるんです。

――「タイムファクター」、タイトルもカッコいいですよね。

柳田周作 ミックスの時に決まりました。時間軸の楽曲ということもあって、時間因子という意味を持つ「タイムファクター」がスッと出てきました。こんなスムーズにタイトルが出てきたのは久しぶりでした。

■「タイムファクター」に反映する「桃色の絶対領域」の影響

「タイムファクター」ジャケ写

――レコーディングは皆さんいかがでした?

吉田喜一 ギターは家で録りました。柳田とキャッチボールしながら詰めていって、Kemperというアンプをキャプチャー出来る機材でレコーディングしました。デジタル感もありつつ、芯の太さもあってKemperっぽい音に聴こえないかも知れないです。それがすごく気に入っていて、この前も、本物のギターアンプで同じような音を作ることに挑戦したりしました。

柳田周作 いつもギターの音作りに悩むんですけど、今回すごく良い音が出せたなと思っていて。アンプはクリーンな音でそこにFullToneのOCDとLINE6のHX Stompを組み合わせて。

吉田喜一 それらをあまり歪ませないでかけるとすごく鉄っぽい音になって。それがKemperで鳴らした時の音に近い感じが出せて。僕が演奏面でこだわったのは入りのチョーキングです。一見同じようなフレーズなんですけど、すごくシビアにやりました。

――黒川さんのこだわりポイントは?

黒川亮介 音作りにこだわりました。特にドラムのヘッド選びです。ドラム自体はいつも使っているダークな音が出るセットで、ソリッドな曲なのでピンストライプというヘッドを使っても良かったのですが、神サイは冷たくてざらついた音が似合うと思っているので、コーテッドのヘッドにしました。タムやバスドラも太い音にしたかったので、普段より大きめのサイズのものを使いました。それによるエアー感や2番Aメロのところのバスドラの感じは聴いてほしいポイントです。

――ドラムは打ち込みとの絡みも面白いですね。

黒川亮介 僕の師匠とスタジオに入って何度も試したんですけど、なかなか良い感じに合わなくて。そこも色々チャレンジして、最終的にクリック(メトロノーム)を聞かずにシーケンスに合わせることで納得のいくテイクが取れました。なので、ジャストなリズムではないんですけど、それが良かったことに気づけたのは大きな発見でした。

柳田周作 各々が自分なりのクリックを作るのが一番良いのかも知れないです。今僕らはそれに近いことをやっていて、ライブ中に聞いているクリックはみんなバラバラなんです。僕は自分用のクリックを聞いていて、リズムがなくなる瞬間だけしかクリックを鳴らしていなくて。

――そんな細かいことをやっていたんですね! 桐木さんはいかがでした?

桐木岳貢 アンプも3つくらい、エフェクターも4つくらい準備してレコーディングに臨みました。いつもは音作りはスムーズに決まるんですけど、今回サウンドプロデューサーの方に「これでいきたい!」と話したら、このエフェクターは今回の曲には合わないと言われて(笑)。それで色々試したんですけど、中々正解が見つからなくて、合わないと言っていたSANSAMPを試したら、「これだ!」となって。

――そういうこともありますよね(笑)。

桐木岳貢 すごく面白かったです。あと、キューボックスというレコーディングの時に使う楽器のバランスを変えることができるモニター機材があるんですけど、それでバランスを変えながら聴いて、「ここが微妙だね」とか亮介とディスカッションしたのが良かった。それによって発見もあったので今後もやっていこうかなと思いました。

黒川亮介 リズムの微妙なズレとかがわかって大きな発見でした。

――そういったものが今回のグルーヴに繋がっていってるんですね。さて、柳田さんはどんな風に歌おうと心掛けていたんですか。

柳田周作 いつもなんですけど、意気込まないようにしようと思っていて、表現方法というのは詞が呼んでくれるので、あまり考えないようにしていて。ただ今回ボーカルは8時間くらいレコーディングしていました。歌の量がすごく多かったんです。

――敢えて別テイクで重ねている部分もありますけど、これにはどんな意図が?

柳田周作 メインが2人いるというのは狙いました。Aメロから1人で歌うのが成立しないメロディラインになっていて。それはちょうど「桃色の絶対領域」を作っていたことが影響しています。「桃色の絶対領域」はグループで歌う曲なのでメロディがクロスして息継ぎが出来なくても大丈夫なんです。その感じを一人で表現するのが面白いなと思いました。なので、歌詞を1行ずつレコーディングしていったのですごく時間が掛かったんです。隠れた聴きどころになっています。

――この曲、ライブではどうなるんですか。

柳田周作 いま考え中なんです(笑)。でもライブを想定して作っていた曲なのでシンガロングも多かったりするんです。2番はサビに行かないですから。

吉田喜一 重なっている部分は柳田のスキルに委ねる感じになりますね。

柳田周作 僕ら4人だけでは成立しない楽曲になっています。お客さんの声が入って成り立つ曲なので、未来が楽しみな曲でもあるんです。

――歌詞で核になった部分は?

柳田周作 「重なったヒストリーを抱き放つ光」の部分です。アニメサイズでも最後に出てくる歌詞でもあって、核になった言葉です。この曲で声を張り上げるのはこの箇所だけなんです。あと、今回男性が歌いやすいキーになっているんですけど、それは意識したところです。最高音がG(ソ)なので男性が気持ちよく地声で歌える感じになっています。アニメの主題歌は一般的にキャッチーさを求めてハイトーンな曲が多いんですけど、大人な感じにしたくて敢えて低い感じに今回はしました。自分の声のおいしいところもローミッドの部分だと思っているので、際立たせたかったんです。

■4人が叶えたい夢とは

――さて、歌詞に「叶えたい夢があって」とあるのですが、皆さんが叶えたい夢は?

桐木岳貢 キャンピングカーで暮らすことです。僕は飽き性で、同じところに帰るのがあまり好きではなくて、色んなところに住んでみたいんです。ただ、運転が苦手なので自動運転がもっと進化したら、頑張ってハイテクなキャンピングカーを買いたいです。

黒川亮介 僕はメンバーと海外でレコーディングしたいです。海外でレコーディングするミュージシャンは多いんですけど、その理由というのはやった人にしかわからないなと思っていて。そこに何があるのか、それをメンバーと見に行けたらいいなと思っていて、まずはロスに行ってみたいです。

吉田喜一 沢山ありすぎて決められないんですけど、いつかはラーメン屋をやりたいです。その前にケバブ屋もやってみたいんですけど(笑)。音楽的な夢は唯一無二の存在になりたいですね。個性を磨いて色んな人と音楽をやって、会話する。そんな素敵な生活をするのが夢です。

柳田周作 バンドとしてはスタジオを作りたいです。いつでもレコーディングが出来て、練習も出来る環境が欲しくて。個人としては40年、50年経っても色褪せない名曲を生み出したいです。80年代の歌謡曲をよくYouTubeで見るんですけど、当時は作詞家と作曲家が分業でクオリティがすごく高いと思いました。メロディも一生耳に残るレベルで、現在まで生き続けている。今は情報過多と言いますか、色んなものを取り入れすぎてしまっていると思っていて、そういった曲を今の時代生み出すのは難しいと感じていて。

 日本人の琴線に触れるのは演歌とか歌謡、やっぱりそういうのがすんなり入ってきてるような気がしていて。なので、そこを追求していきたいと思っています。今の80年代の曲のように、自分の歌が40年後の子どもたちが口ずさんでいるような曲を書くことが夢です。

(おわり)

作品情報

テレビ朝日系列「NUMAnimation」アニメ『ワールドトリガー』3rdシーズン主題歌
Digital Single「タイムファクター」配信中
ダウンロード/ストリーミング → https://kamisai.lnk.to/timefactorWE
リリック入りOfficial Audio → https://youtu.be/42e1bjzQ9ZQ
アニメ「ワールドトリガー」3rdシーズン オープニング ノンテロップ映像→ https://youtu.be/HavAYXmQu4c
公式サイト→ http://kamisai.jp

<ライブ告知情報>

◯東京

キタニタツヤ Presents "Hugs Vol.2" 神はサイコロを振らない / キタニタツヤ

出演日:12月14日(火)
会場:渋谷CLUB QUATTRO
時間:OPEN 17:30 / START 18:15
お問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION
TEL:03-5720-9999(平日 12:00〜15:00)
https://www.red-hot.ne.jp 

〇福岡

タイトル:Queblick 8th Anniversary「神はサイコロを振らない “天神祭” - Queblick Special Limited Live -」

開催日:2021年11月13日(土)
会場:福岡 LIVE HOUSE Queblick
OPEN18:00/START18:30(予定)
お問い合わせ:LIVE HOUSE Queblick
TEL:092-725-8785
MAIL:info@queblick.com

〇山口

タイトル:RISING HALL 5th&6th Anniversary

開催日:2021年11月14日(日)
会場:周南RISING HALL
OPEN17:00/START18:00
出演者:BLUE ENCOUNT / 神はサイコロを振らない Opening ACT:Aqua GeeCharn
お問い合わせ:周南RISING HALL
TEL:0834-27-6555

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