INTERVIEW

倉野尾成美

脱「星3.5女」
『未成仏百物語』インタビュー連載


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年09月16日

読了時間:約6分

<『未成仏百物語』インタビュー連載>倉野尾成美
 AKB48から選出された8名のメンバーが、巷に溢れている不可解な出来事やミステリアスな世界、心霊現象などを成仏させるという、かつて類を見ない怪談エンターテイメント映画『未成仏百物語~AKB48 異界への灯火寺~』に出演した。8名それぞれが怪談エピソードを座談会で語り合い、その後供養するドキュメント形式で、メンバー全員が紹介するエピソードのうち、小栗有以、倉野尾成美、込山榛香、武藤十夢はドラマパートとなり、坂口渚沙、鈴木優香は事故物件サイトの運営でおなじみの大島てる氏との事故物件現場による対談。行天優莉奈は都内某所による心霊スポットへの体験ツアーへ向かい、大盛真歩は“怪談語り”と様々なアプローチで怪談話を披露する。今回、MusicVoiceでは8人全員のインタビューを連載。アイドルとしての笑顔を封印して映画に身を投じた彼女たちは、出演を経て何を想い、何を感じたのか。話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

撮影秘話

――今回8人全員にお話をうかがっているのですが、坂口渚沙さんや小栗有以さん以外は、みなさんどうもかなりの怖がりのようですね。

 そうですね。わたしも多数派に属しています(笑)。いつかホラーや怪談のお仕事はやるだろうなと薄々思っていましたが、苦手だったのでまずいなって思いました。

――中でも「宇宙人」というドラマパートを担当されましたよね。

 そうですね。ほかのメンバーのドラマはものすごく怖いのですが、タイトルからわかるようにわたしの作品はファンタジー、SF的な感じですよね。ただでも……みたいな展開が見ものです(笑)。

――「世にも奇妙な物語」みたいな印象でした。

 一日の出来事としてお話が完結するドラマなので、観やすいと思います!

――お芝居という点ではある意味、安心しましたか?

 心霊スポットに行くわけではないので、それはよかったです。行天のは、ホラー嫌いには最悪のお仕事だったと思います。リアリティーもすごかったですよね(笑)。

――8人で集まったお寺での撮影はいかがでしたか?

 最初は怖いなと思ったのですが、空気が澄んでいて、現地では夜も遅くて寒かったこともあるのですが、意外と安心しちゃいましたね。お寺でしたし、なんだか守ってくれそうだなと、そういう感じに受け取りました。

――改めて、全体をとおして鑑賞した感想はいかがですか?

 怖かったです。特にこみさんが主演の「見逃し」が本当に怖くて、ホラーの王道というか、徐々にやつれていく姿もリアリティーがあって、思い出すだけでも本当に怖い! それと、大島てるさんと行く事故物件のくだりも怖かったです。もともとてるさんのサイトの存在を知っていたので、いちおう近所を見ておこうと思って見たこともあるんですよ。あれはみんな見ますよね(笑)。

――渚さんは大好物らしくて、わくわくしていたらしいですよ。

 そう! なぎちゃんはオカルトが大好きなんですよね。怖い話が大好きなので、それはそれは今回の仕事は、さぞ楽しかったことだろうと思います(笑)。

――ほかにすごいと思ったメンバーはいましたか?

 さっきもちょっと言いましたが、行天ですかね。行天は心霊スポットへ行くのですが、ドラマでのお芝居ではなく、行天そのものが映っているんですよ(笑)。怖がりだし、あのいつものリアクションの大きい感じがとてもよかったです。本人は大変そうなのですが、普段の彼女の姿が観られて、なんだかほっこりしちゃいました。怖がっている姿がかわいいというか、心を捕まれて、まるでファンみたいですよね(笑)。

――お芝居という仕事については、今回経験されていかがでしたでしょうか?

 ドラマの経験は、わたしは浅くて、映画では『ひまわり』という作品に呼んでいただいたのですが、あれは演じるというよりは、本人役みたいな感覚だったんですよね。本格的なお芝居は、AKB48のメンバーと公演した「マジムリ学園」という舞台くらいで、それくらいの経験しかないから、違う共演者さんとの機会は数えるほどしかなかったんです。なのでとても緊張しましたし、わたしで大丈夫かなと自信が持てていないところがありました。でも今後ももっとやってみたいと思いましたし、違う自分と出会ってみたいですね。

倉野尾成美

自分らしさ

――アイドル以外の仕事は楽しいですか?

 もしかすると、逆に言うとひとつのことにあまり集中できないタイプなのかなと思いますね。いろいろなことに興味を持ててしまう性格だから、いろいろなことを試してしまうし、だからこそ楽しいなと思いますね。ひとつに縛られない感じが好きです。

――自由でいたい?

 毎日始業と終業が決まっているわけでもなく、同じ場所に行くのでもないのですが、でもそれも向いているのかも知れません。決まっていても全然よくて、そのルーティンを自分が楽しめるかどうかだと思うのですが、アイドルは今しかできないことではあると思っています。

――デビュー8年目を迎え、アイドル活動をふりかえってみて思うことは?

 あまり自分のことをプロだと思えないというか、まだまだ未熟なところがたくさんあるんです。得意・不得意も出て来ました。最初は何もできなかったけれど、年月を重ねるうちに得意・不得意、好き・嫌いの仕事もわかって来ました。アイドルなので、歌やコンサートなどの公演、イベント、そういう仕事のタグ付けが増えてきたからこそ、好き嫌いも生まれてくるんです。今はそれを見極めているところで、今後の自分の未来も、いろいろな方向に行くのかなと思い始めているところです。今は卒業したメンバーの気持ちがわかるというか、分岐の時期なのかなと。

――込山榛香さんはお芝居がいいと言われていました。

 そういうことですよね。好きなことを、自分が興味あるものを見極めていく。いろいろなお仕事の経験をさせてもらったからこそ、好きな方向をみんなが向いて、AKB48から出て行くのかなと。それが8年目にしてわかったというか、最初は卒業して行くメンバーを見ていて寂しくて、どうして卒業していくのかよくわかっていなかったけれど、今は歳を重ねたので、みんなそうやって決めていったんだろうなと思います。

――自分らしさみたいなことは考えますか?

 考えます。でもわたし、何もないなっていつも思います。がむしゃらで生きてきて、負けず嫌いだなとは思いますが、それで十夢さんみたいな資格を持っているわけでもなくて。そういう称号はうらやましいですよね。

――称号は見つかりそうですか?

 AKB48にはいろいろなメンバーがいて、選抜もあります。みんな何かしら飛び抜けているものがあるんです。でもわたしは普通だなと思ってしまうので、まわりに聞くようにしています。「わたし、何がいいのかな?」「わたしのイメージは何?」と、スタッフさんに聞くようにしています(笑)。グループにいると個性的な人が多いので、いつもわたしらさしについては考えますね。

――仲間であり、ライバルですからね。

 わたしも特技を持ちたいんです。ある意味、「器用貧乏だよね」とは言われたことはあります。確かに、自分でも星4個くらいまではいけるけれど、5個にはならないことがわかっているんです。だからわたし、星3.5の女だなって(笑)。なんでも好きだし、いろいろなことをやってきたからこそ、視点をひとつに絞れなくて、バラエティでも普通の回答をしてしまう。天然で面白い回答ができるわけでもないし、賢すぎるわけでもない。だから星3.5。難しいなって思っているところです(笑)。

倉野尾成美

(おわり)

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