a flood of circleが25日、恵比寿リキッドルームで『a flood of circle presents「2020 LIVE」』を行なった。

 10月21日にアルバム『2020』をリリースしたa flood of circleが、その最新にして最高傑作をひっさげ、ライブハウスのステージに帰ってきた。2020年11月25日、恵比寿リキッドルーム。有観客のスタンディングワンマンライブとしては今年1月の「Lucky Lucky Tour 2019-2020」以来10ヶ月ぶりであり、しかもアオキテツ(G)加入後は初のリキッドルーム公演となる。とはいえ、フロアに貼られたマス目状のテープに沿って整然と並び、無言で待つ観客の様子は「いつもどおり」では決してない。a flood of circleが帰ってきたーーとは言えないのかもしれないという不安が頭をよぎったが、ライブが始まるとともにそんな不安はどこかに吹き飛び、「いつもどおり、今が最高」なa flood of circleの姿を、目と耳と心で体感することになる。むしろ時代の逆風なんて、彼らにとっては追い風でしかなかったのだ。

【撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)】

 お馴染みのSEの代わりに盛大な拍手を浴びながら4人が登場すると、アルバムのオープニングを飾る「2020 Blues」のソリッドなギターリフが響き渡る。久しぶりのライブとは思えないほど一体感のあるグルーヴが一斉に転がり始め、佐々木亮介(Vo/G)のリリックが生き生きとビートの上で踊り出す。渡邊一丘(Dr)とHISAYO(B)がグイグイ牽引するリズム、加入以降進化がめざましいアオキのギターも一段と躍動的だ。4人だけの音にこだわって作り上げられた『2020』の力強さは音源からも十分感じられたはずなのに、音源を一瞬で超えてくる迫力を浴び、ライブとは、バンドとは生き物である、ということをまざまざと思い知らされた。その野性的なアンサンブルが、2曲目の「Beast Mode」で文字通り解き放たれていく。オーディエンスも手を掲げ、まるで歓声が聞こえてくるかのような盛り上がりを返していた。

【撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)】

 定番の手拍子が巻き起こった「Dancing Zombiez」を挟んで、アッパーなメロディが突き抜ける「ファルコン」、ベースのイントロから前のめりに進む「ヴァイタル・サインズ」、静かな歌い出しから佐々木&アオキのかけあいが印象的な「Free Fall & Free For All」と、多彩なアルバム収録曲が次々と披露されていく。コロナ禍に突入する前に完成していたという『2020』だが、現状を打破するパワーに満ちた楽曲たちをライブで聴くと、改めて「今」とリンクしすぎていて驚かされる。その理由は佐々木のMCで明かされた。「2020年はどういう年でしたかってよく聞かれたけど、毎年やってきたから、今年もやってくだけだっつうの。これまでも毎回スペシャルだっただけで、今日もスペシャルだから」。どんな逆境であっても、新たに踏み出す一歩に希望を込めてきた彼らの音が、リアルタイムに刺さらないわけがないのだ。

【撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)】

 後半戦は、「もう逢えないスーパースターとみんなに捧げます」と贈られた「Super Star」から、そっと包み込むようなグルーヴで「The Key」「人工衛星のブルース」へ繋げていく。シンプルな音像で浮かび上がるメロディの美しさもまた、4人が生み出すもうひとつの側面だ。続く「天使の歌が聴こえる」の曲中で、佐々木が「あなたが生きてる今日は史上最高だ/悲しい夜を超えたら また会えるように」とアカペラで歌いあげた瞬間には、思わず息を飲んだ。ここまでストレートに祝福と祈りを表現したことはかつてないだろう。この場にいる全員、そして配信の画面越しにも、優しく熱いメッセージが届いたはずだ。

【撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)】

 そんなエモーショナルなムードを自らかき消すように渡邊がドラムを打ち鳴らし、アルバム内でも異彩を放つロックンロールナンバー「Whisky Pool」から、ボーカルも担うアオキが暴れ回る「Lucky Lucky」へ。4人4様のポジティブなエネルギーに溢れ、さながらロックパーティの様相だ。その空気のままでなだれこんだ「Rollers Anthem」で、「誰が何と言おうと/それをロックンロールと呼ぼう」と高らかに歌う佐々木。a flood of circleの新しいアンセムとして、今はできなくても、この曲を満場のオーディエンスがともに歌う日が見えた気がした。

【撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)】

 「ロシナンテ」「プシケ」を叩きつけたあと「今確信した! 大丈夫! ロックンロールまだまだイケる!」と佐々木が叫んで始まったキラーチューン「シーガル」を経て、本編ラストはアルバムを締め括る壮大なバラード「火の鳥」。攻撃力も包容力も増した「2020」年のa flood of circleを象徴する楽曲に、今夜の終演を感じる一方で、その先にある終わらない未来の約束がたしかに刻まれていた。

 アンコールでは、結成15周年記念無料生配信ライブ「FIFTHTEEN」、さらに1年ぶりの全国ツアー「2020 TOUR 2021」の開催という嬉しい告知が。「Are you ready? ここから始まるぞ!」と佐々木が宣言すると、ラップもキレキレな「欲望ソング」でまだまだ尽きない貪欲さをぶちまけてみせる。止まらない意志を乗せた「GO」でフィナーレを駆け抜けたあと、フロアに残っていたのは希望、ただそれだけだった。何があっても転がり続けることをやめないa flood of circleは、まだ見ぬ「2021」年へ向けて、さらに加速していくに違いない。

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