4人組ガールズバンドGIRLFRIENDが23日、2ndアルバム『HOUSE』をリリース。今作はアニメ『ブラッククローバー』オープニング曲「sky & blue」、 昨年11月に公開された映画『地獄少女』主題歌「Figure」、そして清水翔太プロデュース、作詞/作曲の「それだけ。」などバラエティーに富んだ全14曲を収録。平均年齢19歳という若さあふれるポップロックサウンドからシリアスなバラードナンバーまで、等身大の彼女たちの魅力がぎっしりと詰まった作品に仕上がった。インタビューでは1stアルバム『CHOCOLATE』リリースからの2年間の活動を振り返り、『HOUSE』の制作背景や活動に対するスタンスの変化など4人に話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=富田味我】
共同生活から生まれた『HOUSE』
――前作からこの約2年間で、皆さんはどのような変化を感じていますか。
SAKIKA 1stアルバム『CHOCOLATE』から2年、様々な経験をさせていただきました。その中で私たちはどんな音楽をやっていきたいのか、どのようなことを歌っていきたいのかと、考えていました。今作はそれぞれが2年間考えてきたことが、ひとつにまとまったと感じています。答えではないんですけど、今の私たちの現状が表れていると思います。
NAGISA 昨年行った恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブ『GIRLFRIEND% 真夏の大挑戦~ミッションなんてパイナップル!?』は自分たちのやりたいことを詰め込みました。言葉に言い表すのは難しいのですが、すごく一致団結できたんです。そこから燃え尽き症候群にならずに4人がひとつになって頑張って来れているなというのが実感できています。
MIREI 今作は新しいというよりも、新鮮に感じる曲がたくさん入っています。ワンマンライブに向けてやってみたい曲だったり、この2年間いろいろ試してきました。それもあって伝えたいことも『CHOCOLATE』の時とはみんな全然違うだろうし、ここまでの生き様が見える、ガラッとイメージが変わった1枚になったと感じています。
MINA 『CHOCOLATE』をリリースしてからは、いろいろ模索しながら目の前にある目標をクリアしていきました。YouTubeでカバー動画を上げてみたり、考えながらの2年間でした。その節目となったのがNAGISAも話していた恵比寿LIQUIDROOMでした。その時の私たちには無謀とも言えるキャパシティだったので、それをクリア出来たのはみんながそこに向かって団結したからなんです。
そこで結束することの強さを身に染みて感じてから、より力強さが増したと感じています。今作もみんなが同じ方向を向いて進めていけたので、すごく楽しかったし、たくさんの人に聴いてほしい1枚になりました。
――一枚岩になれたんですね。アルバムのタイトルを『HOUSE』にした理由は?
SAKIKA いくつか意味があります。私たちは今も4人で共同生活をしているんですけど、その中で感じたことを曲に落とし込んでいるので『HOUSE』というのと、そこでできた音楽を今度はライブハウスで聴いてもらいたい、という想いを込めました。
MINA このタイトルはみんなで家への帰り道で出てきた言葉でした。その帰り道でジャケットのイメージまで湧いてきて、すごくスムーズに決まったんです。犬って「ハウス」と話せばお家へ帰るじゃないですか。この先いろいろあると思うけど、どんなことがあってもこのアルバムに戻って来れるような、初心を忘れないという意味も私の中にはあるんです。
NAGISA 誰かと共同生活するというのは、当たり前のことではないと思っていて、ずっと一緒にいて、何か形に残せるもの出して、ここから胸を張って旅立ちたい、という気持ちにもさせてくれるタイトルでした。
MIREI みんなも良い年齢になってきました(笑)。もしかしたら共同生活をしている中での作品は、これが最後になってしまうかもしれない…。そんな思いもあります。
――いろんな思い出が詰まっているんですね。さて、アルバムタイトルにも通じるリード曲の「FULL HOUSE」はMINAさんが作詞・作曲されていますが、どのようなイメージで作られたのでしょうか。
MINA この曲は、アルバムの曲がほぼ出揃ってから「ライブ映えがする曲が欲しい」となって、最後に作った曲なんです。何となく作りたいイメージは思い浮かんでいたのでLogic(音楽編集ソフト)で打ち込んでいきました。「FULL HOUSE」はソールドアウトしたお客さんでいっぱいのライブハウスで演奏したい、観にきて欲しいという思いが込められています。アルバムの中でもわかりやすい押し出し方をしている曲になったと思います。
――この曲はMVも撮影されていますね。
SAKIKA 私たちだけの演奏シーンのみで構成されたMVになっています。最初は色んな演者さんをいれたりする案もあったんですけど、リード曲ということもあり、アレンジも楽器をフィーチャーした曲に仕上がったので、演奏をメインとしたビデオにした方が良いということになりました。
MIREI 撮影もハプニングもなく、すごくスムーズでした。
――「影法師」はタイトルが趣があって印象的ですが、このタイトルに込められた意図は?
MINA 影というのは自分の影よりも人の影を見ている方が多いじゃないですか。この曲は私が中学2年生の頃に書いた曲でSAKIKAがちょうど高校生になるタイミングでした。同じ学校にいたのに、いなくなってしまう、そんなことを考えながらイメージを膨らまして書いていて。それで、聴いてもらうとしたら今がいいんじゃないかと思って、ずっと温めていました。アルバムが春のリリースということもあって、季節的にも良いと思いました。
SAKIKA 2番で<きっと何処かで巡り会える>という歌詞があるんですけど、特にその言葉がロマンティックだなと思いました。そう思えることはすごくピュアな心でまっすぐさが出ているなと。あとこの曲は昔演奏していたこともあるんです。
MINA おそらく、もう誰も覚えてないと思います(笑)。
SAKIKA 当時の心情をその時に聞いていたので、イメージは掴みやすかったです。その当時を思い出しながら歌った感覚もあります。
――続いての「ダーリン ダーリン」はMIREIさんが作曲で、作詞はKanata Okajimaさんとの共作ですね。
MIREI 最初は全然違う歌詞でした。この曲はメロディが先に出来て、鼻歌を歌っていたら、空耳じゃないですけど、サビのところが<ダーリン ダーリン>と言っているように聴こえてきて(笑)。それで、ダーリンをテーマにして歌詞を書こうと思いました。最初はふわっとした感じで書いていたんですけど、だんだん時が経ったら色んな情報を得たので、色んな視点から書けることに気がついて、最終的にはすごくピュアな歌詞ができたと思っています。
――一聴した感じ、歌うのが大変そうですよね。
SAKIKA この曲はキーが高いんです。歌割があって分けているんですけど、1人で全部歌ったら相当大変だと思います(笑)。
――歌うと大変さが分かりますよね。でも、クラップのセクションなどライブでも盛り上がりそうな一曲です。さて「Striky girl」は、おしゃれなシティポップサウンドの1曲に仕上がっていますね。NAGISAさんが作詞・作曲されていて。
NAGISA ちょうどこの曲を作っている時に、古着やレトロなものにハマっていました。それでレトロな感じで、横ノリの楽しい曲を作りたいなと思ったんです。作った当初は「パプリカ」というタイトルでした。それはイメージの中にパプリカのようなハッキリとした色の曲にしたいと思っていたからなんです。でも、パプリカは有名曲として既にそちらのイメージが強いと思ったので「Striky girl」に変えました。このタイトルにはStrikyな女の子になりたい、という願望が込められています。
――こういった曲調は演奏するのも難しそうですね。
MIREI 意外とやりやすかったです。「ノスタルジック」の方が難しいかもしれない。
――あと、印象的なのがコーラスです。これはNAGISAさんが考えられた?
NAGISA はい。「コーラスが印象的な曲にしたい」というのもあって、私が考えました。
――ライブではお客さんも一緒に歌ってもらうイメージ?
NAGISA そこは自由で、全然歌わなくてもリズムに乗って楽しんでもらえれば嬉しいです。
――さて、先ほど難しいとお話ししていた「ノスタルジック」はMINAさんが作詞・作曲されていて歌唱もされていますが、どのような想いで書かれたのでしょうか。
MINA <ノスタルジックだバカ>というフレーズがきっかけでした。それで、どうやってここから曲として完成させようか悩みました。1~2年前にワンコーラス出来たんですけど、そこで止まっていた曲なんです。アルバムの制作会議でこういう曲がなかったので、入れたい! という話になって。
この曲はアナログシンセを使っているんですけど、初めて弾いたんです。シンセは興味があったのと、もともとピアノを習っていたこともあって、鍵盤楽器はすごく好きなんです。サビのバックで流れているシンセのメロディラインが、最後に歌詞が乗って登場する仕組みにしたくて。
――歌詞も面白いですよね。
MINA ありがとうございます。1番のサビでは<君は覚えてる?><君は気付いてる?>とクエスチョンマークが付いているんですけど、最後のサビではクエスチョンマークが外れているんです。最後に解釈が変わる歌詞になっていて、それも意識しながら歌いました。裏声の使い方とか注目してもらえたら嬉しいです。
SAKIKA 私はおしゃれな感じのコード感と、ギターカッティングもこういう感じのは今までなかったので、学びがあった曲でもありました。
NAGISA すごく新鮮だった1曲でレコーディングもすごく楽しかったです。リズムの縦を合わせるのがすごく難しかったです。
19歳のGIRLFRIENDを目に焼き付けてもらえたら
――「LIFE」はSAKIKAさんの心情がよく出ている曲だと思うのですが、この曲の背景にはどのような思いがあるのでしょうか。
SAKIKA この曲は私が19歳になったときに書いた曲なんです。自分では私の10代は暗黒期だと思っていて(笑)。15歳の時に書いた「15」という曲もシリアスな曲でしたけど、10代後半はさらにディープなところにいきまして…。その気持ちを消化してくれる、「この曲を書くために色んなことがあったんだ」と思えるような曲を作りたいなと思いました。
MIREI <間違えずに生きていくためには どうしたらいいですか?>と、もう歌詞の1行目からめちゃくちゃ重いですから(笑)。
――自分自身を納得させ、節目となる曲になったと。
SAKIKA そうなんです。でもこの曲で全てを吐き出せたので、きっと20代は明るいです(笑)。
――歌詞にある<あれはいつからだろう 真似ばかりするようになったのは>というフレーズにはどのようなエピソードがあるんですか。
SAKIKA 私は小さい時から人の目を気にしてしまう、自分を出していくことよりも、誰かを真似してしまう癖がありました。それもあって自分のことが好きになれなくて…。人がうらやましく見えてしまっていました。
もし私と同じように考えている人がいるなら、包み隠さず出すことが勇気になるんじゃないかなと思いました。誰かしらに当てはまればいいなと。発信できるものとして、私はこういった感情も出していきたいと思いました。
――続いての「High up High」は「LIFE」とは対照的な曲で、楽曲の振り幅が大きいですね。
SAKIKA ストリングスが入っていたり、壮大な1曲になりました。前向きで壮大な曲が欲しいなあとメンバーと話していて、これは私たちで作るのでなく「一直線」のときにご一緒させていただいたygarshyさん、そしてCarlos K.さんに作ってもらってアルバムに収録したいと思いました。この曲はストリングスとギターなどバンドサウンドとのバランスはすごく悩みました。でも、これまでのGIRLFRIENDらしさも垣間見れる曲になったと感じています。
――アルバムのラストを飾る「少女のままで」は、歌詞の冒頭からリアリティがあります。
SAKIKA 共同生活をしていて、みんなが大人になったなあと感じる瞬間がありました。その感じたことを曲に落とし込みました。
――しっとりと大人な雰囲気を感じさせますが、ピアノはどなたが弾いているんですか。
SAKIKA 最初のデモでは私が弾いていたんですけど、ピアノメインの曲にしたかったので、ピアニストの方に弾いて頂いたほうが良いかなと思いました。この曲を最後にしたのは満場一致で決まったんです。
――この曲で締めくくったのはアルバムとして最良だったのではないかなと感じさせてくれました。ところで、今作での新しい試みはありましたか。
NAGISA 音色ありきでフレーズを考えたりしました。今まではあまり音色を変えずに弾いていたんですけど、今回はSAKIKAと一緒に遊びまくっていて、「Striky girl」はSAKIKAがリードギターを担当しています。そこにも注目してもらえると面白いと思います。
――そうだったんですね。ファズ(※ギターの歪み系エフェクターで過激なサウンドが特徴)の効いたギターが楽曲とギャップがあって面白かったです。ドラムはいかがですか。
MIREI シンバルはいつも同じものを使っていたんですけど、今回は色んな物を使って、音を変えてみました。曲によっては音色が違うのを感じてもらえたら嬉しいです。「FULL HOUSE」と「ノスタルジック」はスタジオもいつも使っている部屋ではなく、違う部屋で録ったんです。ドラムはアコースティックな楽器なので、環境を変えると音がすごく変わるんです。それは挑戦の一つでした。あとアルバムとなると、1曲は腕がもげそうになるような曲があります(笑)。
MINA 私は今回、初めて半音下げチューニングに挑戦しました。それで3~4曲レコーディングしているんですけど、なぜそうしたのかというと、D#の音が出てきた時に、レギュラーチューニングだと高い方に行かないとダメなんですけど、オクターブ下で鳴らすことで、ボーカルの支えになると思いました。これは私の中では新しい試みでした。他にもマルチエフェクターを使ってファズやオートワウ(空間系エフェクターで浮遊感のあるサウンドが特徴)を使ったりしています。あとはスラップをナチュラルに聴かせたいというのもテーマにありました。
――最後にファンのみなさんにメッセージをお願いします。
SAKIKA こんなにたくさん新曲を出すタイミングってなかなかなかったんです。新しいGIRLFRIENDを出せるタイミングだったと思うんです。今私たちがやりたいこと、等身大が詰まっていて、それが『HOUSE』というタイトルにも表れていると思います。楽曲やサウンド面でも成長を感じてもらえると思うので、みなさんにしっかり見てもらいたいです。この作品で見せた(平均年齢)19歳のGIRLFRIENDを目に焼き付けてもらえたら嬉しいです。
(おわり)