GReeeeNが6日、ニューアルバム『ボクたちの電光石火』をリリースした。GReeeeNは2020年の『第71回NHK紅白歌合戦』に初出場し、デビューから姿を明かさない彼らがAR映像演出で「星影のエール」「キセキ」を披露。「よりGReeeeNが謎になった」など、SNSで話題を呼んだことは記憶に新しい。また、同日の紅白オンエア中にはTwitterトレンド1位という大きな反響をみせた。そんなGReeeeNが発表した新作では、ある変化が見られた。

コロナ禍に書かれた楽曲の数々

 GReeeeNの代表曲「キセキ」「遥か」「星影のエール」など、様々な楽曲から聴ける彼らのメッセージ、サウンドは、ポジティブでリスナーの背中を押してくれる温かく頼もしい作品が多くみられる。しかし、本作では“直球の応援ソング”というようなテイストとはまた異なる面も見られる。

 本作は全7曲収録で、「星影のエール」以外の楽曲はコロナ禍になってから書かれたものだという。各曲、現在も続くコロナ禍という状況下におかれたリスナーの心に寄り添うような、優しさと思いやりが楽曲に表れているように感じられる。

 例えば鋭いダンスビートの「たそがれトワイライト」では、歌詞序盤の<望んでは離れてく いつかこの戦いは終わるの? 負けたくないんだ それだけで朝日を待っていた>という部分や、終盤の<夜空が明けていく 全てを飲み込んで 新たな世界が 始まっていく オハヨウ サヨナラ>という節に見られるように、コロナ禍においての心情が綴られていることがうかがえる。

 「ゆらゆら」では、強い生命力を感じるピアノの音色が響く中、<ゆらゆらと 吹かれながら 暗い夜も 朝日を待つの ゆらゆらが 素敵なのは 嗚呼 動いて生きているから>と歌う。この曲では、「乗り越えて行こう」というような種類の言葉がダイレクトに書かれてはおらず、心模様の描写と共に豊かな楽曲展開とダイナミズムで表現され、GReeeeNの想いがそっと心に寄り添ってくれる。

 そしてアルバムラストトラック、アップテンポのロックナンバー「ボクたちの電光石火」では、<この【 ? 】の中を 埋めなさいと問われ続けて そこには入りきらない 答えをボクら探してる wow>という問いかけのような歌詞から始まり、<夜明けを 待つのは 暗闇の中だ 届くまで 限界突破 越えて光れ世界へ>という部分や<いざ光れ 電光石火 今を生きてるボクらへ>、そして<倒れない強さが欲しいわけじゃない 倒れたって何度だって立ち上がり続けよう>など、現在の未曾有の状況に寄せられるようなメッセージ性がみられ、<もうすぐ朝がくる>という希望のフレーズの一節で締めくくられている。

“美しい朝が迎えられるように”という願い

 GReeeeN は、「この長い夜が明けて、美しい朝が迎えられるようにボクたちは音楽でエールを届けていきたいと思います」と、メッセージを寄せる。(一部抜粋)

 そのメッセージの根本にあるのは、人を思いやる心や支え合う大切さ、リスナーを勇気付けてくれるような想いがあると思われる。そして本作でGReeeeNは、その想いを基軸に、コロナ禍という歴史的状況下に適したかたちで発信したように感じられる。

 GReeeeNはデビューの2007年からほぼ毎年、音楽作品を発信し続け、変わらぬスタンスを時代の背景に適合するかたちで想いを伝え続けている。2020年という未曾有の年が明け、“美しい朝が迎えられるように”という願いを誰しもが持つと思われる2021年。新年にリリースされた『ボクたちの電光石火』は、時代背景と共にGReeeeN流の“エール”が詰まっている。

 コロナ禍という時期に書かれた楽曲が収録される本作。誰しも正解がわからない時代に何を想い、何を発信するか、というのはアーティストのスタンスにより異なると思われる。“ステイホーム”という手法が表すように、「止まりつつ、乗り越える」ということも必要とされる非常に難しい時期が続く。

 そんな時、ストレートに「頑張ろう」「乗り越えよう」というメッセージを受け取るのも心強く、奮い立つかもしれない。しかし、「頑張りすぎて疲れてしまうような状況下でもあるのではないか」ということを鑑みると、今作のようなGReeeeNの、心にそっと寄り添うメッセージ性こそが優しく深く心を覆ってくれるように響くのかもしれない。【平吉賢治】

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)