2020年10月より結成15周年イヤーに突入したGOOD ON THE REELが13日、自身初となるライブアルバム『a LIVE』をリリース。キャリア14年の中で発売された全AL&EPから、ファン投票により1曲ずつ選曲されて2020年10月16日に行われたライブ『HOMECOMING LIVE@ TSUTAYA O-Crest』の模様を収録したライブアルバム。未配信だった「君の友達」「赤いリップ」の2曲を含む全15曲。インタビューでは、昨年を振り返りつつ、GOOD ON THE REELにとってのライブとは何なのか、ライブを行ったO-Crestの思い出など、フロントマンの千野隆尋(Vo)に話を聞いた。【取材=村上順一】
当たり前だったことの大切さに気づいた2020年
――2020年は千野さんにとってどんな1年間でしたか。
当たり前に出来ていたライブが出来なくなって、最初はどうしたらいいかわからなくて...。お客さんと直接触れ合う場所がなくなってしまった事でモチベーションも下がってしまって、それを保つのに苦労しました。それであっという間に1年が過ぎてしまった感じがあります。
――この期間に何か新しい事を始めたりしました?
残念ながら新しいことは始めていなくて。例えば芸人さんが短編小説を書いたり、版画を始めたとか聞くと、何かやっておけば良かったなと思いました(笑)。でも、心境の変化はかなりありました。そのなかで気づいた、再認識したことはライブに勝てるものはない、面と向かって直接届けられるのは、やっぱりライブしかないと思いました。僕の場合、音だけではなくパフォーマンスも含めて伝えたい、という部分もあるのでライブへの思いは強くなってしまうんですけど。
――その中で配信ライブの手応えは?
配信ライブは3回ほどやらせていただいたんですけど、無観客でのライブはMCが難しいなと思いました。他の2回は、少ないですけどお客さんを入れてライブが出来たので大丈夫でしたけど。
――最近、私もライブハウスでバンドサウンドを聴いたら、音圧の心地よさに震えました。
久しぶりに僕らもライブハウスでやった時に「音がデカい!」と感じたんです。自分たちはこんな爆音の中でやってたんだって(笑)。それもあって2020年は改めて当たり前だったことの大切さに気づかせてもらった1年だったなと思います。
――そして、バンド初のライブアルバム『a LIVE』がリリースされますが、今までライブ音源をリリースしてこなかったのは意図があったのでしょうか。
ライブDVDは出していたので、特にライブアルバムを出したい、という発想にならなかったんです。でも今回、ライブが当たり前のものじゃなくなってしまったことで、音源としても出したいなと思って。あとはライブが普通に出来ていた時は、生で観て欲しいという思いもあったので、どこか自分の中で必然性を感じていなかったのかも知れません。
――音源は映像がないところで想像力を掻き立ててくれる部分もありますよね。
それはあります。どんなパフォーマンスをしているのか、想像しながらライブアルバムを聴いてもらうのも楽しいんじゃないかなと思います。僕らとしてはライブの空気感が少しでも伝われば良いなと考えながらアルバムを構築していきました。
――ライブから約3カ月ほど経ちますが、このライブを振り返るとどんなライブだったと感じていますか。
久しぶりのライブだったので、シンプルにめちゃくちゃ楽しかったんです。このライブはファンのみんなに全AL&EPから1曲ずつ投票してもらって、票が多かった曲でセトリを組んだんです。久しぶりに演奏した曲もあって、それも新鮮でした。以前からこれらの曲をライブでやってほしいというリクエストもあったんですけど、なかなかライブに組み込めなかったんです。改めてこの曲はこういうことを伝えたかったのかなとか思うこともありました。曲と改めて向き合うというきっかけにもなりました。
お客さんがいるという環境に感動してしまった
――千野さんの『a LIVE』でのハイライトは?
僕としては「迷走」、「水中都市」、「夜にだけ」と畳み掛けてからの「いらない」です。このセクションはもうどこまでエモーショナルを突き抜けるんだ、といった感覚があってすごく感情的になった部分でした。「夜にだけ」と「水中都市」はアルバムツアーから中々演奏出来てなくて、それがやれたのも印象的でした。そして、「手と手」「シャワー」「灯火」 の本編最後の3曲はすごく希望的にライブを終われたので、このセクションも印象的でした。
――投票からの楽曲だとセットリストの流れを作るのが難しそうですね。
そこはめちゃくちゃ不安だったところです(笑)。すごく曲調が偏ったものになってしまったらどうしようって。楽曲が決まるまではそういった感じだったんですけど、投票結果が出て、セトリを組んでみたら意外とライブのセットリストとして成り立ったかと思っていて。終始全力でやらなければいけないような楽曲が揃ってしまったので、それはそれで大変でした。
――最後まで爽快でしたよね。1曲目が「素晴らしき今日の始まり」というのもグッとくるものがありました。
この曲は割とライブでもやっている曲なんですけど、今回のアンケート結果でもアルバムの中で1位でした。もうオープニングはこの曲からしかないだろうっていう感じでした。
――音源を聴かせて頂いて、ライブ1曲目のテンションじゃないんですよね。本編ラストなんじゃないか、ぐらいの勢いがあって。
ステージに出た瞬間に、お客さんがいるという環境に感動してしまったんです。もうそれが嬉しくて最初から全力で飛ばしてしまったという(笑)。 お客さんと久しぶりだね、と抱き合うみたいな、そんな感覚で1曲目が始まった感じがしています。
――あと音源にはMCも入ってるのはポイント高いですね。
全部ではないんですけど、MCも入れました。最初はMCはなくてもいいんじゃないかなって思っていたんです。というのも一度MCは聞いてしまったら、2回目からは飛ばされてしまうんじゃないかなと思って。でも、ライブアルバムと謳っているのにMCがゼロというのもおかしいかなと思い直して。曲だけ聴きたい人もいると思うので、MCは飛ばしやすいように楽曲の終わりに入れたという経緯もあります。
出会いがあったO-Crest
――ちなみに千野さんはライブアルバムというのは聴きますか。
ライブアルバムはほとんど聴かないですね。普段は割とエレクトロニカやピアノに環境音が入っている曲などを今は聴くことが多いんです。
――どんな曲を聴かれているんですか。
日本の音楽だと、小瀬村晶さんやharuka nakamuraさん。海外だとフェデリコ・デュランドとか聴いているんですけど、あまりアーティストの名前は覚えていなくて、好きな音楽の関連から選んで聴いています。
――さて、アルバムのタイトル『a LIVE』は“ALIVE”とも掛かっているんですか。
はい。ライブがバンドの生きること、ステージに立っている時が生きていることを実感できる時だと思っているのでその意味を込めたアライブと、“a LIVE”で一つのライブ、数ある中のGOOD ON THE REELのライブだ、という意味合いでaを小文字にして、ダブルミーニングにしました。
――『HOMECOMING LIVE』はいろんなバンドが、自分たちのホームでライブをする企画でしたが、今回TSUTAYA O-Crestをホームに選んだのはなぜですか。
すごい悩んだんですけど、僕らにとって出会いがすごく多かったライブハウスだったので、今回はO-Crestを選ばせていただきました。店長の室(清登)さんが『MURO FESTIVAL』を主催しているんですけど、僕らは第1回から皆勤賞というのも大きいです。
――これまでO-Crestで行った印象的だったライブは?
初めて全国流通で出したミニアルバムを引っ提げてツアーを回ったんですけど、そのファイナルがO-Crestでした。O-Crestをワンマンで埋めるというのは、当時からすごいことだと思っていて、そこをソールドアウトできたのが嬉しかったし、あの景色はすごく感動しました。あと、 僕らが全国流通のCDを出す前にLACCO TOWERとのツーマンライブを室さんが組んでくださって、そのライブも印象に残っています。
――どんな心境だったんですか。
当時からLACCO TOWERは有名で、僕たちが彼らとツーマンできるということにすごく驚いて。室さんは僕たちに成長して欲しいと思ってこそのツーマンライブを組んでくれたと思うんですけど、当時ビビりまくってたの覚えてます(笑)。 他にもアルカラやグッドモーニングアメリカは、僕らの直属の先輩みたいな感じに思っていて、カッコいい背中を見せ続けてくれた先輩たちなんです。僕らも下の世代のバンドに対して同じような背中を見せられるようになりたい、と思ったり。
――どのバンドもカッコいいですよね。
そういう存在に僕らもなれたら嬉しいです。『MURO FESTIVAL』のトリはだいたい上記のバンドなんです。いつもいいライブをしてフェスを締めてくれるんです。でも僕らもそのままじゃ悔しいじゃないですか。僕らもそういうところで認めてもらいたいっていうのがすごく強かったんです。そして、一昨年の『MURO FESTIVAL』は念願のトリを務めさせて頂くことができました。 室さんから「トリを任せたいんだけど」とお話を頂いた時はすごく嬉しかったです。
――最後に2021年の意気込みをお願いします。
2021年は、このコロナ禍で音楽を続けていけるように、お客さんに喜んでもらえることを、今できることから探って精一杯やっていきたいなと思っています。生でライブを届けることができない分、いま出来ることを探してお客さんと一緒に楽しんでいけたらなと思います。
(おわり)