INTERVIEW

大谷凜香

完全燃焼。それが私らしさ。
道を切り開いた『映画大好きポンポさん』


記者:鴇田 崇

写真:

掲載:21年06月12日

読了時間:約6分

 モデル、女優、そして「ポケモンの家あつまる?」など、バラエティー番組でも活躍する大谷凜香が、劇場アニメ『映画大好きポンポさん』で劇場アニメーション声優初挑戦を果たした。杉谷庄吾【人間プラモ】による映画を愛する青年と映画に愛された女性が、映画制作を通して“自分”を見つけ出す物語で、大谷は新人女優のナタリー役を熱演。自身と重なり合う女性だけに、「わたし自身も背中を押してもらえた」と語る。

 劇中では映画制作の面白さと楽しさを描くが、映画ファンやクリエイターだけではなく、夢と未来を掴もうとするすべての人々に響く青春“ものづくり”フィルムだ。大谷自身、「もともとモデルとして仕事を初めて、ずっと女優をやりたかったのですが、なかなか機会が少なくて。今後、どの道に進めばいいのだろうと思っているなかでこの作品に出会えて、ひとつに絞れたんです」と想いを新たに。話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

大谷凜香が声を担当したナタリー(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

キャラクターがしっくりきた瞬間

――立ち止まっている人の背中を押してくれそうな作品に仕上がっていましたが、完成した作品を観ていかがでしたか?

 本当に90分間あっという間で、エネルギッシュで疾走感いっぱいだと思いました。映画が完成するまではナタリーに集中して演じていたので、ほかのキャラクターを客観的な目線で観ていなかったのですが、作品全体を観た時に改めて心に刺さるものがたくさんありました。映画作りのストーリーだからこそ、自分にも響いたのだと思います。業界用語がたくさん出てくるところも面白いなと思いました。

――ナタリーは、どのように演じたのですか?

 初日に監督にキャラクターの設定や方向性をうかがった時、純粋な感じや田舎から出て来た女の子なので素朴なところもあると聞いていたので、ピュアな声が出るように工夫しました。普段の自分の声よりも高いところを意識して演じてみたり、ナタリーがオーディションに落ちまくっている時、とある日急にヒロインに決まった時、その後実際に映画を撮影する現場に行って、どんどん撮影を進めて女優として自覚が出て来る時期など、ナタリー自身の心境の変化を意識しながら演じました。

――役をものにすると言いますか、キャラクターがしっくりきた瞬間はいつでしたか?

 本当のことを言うと、アフレコの最終日ですかね(笑)。それは冗談ですけど、アフレコをしながら少しずつという感じでしたね。最初はいただいている台本のチェックの仕方として、わたしは普段自分の役名にチェックをつけているのですが、それで現場に行ったのですが、それだけでは声優さんの役作りとしては準備不足でした。自分が話すセリフの秒数を描いたり、セリフの感情をメモするなど、いくつも準備しなくてはいけないのですが、そういう部分も何も知らずに現場に行ったので、スタッフさんやみなさんに対策していただいた上で、だんだん自信を持ってアフレコができるようになりました。みなさんに親切に教えていただいて終えられた感じです。

大谷凜香

分岐点に立った時に出会った作品

――新人女優のナタリーというキャラクターは、重なる部分も多そうですね。

 わたし自身、この作品と出会い背中を押された部分はありました。わたしは大学も行っているのですが、最後の学生生活ということで、これからの進路を最終的に決めていかなくちゃいけない、そういう分岐点に立っている時に出会いました。作品に出ているキャラクターたちは、いろいろなものを背負いながらも、映画ひとつに賭けるためにいろいろなものを手放してしまう。そういう何かひとつに賭ける姿を見て、わたしが本当に手放したくないものは何かなと考えされられました。これから女優という仕事をしていく、それが手放したくないものだと背中を押してもらいましたね。

――すごいタイミングの出会いでしたね。

 そうですね。コロナ禍もあって、いろいろなことを考えていたタイミングだったんです。もともとモデルとして仕事を初めて、ずっと女優をやりたかったのですが、なかなか機会が少なくて。今後、どの道に進めばいいのだろうと思っているなかでこの作品に出会えて、ひとつに絞れたんです。ちょっと遅いかもしれないですが、ようやくひとつに絞れた、出会えてよかったなと思いました。

――もしも出会ってなかったら、別の選択肢もあったのですか?

 あったかもしれません。この仕事は不安定なので親にも心配をかけちゃうかなとか、そういういろいろなことを考えた上で、その中でも女優という道を選べて、そうなるためにはどうしたらいいかを考えるきっかけになりましたね。

 ナタリーもバカにされながらもおばあちゃんに夢を応援してもらえて、女優としてオーディションをたくさん受けている過去を持っている子なんです。わたしも自分の夢を捨ててしまったら次のステップに行けないなと思いましたし、遠回りしてもいいから何か大好きなもの、夢が心のどこかにある方は、大切に持っているだけでも持っていてほしいなと思いました。

大谷凜香

熱くなれる、私らしさ

――女優の仕事はどこが楽しいですか?

 今回で言うとわたしもナタリーではないし、ナタリーもリリーではないんです。役の人生を生きています。撮影の間だけでも役の人生を生きていると、周りが全然違って見えるので、人間関係も違うように感じるんです。見えない世界が見えるので、それはこの仕事をやらなくちゃわからないのですが、すごく面白いお仕事だと思います。

――たくさん俳優さんがいるなかで、自分らしさについては考えますか?

 今回のオーディションの時のエピソードもそうなのですが、ちょっと張り切ってしまうあまり、早く現場に着すぎてしまうとか、そういう部分からもにじみ出ているように、すごく前のめりなところはあります。上手く表現できないですが、これがやりたい!と思った時に、すごく一直線に向かって行ってしまう。それしか見えない、周りが見えなくなるので、それは短所でもあるのですが、らしさですよね。普段、感情の起伏はないけれど、熱くなれるものには熱くなるようなタイプだと思います。

――完全燃焼したいタイプ?

 そうですね。不完全燃焼は本当に気持ちが悪いです。いつまでも引きずりたくないけれど、引きずってしまうみたいな。それは自分らしい部分かもしれないです

大谷凜香

想像している時間が好き

――日々、どういう自分磨きをしていますか?

 毎日演技のレッスンをしているわけではないのですが、演技に触れない時間をなくすようにしています。台本は文字しかないので想像力がないと厳しいので、毎日何かの作品を観るとか、あとはいろいろな音楽を聴いています。外国の音楽も日本語の歌詞まで調べたり。ただ、わたしの場合、そういうことを好きでやっているのですが、何かひとつでも熱くハマりやすいタイプではありますね。

――どういう曲を聴いているのですか?

 最近は暗い曲が多いですかね(笑)。普段よく聴くのはR&Bで、あまりメジャーじゃない曲を探すことが好きですね。韓国のヒップホップも好きです。ヒップホップやR&Bは自分を表現することが多くて、経験や生い立ち、人との会話では出さないような部分を抽象的に曲にしていたり、そういうところからほかのことを想像している時間が好きで、そういう曲をよく聴いています。

――最後になりますが、ファンの方へメッセージをお願いします。

 この映画は自分のクリエイティブな部分をより鋭くさせられる作品になっていると思うし、自分の人生を作っているのは自分自身なので、誰もがクリエイターであり、作る側の立場だと思うので、すごく刺さるものがたくさんある作品だと思います。映画館へ行ける方は、ぜひ劇場で観てください。

ヘアメイク 中軍裕美子
スタイリスト 田中あゆみ

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