キンプリ・永瀬廉、役者としての魅力 「目」の表現力
永瀬廉
2021年度前期放送の連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)に、King & Princeの永瀬廉が出演する。同作は、「海の町」宮城県・気仙沼に生まれ育ち、「森の町」同県・登米で青春を送るヒロイン・永浦百音(演・清原果耶)が、天気にとことん向き合う“気象予報”の仕事を通して、人々に幸せな未来を届けていく希望の物語。永瀬は、永浦百音の幼なじみ・及川亮を演じる。
及川は、抜群の運動神経と、気配りのできる性格から、とにかくモテるという若き漁師。しかし、実は人知れず、かつて天才漁師と言われた父・新次(浅野忠信)との関係に悩んでいるという役どころだ。2020年に放送されたラジオ『King & Prince 永瀬廉のRadio GARDEN』(文化放送)では、オーディションで出演を掴み取ったことを明かしている。
永瀬が、及川という役をどう演じるのか、今から期待されるところだが、これまで演じてきた役から彼の演技力を紹介していきたい。
永瀬といえば、主演を務めた映画『弱虫ペダル』(2020年)が記憶に新しい。渡辺航氏による大人気漫画の実写化で、主人公の小野田坂道を演じた。坂道は、運動が苦手で、漫画やアニメが好きなオタク。対する永瀬は、『ViVi国宝級イケメンランキング 2020年上半期』の“NOW国宝級編”で1位に輝くビジュアルを持ち、アイドルとしてキラキラとした姿を見せている。いわば対極にある役柄だ。キャスト発表時は「想像がつかない」と言う声も聞かれたほどだった。
しかし、ビジュアルが公開されると、パッツンに揃えられた前髪に、丸メガネ姿。アイドル感は封印され、小野田坂道がそこに存在しているかのように感じさせた。大人気漫画の実写化ということで、プレッシャーも大きかったことだろう。それを跳ね除けるように自転車の練習に励み、「プロでもキツい」と言われる坂を一発で上り切るなど、人気キャラクターを見事に演じ、『第44回日本アカデミー賞』の新人俳優賞を受賞した。
そんな彼の俳優としての転機のように感じるのが、2019年に放送されたドラマ『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)。永瀬は、古田新太演じる女装家の教師・原田のぶおの生徒・明智秀一を演じた。同作で強く感じたのは、“目”の表現力。父親からの暴力と、母親からの裏切りから心を閉ざし、感情に蓋をして生きている明智は、生気を失った目をしているのが印象的だった。誰もいない部屋に帰り、膝を抱えて幼子のように涙する姿。そして、原田のぶおの型破りな教育で、希望を取り戻すまでをこの“目”の表情で見事に演じ分けていた。
『弱虫ペダル』や、主演を務めた『FLY! BOYS, FLY! 僕たち、CAはじめました』(フジテレビ系)で見せる純粋で真っ直ぐな青年から、『俺のスカート、どこ行った?』での少し陰のある役までを演じてきた永瀬。特殊能力を持つ御曹司・烏丸花穎を演じた『うちの執事が言うことには』(2019年)では、育ちのいい御曹司としての朗らかな表情から、胸のうちを明かすシーンまで、振り幅のある演技を見せていた。
スタイリッシュな印象が強い彼だが、『弱虫ペダル』で見せた変貌のように、『おかえりモネ』で演じる田舎の漁師役も、プロセスを踏み、しっかりと役作りをしてくることだろう。また、人間の陰の部分の表現は、彼の得意分野とも言える。そのため、人知れず悩みを抱えている及川をどう表現するのかに期待が募る。強みである“目”の表現力で、モテモテの姿の裏に潜む陰の部分も、演じ切って欲しい。【かなぴす】
筆者紹介
かなぴす メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動行っていた。エンタメとファッションが大好き。ツイッターは@kanawink