パノラマパナマタウン「PPT Online Studio」バンドの本質に迫る楽曲を考察
シーズン2の3曲に迫る
パノラマパナマタウン
神戸出身のオルタナティヴロックバンド・パノラマパナマタウンが、自粛期間中の5月から行っている配信番組『PPT Online Studio』で、新たに「Chameleon Man」「Rocket」「SO YOUNG」という3曲のワンコーラスデモを6月に完成させた。
『PPT Online Studio』は、彼らのデモ制作の過程を公開しながら、時にリスナーも巻き込んで1曲を作り上げていくという参加型企画。5月からスタートし毎週火曜日の21時から生配信している。MusicVoiceでは、この『PPT Online Studio』で出来た楽曲を数回にわたり紹介していく。
パノラマパナマタウンは2014年に神戸で結成。2015年開催のロッキング・オン主催コンテスト「RO69JACK」、「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」主催の4社合同オーディション『MASH A&R』でそれぞれグランプリを獲得。2017年1月にミニアルバム『PANORAMADDICTION』メジャーデビューし、その後もライブを行い、徐々にキャパを広げ、東京・恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブも成功させた。
2020年1月に開催された恵比寿LIQUIDROOM『銀河探索TOUR 2019-2020』のファイナル公演で、岩渕想太(Vo.Gt)のポリープ切除手術のためライブ活動を一時休止。2月には田村夢希(Dr)が脱退し、3人でリスタートを切ることとなった。
聴けば聴くほど深みが増していく3曲
6月に入り「シーズン2」に突入した『PPT Online Studio』。岩渕の制作意欲が伝わってくる4曲を提示。この中からリスナーの意見も取り入れ、3曲を選出した。均衡した投票結果であったが、この時面白かったのが投票で最下位になってしまった楽曲を、「逆に何か“持っている”」と判断し、アレンジする楽曲として選んでいたのは、なんとも彼ららしい選曲。実際、アレンジされてデモから“化ける楽曲”があるのも事実。楽曲のポテンシャル、可能性に賭けた、彼らの選曲にも注目が集まった「シーズン2」だった。
今回完成させた3曲は前回の「Rodeo」とはまた趣が違うメロディアスな曲が揃った。oasisやTHE WHO、The Strokesなど楽曲のモチーフとなった海外バンドの名前も登場し、彼らの音楽の趣向もよくわかるのも『PPT Online Studio』の醍醐味の一つだろう。そこから、そのモチーフとなったバンドを聴くのも面白い。彼らがそのバンドのどんなところをフィーチャーしているのか、着眼点を知るのに絶好の機会だ。
ここから1曲ずつ、楽曲を紐解いていきたい。
デモの時よりもスケールが大きな曲になったという「Chameleon Man」。岩渕曰くoasisを意識した曲だったが、3人が奏でることにより、しっかりとパノパナの楽曲らしさが溢れている。この曲は、自分とは何なのか、アイデンティティを追求していく中で生まれた1曲で、岩渕の普段から考えていることが、自然と出た言葉だけに歌のリアリティにも繋がっていると感じさせてくれた。その自分自身を“Chameleon Man”と比喩しているのも面白い。岩渕は配信で「照れくさい」と話していたが、表現者としての悩み、葛藤など内面を曝け出した楽曲だということが伝わってきた。
続いては“化けた曲”と語っていた「Rocket」。冒頭から<新宿駅前通り/レイトショーの帰り道>と入ることにより、曲の情景を明確に提示し、イメージをリスナーに見せているのが、この曲の世界観の肝だと感じさせた。その効果はタイトルの「Rocket」というファンタジックで科学的な対象に対してのギャップが魅力的。それに加えメンバーの浪越康平(Gt)も動画で話していたが、抽象的な言葉が意味深で解き明かしたくなる要素もあるのが面白い。サウンドもパノラマパナマタウンの目指す、少ない音数で効果的に聴かせるという、洋楽的アプローチが随所に確認できる。
3曲目はデモから一番進化した曲と言わしめ、3人もステージでの演出がイメージしやすい1曲だと語った「SO YOUNG」。オールディーズ感のあるイントロのギターからこの曲の持つ世界観を想像させ、サビで腕を掲げ、シンガロングするオーディエンスの姿が目に浮かぶ、メロディアスだが躍動感のある熱い曲に仕上がっている。歌詞では<夕暮れの街のサリンジャー>というケレン味のある言葉が、この曲の世界観を、よりユニークなものにしている。タイトルの「SO YOUNG」に通じる未熟さ、故の未来への希望が上手く表現された楽曲となっていると感じた。
今回の3曲は何度も聴いていくことで、より深みが増していくような“スルメ曲”で、バンドの本質に迫る楽曲たちだと分析できる。派手さではないところ、シンプルさに重きを置いて、音楽としての質を高めていこう、という気概がメロディ、歌詞、サウンドに表れていると感じさせてくれた。パノラマパナマタウンの未来を少し垣間見せてくれるかのような感覚を与え、楽曲の完成に期待が高まった。
次回はシーズン3の『PPT Online Studio』で制作中の楽曲を考察したい。【村上順一】
メンバーコメント
シーズン2は、初っ端4曲展開の、3曲同時進行アレンジという、忙しい毎日になりました。
デモを持ってった時の意図としては、前回の「Rodeo」が密室で爆走するような、クローズドな楽曲になったので、今回は開けた楽曲にしようと。心から開放的に、部屋でアコギをジャカジャカ鳴らしながら作りました。
SO YOUNGはパノパナの新たなアンセムの扉を開いたような、Primal Scream意識の前進感ある楽曲に。家にい続ける生活の中で、音楽の中だけでも外に出ようっちゅうか、そういう心持で作りました。浪越ののっけたギターはThe Who味があって、3人の少年性が出た曲にもなりました。まあ、YOUNGって言っとるし。
Chameleon Manは、メンバーも言ってくれたけど、すげえ素朴な曲。ぽろっとギター弾いたら、ぽろっとメロディも出てきて、「カメレオンマン」ってワードもぽろっと出てきたような、そんな曲です。ベースドラムのアレンジ、浪越のイントロギターのおかげで、最初より大きな曲になった。
Rocketは、渋くていいねえ。如何に、Strokesの雰囲気を出せるか3人で考えて紆余曲折しました。これが一番古くからあった曲なんやけど、歌詞が一番苦労しました。なんか、くっついとうけど、それもなんとなくで、離れる勇気もない、みたいな男女の曲にしたいってのはイメージとしてあって、それと「Rocket」ってワードをどう合わせようかっていう。ここは、エスケープのイメージですね、二人でどっか行っちゃおうっていう。そういや、ゴールデン街に「Rocket」ってお店がありますねえ。
だんだん、型が決まって楽しくなってきた感があります。PPT Online Studio。観てる人もバンバン意見してくれて興味深いです。(岩渕)

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