神戸出身のオルタナティヴロックバンド・パノラマパナマタウンが、自粛期間中の5月から行っている配信番組『PPT Online Studio』で、「Rodeo」のデモ音源を完成させた。今の彼らの目指すものがよくわかる1曲になっている。『PPT Online Studio』は、彼らのデモ制作の過程を公開しながら、時にリスナーも巻き込んで1曲を作り上げていくという参加型企画。5月からスタートし毎週火曜日の21時から生配信している。MusicVoiceでは、この『PPT Online Studio』で出来た楽曲を数回にわたり紹介していく。

 パノラマパナマタウンは2014年に神戸で結成。HIP HOP要素もある独特なロックサウンドが特長で、2015年開催のロッキング・オン主催コンテスト『RO69JACK』、「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」主催の4社合同オーディション『MASH A&R』でそれぞれグランプリを獲得。2017年1月にミニアルバム『PANORAMADDICTION』メジャーデビューし、その後もライブを行い、徐々にキャパを広げ、東京・恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブも成功させた。

 2020年1月に開催された恵比寿LIQUIDROOM『銀河探索TOUR 2019-2020』のファイナル公演で、岩渕想太(Vo.Gt)のポリープ切除手術のためライブ活動を一時休止。2月には田村夢希(Dr)が脱退し、3人でリスタートを切ることとなった。

 リスタートを切ったこの企画の1曲目に選ばれたのは、今年1月に岩渕が「自分たちが好きなものに立ち返ろう」というコンセプトのもと作られた「Rodeo」。パノラマパナマタウンの原点回帰とも言えるロックナンバーだ。

 パノラマパナマタウンの最近のサウンドはニューウェーブなど、エレクトロサウンドも取り入れた楽曲も見られるなか、「Rodeo」は疾走感のあるロックサウンドが初期の“パノパナらしさ”を感じさせる1曲だという事がデモから伝わってきた。今の彼らのモードがよくわかるナンバーだ。

岩渕は生配信の中で、今作を過去にリリースした曲で例えると、インディーズ時代のナンバー「MOMO」や「ロールプレイング」のような疾走感のある楽曲を作りたかったと話している。タノアキヒコ(Ba)は「Rodeo」のデモを聴いて「昔のパノラマパナマタウンを思い出した」と話していたことからも、今作が原点回帰となる1曲になりえることが垣間見える。

 歌詞は連想ゲームのようにストーリーを展開し制作したという。仮歌の時点では冒頭で聴ける<ワンダー>というインパクトのある出だしから、歌詞の意味と響きを考慮し<あんた>へと変化。そこから「Rodeo」というテーマに結びつくように歌詞を紡いだ。色んな意味を想起させる歌詞だが、女性に振り回されるという裏テーマもあるという。過去の楽曲でもメロディと言葉の嵌め方には、独創的でオリジナリティを見せる岩渕の真骨頂が、この曲でも発揮されている。

 歌は岩渕が今年の初めにポリープを切除したということもあり、これまでとは違った発声になっていることが音源から見受けられた。声を張り上げなくても抜ける声が出せつつあると、話していたが、今までとはニュアンスが違うことが音源を聴くとよくわかる。まだ探り探りなところもありそうだが、“新生パノラマパナマタウン”の大きな変化のひとつになりそうだ。

 浪越康平(Gt)は岩渕の声の変化に合わせ、気持ちよく聞こえる音程にポイントを置いてアレンジ。第三者が岩渕の歌声を客観的にみることにより、岩渕本人も気づかないところも詰めることができ、バンドやチームの良いところが出ている瞬間も。そして、今作のミックスダウンは浪越が行い、そこで新たな発見もあったようで、バンドの成長にも繋がっていることが確認できた。

 そして、ギターはチープな感じでトラディショナルなものを目指した、と浪越。彼らはギターサウンドには並々ならぬこだわりがあり、音色の選定に時間を多く費やすことも珍しくないという。

 「Rodeo」で聴けるギターは、勢いを重視したラフでローファイなサウンド、ロックならではのエネルギーに満ちていて、サーフロックのような爽快さと、ロカビリーのようなスピード感に溢れたリフ、ベースとのユニゾンが体を揺さぶりかける。岩渕はこのリフについて、ザ・ベンチャーズを学生時代にコピーしていたときの名残もあるという。そこから馬が走っているイメージが湧き、「Rodeo」という言葉が出てきたと明かした。

 フレーズから言葉がサビではユニゾンから解き放たれ、それぞれが解放的な演奏で盛り上げる。サビで登場する<Rodeo>のコールからはライブを想定し、オーディエンスとの一体感が容易に想像できる。Rodeoの母音がo,e,oというのも声に出しやすく、些細なことだがこういったことの積み重ねが、気持ち良さを演出している。

 熱狂が魅力のパノラマパナマタウンの真骨頂ともいえる原点回帰したかのようなサウンドに、7月に開催予定の配信ライブへの期待が高まる「Rodeo」。現在の生配信では、複数曲に制作は突入。ファンと一緒に作り上げた新曲が、これからどのように変化していくのか、期待して待ちたい。【村上順一】

【メンバーコメント】

 疾走感のある高速リフと、曲の持つ前のめりな勢いが、初期の自分たちの楽曲のようで、まさに原点回帰的なところもありつつ、今までのどの楽曲にも当てはまらないオリジナリティを持っているとも思います。

 ここまで執拗にリフを捏ねくり回す姿勢、曲のBPM、浪越とこだわったチープな音色など、パノパナの新しい扉を開いてる部分も沢山あり、パノパナっぽいんだけど新しい楽曲になったんじゃないかと。

 デモを作った混沌の中にあった1月、当初の目論見としては、原点回帰だったんだけど、そもそも変わったことをしたいというピュアな動機こそが「原点」だった訳だから、そこに立ち返ったとも言えるんじゃないか。

 リフが始まった瞬間の爆発力を意識しながら曲作りしていたので、ライブで披露する日が楽しみな曲でもあります。(岩渕)

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